なぜエムバペの移籍の噂は加速しているのか?レアルとパリSGが置かれる立場…生じ始める微妙な変化。
彼の未来は、不透明なものになっている。
この数日、世間を賑わせているのがキリアン・エムバペの移籍話だ。レアル・マドリー、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド…。複数クラブが、状況を注視している。
■エムバペの現行契約
エムバペは昨年夏、パリ・サンジェルマンと契約延長を行った。その際、「2年+1年の延長オプション」で新契約を締結。だが先日、エムバペ側が1年の延長OPを行使しない旨をクラブに伝えた。
つまり、エムバペの契約は2024年夏に満了を迎える。来年の夏には、フリートランスファーで移籍が可能になる。そのため、パリSGはこの夏のエムバペ売却を検討し始めている。
「毎回、大きくなっている、嘘だ。僕は来シーズン、パリ・サンジェルマンでプレーすると言った。パリで満足している」とはエムバペがSNSに綴った言葉だ。
その後、エムバペはイタリア『ガゼッタ・デロ・スポルト』のインタビューで次のように話している。
「僕は自分をレアル・マドリーに売却して欲しいとか、移籍したいなどとは言っていない。ただ、1年の契約延長のオプションを行使しないと言っただけだ。パリ・サンジェルマンと契約延長について話したことはない。あと一年、パリでプレーできることを喜んでいる」
■ベンゼマのサウジアラビア移籍
レアル・マドリーへの売却を要求してはいないーー。というのが、エムバペの主張だ。
一方、そのマドリーは前線の補強を必要としている。2022―23シーズンが終了して、マドリーは急転直下、カリム・ベンゼマの退団が決まった。サウジアラビアのアル・イティハドからビッグオファーが届き、ベンゼマの電撃移籍が発表された。
またマドリーは先日、ジュード・ベリンガムの獲得を正式に伝えている。移籍金固定額1億300万ユーロ(約154億円)で、ボルシア・ドルトムントと合意。エドゥアルド・カマヴィンガ(2021年夏加入)、オウレリエン・チュアメニ(2022年夏加入)に続いて、ヤングタレントを新戦力として確保した。
ただ、高額な移籍金での補強は現時点でベリンガムのみだ。フラン・ガルシア、ブライム・ディアスの復帰が決まったが、ベンゼマ、エデン・アザール、マリアーノ・ディアス、マルコ・アセンシオが一挙退団した事実を顧みれば、選手獲得の必要性は明らかだ。
そのような状況で、エムバペの移籍話が持ち上がった。気になるのは、マドリディスタの反応である。
6万6077票が集まったスペイン『アス』で行われたアンケートでは、「エムバペを獲得するべきか?」の問いに、58%が「イエス」と回答。またエムバペの獲得時期については、54%が「この夏」と答えている。
■獲得に失敗した過去
マドリーは2021年夏、2022年夏と立て続けにエムバペに“フラれて”いる。2021年夏においては、移籍金2億ユーロ(約300億円)のオファーを準備。だがパリSGが首を縦に振らなかった。2022年夏には、フリートランスファー、つまり移籍金ゼロでエムバペの獲得寸前に迫ったものの、一転してエムバペとパリSGの契約延長合意の一報を聞くことになった。
しかしながら、この夏、シチュエーションは変わろうとしている。フランス『レキップ』曰く、パリSGはこの夏のエムバペ売却を真剣に考えているという。となれば、マドリー側としては獲得の可能性が高まる。
加えて、マドリーはベンゼマを失っている。トッテナムでプレーするハリー・ケインを狙っているが、こちらも安価ではない。ケイン(29歳)、エムバペ(24歳)と年齢を見れば、費用対効果は想像がつく。さらに、トッテナムのダニー・レヴィ会長との交渉も簡単なものにはならないだろう。
「僕からすれば、10点満点の補強になるね。エムバペはフェノメノ(怪物)だ。世界最高の選手の一人で、僕たちはそのポジションの選手を必要としている」
「エムバペがレアル・マドリーに来てくれたら嬉しい。でも、彼はパリにいる。契約を残している。それをリスペクトしなければいけない。もちろん、来るなら、できるだけ早い方がいいだろう。だけど、彼が来なくても、そこをカバーできる選手は揃っていると思う」
これはロドリゴ・ゴエスのコメントだ。前述のマドリディスタのアンケート含め、スペインでは歓迎ムードが漂っているように見える。
この移籍騒動後、エムバペの母親であるファイサ・ラマーリ氏はナセル・アル・ケライフィ会長と話し合いの場を設けた。エムバペ自身、スポーツディレクターのルイス・カンポスと対話を重ねている。
だが、現時点で解決策は見えていない。移籍か、残留かーー。スタープレーヤーの去就に、全世界が注目している。