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リーグワン成立要件会見で何語られた?&ディビジョン1第5節ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
久々復帰のラブスカフニ。スピアーズもパンデミック対応と無縁ではないが好調維持(写真:つのだよしお/アフロ)

 一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンは2月10日、今年1月からの同リーグの運営について会見。計3つあるディビジョンの開催成立要件を「試合実施率50パーセント以上」とした。

 現在はディビジョン1から順に70パーセント(30試合中21試合実施)、100パーセント(全9試合実施)、約56パーセント(9試合中5試合実施)となっている。

 開催できる試合が全体50パーセントに満たない場合、またはそれが推定される場合はリーグ側が4月17日までに判断し、全チームによるトーナメント戦(リーグ主管)で順位を決定する。

 各チームが2試合ずつ行う予定の入替戦は、感染症に伴い実施が難しい場合でも原則9月末までに1試合は実施し、成否を決めたいという。

 もっとも、トーナメント制に移行された場合も残ったリーグ戦の試合は可能な限り実施。その際の順位はトーナメントの組分けに活用される。

 各クラブは試合の48時間前までにPCR検査をおこない、ここで陽性者と濃厚接触者がわかった場合は再検査を実施する。試合の48時間前に「エントリーに充足する人数が揃った場合」は48時間前の時点でメンバーを発表。最近はその後の体調不良者の発生などでの試合中止が重なっており、東海林一専務理事はこう述べる。

「直前で試合が中止になっているケースは皆さまにはご迷惑をおかけしています。いまのオミクロンの状況で試合直前でも体調不良者が出ることは大変に防ぎ難い。ただチームによっては最初に陰性の結果が出るまでは接触を避け、感染リスクを防ぐ練習を徹底しています。また(リーグの定めた検査よりも前に)自主検査もやり、陽性者を早期に発見し、全体練習に参加させない工夫もしています。最近では練習外での感染リスクも高まっています。我々の方でも濃厚接触者になる基準を示していますが、チームがこれに基づき練習外での生活における行動ガイドラインを作成し、徹底しているところもあります」

 現行ルール下では、試合が中止になった場合、ウイルスの影響でメンバーが揃えられなかったチームは不戦敗に伴い勝点0。かたや感染症に関して「帰責性」がないチームは勝点5を得られる。今度のリリースでは、当該のチームの得失点差にもそれぞれ「-21」「+21」が加算されることが発表された。

 同日の会見では、このルールそのものに疑義を唱えるメディアもあった。ただし、東海林一専務理事はこのような趣旨で話す。

「リーグ開始前、全チームによる実行委員会でこれが適切だと定めた。個別の賛成、反対はありましたが、マジョリティが賛成。意見が大きく割れたことはございません。理屈っぽい話になり恐縮ですが、コロナそのものは不可抗力性が高まっていると考えます。しかしながら、人員充足ができていない事に帰責性があると当初から定めています」

 そう。この点については、パンデミックで2試合をふいにした埼玉パナソニックワイルドナイツの関係者さえも「事前に同意していたのだから問題ない」と話していた。

 むしろ、昨年のトップリーグで同様のケースがあった場合は「引き分け」扱いとなり、両軍に勝点2ずつが付与されていたことのほうが問題視されていた。いわば今度の「5―0ルール」は、現場の声が反映された結果と取れる。

 もちろん、「コロナの状況によって(ルールの)適切性が変化しているのは認めるところ」と東海林専務理事。今季、不戦勝で勝点を得たことのあるチームのコーチが「現行ではコロナにかかったほうが悪のようになってしまう」と、不戦敗側にも一定の勝点を与える選択肢を暗に提案していた。

 この事実に東海林専務理事は一定の理解を示しつつ、シーズン中の変更は混乱を招くため望ましくないとした。

「ルールには一貫性(を保つこと)が必要です」

 いずれにせよ、試合の開催や中止に各クラブの恣意性が影響されないことが望まれる。東海林専務理事は「各チームのインティグリティ(高潔さ)に帰するところが大きい。各チームを信頼している」と話す。

 追記。リーグワン関連の話題の著書に関して、現状では渦中に執筆した記事をご参照いただきたい、と申し述べるにとどめる。

<ディビジョン1第5節 私的ベストフィフティーン>

1、瀧澤直(グリーンロケッツ)…防御でハードワーク。相手の同ポジションである中島イシレリの持つボールを奪った。スクラムでは、合図がない時の静止を求めるレフリーのニーズに対応。

2、マルコム・マークス(スピアーズ)…イーグルス戦。7点リードで迎えた後半序盤、自陣22メートル線付近で攻め込まれるなかで好ジャッカル。テンポよく攻めたかった向こうの反則を誘った。

3、平野翔平(ワイルドナイツ)…シャイニングアークス戦に先発。モールでは相手防御の前で「壁」となり、塊の進路を作る。

4、ワーナー・ディアンズ(ブレイブルーパス)…ブルーレヴズ戦ではキックオフ早々に身体を沈め、ロータックル。圧力下で器用にパスをさばき、好突進も重ねる。

5、ルアン・ボタ(スピアーズ)…序盤から突進、チョークタックルで持ち味発揮。コンビを組んだヘル ウヴェも2度にわたるキックオフキャッチで光った。

6、ベン・ガンター(ワイルドナイツ)…前半6分、ハーフ線付近右でのジャッカルでノット・リリース・ザ・ボールを誘い、チームを敵陣ゴール前に進める。やがてチームは追加点を奪う。自陣ゴール前でのチョークタックルも光った。

7、ピーラー・ラブスカフニ(スピアーズ)…要所で相手の反則を誘うジャッカル。バーナード・フォーリーとのコンビで防御を切り崩すシーンもあった。

8、姫野和樹(ヴェルブリッツ)…ブラックラムズとの接戦では前半18分頃に自陣22メートル線付近中央でターンオーバー。後半20分には自陣ゴール前で強烈なタックルとカウンターラック。ピーターステフ ・デュトイ、古川聖人とともに地上戦で光る。

9、谷口和洋(スピアーズ)…イーグルス戦の前半終了間際、カウンターアタックからショートサイドのスペースを切り裂く。総じて安定してパスを供給。抜け出した味方を援護してのトライも記録。

10、トム・テイラー(ブレイブルーパス)…防御へ正対して仕掛けながらパス、オフロードを繰り出すことで、味方が気持ちよさそうに前進する。

11、濱田将暉(ブレイブルーパス)…タッチラインの外へ出ない。一気に走り切る走力に加え、パスをもらう直前に目の前の防御から逃れる細やかさも示す。

12、立川理道(スピアーズ)…スペースへのパス、50/22のルールを活かした好キックでチャンスメイク。

13、サム・ケレビ(サンゴリアス)…レッドハリケーンズ戦でチームは不完全燃焼気味も、この人は球を持てばラインブレイクを重ねる。

14、アタアタ・モエアキオラ(スティーラーズ)…前半26分の自身初トライは技術と献身の1本。敵陣22メートル線付近左中間で防御をひきつけ、左へパス。すぐに受け手の右側をサポートし、左へ回り込みながら再び球をもらった。続く31分には片手でのパスダミーを交え豪快にフィニッシュ。自陣深い位置でのタックルとジャッカルとの合わせ技も光った。

15、野口竜司(ワイルドナイツ)…序盤、ハイパントの好キャッチと前進の合わせ技から、接点で相手の反則を誘う。防御のギャップをすいすいとえぐる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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