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なぜシティはCL制覇できたのか?ハーランド加入の効果とグアルディオラの信念。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶシティの選手たち(写真:ロイター/アフロ)

歴史に、新たなページが刻まれた。

今季のチャンピオンズリーグ決勝で、マンチェスター・シティとインテルが激突した。試合はスコアレスで迎えた68分に、ロドリ・エルナンデスが決勝点を挙げ、シティが1−0で勝利を収めている。

シティはクラブ史上初のCL制覇を成し遂げた。そして、ジョゼップ・グアルディオラ監督は初めてバルセロナ以外のクラブでビッグイヤーを獲得している。

ビッグイヤーを獲得したグアルディオラ監督
ビッグイヤーを獲得したグアルディオラ監督写真:ロイター/アフロ

「14年前、我々はバルセロナで3冠を達成した。14というのは、クライフの背番号だ」とはグアルディオラ監督の言葉だ。

「私はスポーツディレクターとCEOの2人に感謝したいと思う。多くのクラブは、チャンピオンズリーグで優勝できなければ、監督を解任してプロジェクトをやり直す。このチャンピオンズリーグのタイトルが、我々の2016年以降の5度のプレミアリーグの優勝に、さらなる意味をもたらすだろう」

■ハーランドの加入とシステム変更

シティは今夏、アーリング・ハーランドを獲得した。契約解除金6000万ユーロ(約90億円)を支払い、ボルシア・ドルトムントから稀代のストライカーを確保した。

昨季まで積み上げてきた「ゼロトップ」のシステムは、一旦、振り出しに戻された。【4−3−3】の布陣で、CFの位置にハーランドを据える形で、シティは2022−23シーズンに臨んだ。

だが、そこで終わらないのがグアルディオラ監督である。ジョン・ストーンズをボランチに組み込み、【3−4−2−1】を形成。ビルドアップ、ポゼッション、ストライカーの活用をすべて成功させるため、思考をフル回転させていた。

R・ディアスやB・シウバを高額な移籍金で獲得
R・ディアスやB・シウバを高額な移籍金で獲得写真:ロイター/アフロ

また、この戴冠に至るまで、多大な資金と時間が費やされた。

前述のハーランドを筆頭に、ジャック・グリーリッシュ(移籍金1億1700万ユーロ/約175億円)、ベルナルド・シウバ(5000万ユーロ/約75億円)、ケヴィン・デ・ブライネ(7600万ユーロ/約114億円)、ロドリ(7000万ユーロ/約105億円)、ルベン・ディアス(6800万ユーロ/約102億円)と現在の主力を揃えるために、シティは高額な移籍金を支払ってきた。

グアルディオラ監督が就任した2016年夏以降、シティは12億2000万ユーロ(約1830億円)を補強に費やしている。

■必要だった忍耐

ただ、ペップ・シティがCLで優勝するためには、忍耐強くならなければいけなかった。

グアルディオラ監督は、これまでシティで多くの批判を浴びてきた。なかでも、「バルセロナ以外で優勝できない」「(リオネル・)メッシがいないと優勝できない」という声は強かった。

2008−09シーズン、2010−11シーズン、グアルディオラ監督はバルセロナで2度、ビッグイヤーを獲得した。以降、欧州制覇から遠ざかっていたが、その不名誉なレコードもここで断ち切られることになる。

シティは今季、3冠を達成した。グアルディオラ監督は35個のタイトルを獲得しており、サー・アレックス・ファーガソン監督に次いで、史上2番目のタイトル保持監督になっている。

欧州の頂に立ったシティ
欧州の頂に立ったシティ写真:ロイター/アフロ

「信じられないよ。前半、僕のパフォーマンスは非常に悪かった」と語るのは決勝で勝負を決めるゴールを沈め、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたロドリだ。

「でも、ハーフタイムに監督に声を掛けられた。メンタリティを変えなければいけない、と言われた。リーダーとして振る舞え、と言われたんだ。僕がチャンピオンズリーグの決勝でゴールしたというのは、どんな青年でも、ハードワークを続ければ、ここまでたどり着けるということの証明になると思う」

準決勝でレアル・マドリーを撃破
準決勝でレアル・マドリーを撃破写真:ロイター/アフロ

一方、グアルディオラ監督は「レアル・マドリーに知っておいてもらいたい。あと、13回優勝したら、我々は彼らに並ぶ。そこに向かっていく」とも付け加えている。

現在、CLで最多優勝数を誇るのはレアル・マドリー(14回)である。だが彼らとて、当然、最初の一歩が存在した。その一歩をついに踏み出したシティに、新たな挑戦の幕が開けようとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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