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なぜレアルはリーガの優勝に前進しているのか?クラシコでバルセロナを下した理由…始まるカウントダウン。

森田泰史スポーツライター
勝利を喜ぶマドリーの選手たち(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

今シーズン、最後の直接対決だった。

リーガエスパニョーラ第32節、レアル・マドリーは本拠地サンティアゴ・ベルナベウにバルセロナを迎えた。試合は3−2でマドリーが勝利している。

競り合うフェルミンとバルベルデ
競り合うフェルミンとバルベルデ写真:なかしまだいすけ/アフロ

試合前の段階で、首位マドリーと2位バルセロナの勝ち点差は8ポイントだった。マドリーが勝てば、優勝は決定的。反対にバルセロナが勝てば、残り試合での逆転優勝が見えてくるところだった。

■CLの結果を経て

チャンピオンズリーグでは、対照的な結果になった。

ファーストレグで勝利していたバルセロナだが、セカンドレグでパリ・サンジェルマンに逆転負け。一方のマドリーはファーストレグでマンチェスター ・シティに引き分けた後、敵地エティハドにおける死闘をPK戦の末に制して、ベスト4進出を決めた。

エスタード・デ・アニモ(感情の状態)がクラシコに与える影響は少なからずあった。

ボールをキープするレヴァンドフスキ
ボールをキープするレヴァンドフスキ写真:なかしまだいすけ/アフロ

アンチェロッティ・マドリーは、シティ戦で見せたように、“守れる”チームだ。GKアンドリュー・ルニンはリーガ26試合で22失点。GKティボ・クルトワを忘れさせるくらいの活躍を披露している。

ルニンだけではない。アントニオ・リュディガー、ナチョ・フェルナンデス、フェルラン・メンディ、ダニ・カルバハルを中心としたディフェンスラインは固い。ソリッドでコンパクトなチームを、カルロ・アンチェロッティ監督は作り上げている。

■補強とカンテラーノ

他方で、マドリーの攻撃は、ジュード・ベリンガム、ヴィニシウス・ジュニオールが核になっている。チーム全体の得点の52%に、この2選手が関与している。また、ホセル、ブラヒム・ディアスといったジョーカーの存在を忘れてはならない。彼らの22ゴールが、今季ここまでのマドリーの勝点積み上げに大きく貢献している。

一方のバルセロナは今季、ヤングプレーヤーが躍動している。ラミン・ヤマルとパウ・クバルシ。ラ・マシア(バルセロナの育成寮)出身のカンテラーノたちだ。

マドリーの補強でベリンガムが“大当たり”だったことを顧みれば、バルセロナの方はイルカイ・ギュンドアンが当たったのみ。だがヤマルやクバルシの好パフォーマンスが、それを吹き飛ばすニュースになっている。

こういった点を踏まえ、見所満載のクラシコが、ベルナベウで開催されようとしていた。

ドリブルするヤマル
ドリブルするヤマル写真:ムツ・カワモリ/アフロ

アンチェロッティ監督は大一番でトニ・クロースとルカ・モドリッチをスタメン起用した。

鍵を握るのは中盤の攻防である。そう、アンチェロッティ監督は読んだのだろう。

マドリーは【4−4−2】のシステムで試合に臨んだ。だが慣れた布陣の中盤ダイヤモンド型ではなく、中盤ボックス型。クロースとバルベルデをダブルボランチに、モドリッチとベリンガムをダブルトップ下に据えて、ゲームのコントロールを試みた。

対してバルセロナは【4−2−3―1】で挑んだ。ダブルボランチにアンドレアス・クリステンセン、フレンキー・デ・ヨングが置かれ、トップ下にイルカイ・ギュンドアンが入った。

バルセロナは守備時、ギュンドアンがロベルト・レヴァンドフスキと2トップ化して前線からプレスを掛けた。その際、ラフィーニャが一列降りて、左MFになる。マドリーのサリーダ・デ・バロンを封じながら、ミドルゾーンで穴ができないようにした。

スタメン起用されたモドリッチ
スタメン起用されたモドリッチ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

マドリーの狙いは、ハーフスペースの攻略だった。バルセロナが“前プレ”を行う時、インナーサイドが空く。ここに縦パスをつけて、ボールを前進させようとした。

■中盤の攻略とサイドの揺さぶり

また、マドリーは、サイドの揺さぶりでバルセロナの守備陣をズタズタに切り裂いた。

バルセロナの右SBであるジュール・クンデは1対1に強い。ここに、まず、ヴィニシウス・ジュニオールをぶつけ、果敢に仕掛けさせる。加えて、試合の経過につれてロドリゴ・ゴエスがポジションチェンジを行いながら、左サイドに流れ、マークの混乱を誘った。

逆サイドでは、ロドリゴ、ヴィニシウスが中央に寄る分、サイドバックのルーカス・バスケスが大外のレーンを使った。バルセロナの左SBのジョアン・カンセロは、裏ケアが弱い。そこを巧みに突いて、「左で引っ張り、右でフィニッシュする」という形を作り上げた。

ベリンガムが決勝ゴール
ベリンガムが決勝ゴール写真:なかしまだいすけ/アフロ

マドリーはクラシコを制して、首位独走状態をキープ。2位バルセロナとの勝ち点差は11ポイントに広がった。

スペイン『マルカ』『アス』は、「バーチャル・チャンピオンの誕生」と書き立てた。つまり、マドリーの優勝は決定的になった、ということだ。

マドリーは、リーガでの残り試合を6試合としている。獲得可能勝ち点数は18ポイント。バルセロナとの差は深淵で、マドリディスタのカウントダウンが始まっている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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