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クラシコで何が起きていたのか?ガビの「4人目のMF」とバルサの左サイド制圧。

森田泰史スポーツライター
競り合うモドリッチとガビ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

勝負は決したかに見える。

リーガエスパニョーラ第26節で、バルセロナとレアル・マドリーが激突した。クラシコと呼ばれる伝統の一戦は、バルセロナが終了間際のフランク・ケシエの決勝点で2−1と勝利を収めている。

シュートを打つベンゼマ
シュートを打つベンゼマ写真:ロイター/アフロ

なぜ、バルセロナはマドリーを撃破できたのか。ここでは、その理由を探っていく。

シャビ・エルナンデス監督は、いつも通り、【4−3−3】の布陣でビッグマッチに臨んだ。

一方、カルロ・アンチェロッティ監督は従来の【4−3−3】に少し変化を加えた。中盤の形を逆三角形から正三角形にして、ルカ・モドリッチをトップ下ポジションに配置した。

マドリーの狙いは、アンカー潰しだった。セルヒオ・ブスケッツにモドリッチをぶつけ、バルセロナのビルドアップを呼吸不全に陥らせる。シーズン前半戦のクラシコでは、この策が的中して、マドリーが本拠地サンティアゴ・ベルナベウで3−1と勝利している。

■プレス回避のアプローチ

だがマドリーのプレスは嵌まらなかった。その要因は、ふたつある。

ひとつは、ロベルト・レヴァンドフスキの存在だ。クラシコでゴールこそなかったものの、決勝ゴールの場面では起点になるなど、レヴァンドフスキの存在感は絶大だった。そのレヴァンドフスキのポストプレーというのは、味方を大いに助けていた。

GKマーク・アンドレ・テア・シュテーゲンからロングフィードが送られる。レヴァンドフスキが中盤に降りてきて、ポストプレーを行う。これによって、マドリーのプレスの第一ラインとモドリッチのブスケッツへのマークは無効化された。

もうひとつは、ガビのウィング起用だ。

シャビ監督は今季途中からガビを左WGで起用するようになった。この起用法で、「3MF +WG」で実質的に中盤が4枚になる。セントロカンピスモ(中盤主義)に依った指揮官の戦術だ。

また、ガビが「MF化」した時、左側の大外レーンが空く。このシチュエーションで、生きてくるのがアレッハンドロ・バルデだ。

スピードとパワーに優れたバルデが、大外のレーンを駆け上がる。「偽WG化」したバルデと「4番目のMF」になったガビが、左サイドの制圧を試みる。

レヴァンドフスキのポストプレー、ガビのMF化と中盤のオーバーナンバー、大外レーンを使うバルデ、このマッシュアップでバルセロナはプレス回避に成功した。

■ハフィーニャのフリーロール

ガビのWG起用に触れたが、シャビ監督の特徴的な選手起用として、ロナウド・アラウホのサイドバック起用というのも挙げられる。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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