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レアルがシティを倒せた理由。待ち受けるクラシコとドブレーテの可能性。

森田泰史スポーツライター
CLでベスト4に進出したマドリー(写真:ロイター/アフロ)

これまた奇跡、と言われるのだろうか。レアル・マドリーがチャンピオンズリーグで苦しい試合をモノにするたびに、「ミラクル」の安売りが起こる。だが奇跡も何度も繰り返されたら偶然ではない。

今季のチャンピオンズリーグ準々決勝、マドリーはマンチェスター・シティと対戦した。ホームのファーストレグを3−3で折り返して、アウェーのセカンドレグを1−1の末にPK戦で制してベスト4進出を決めている。

■果たされたリベンジ

マドリーにとっては、「リベンジマッチ」だった。

昨季のチャンピオンズリーグ、準決勝でマドリーはシティと対戦している。ホームのファーストレグを1−1で終えた後、アウェーのセカンドレグで0−4と大敗して、大会から姿を消した。

「最初の20分から25分、僕たちは余りに受け身になっていた。アグレッシブではなかったとか、僕たちが(勝利を)望んでいなかったとか、そういう話ではない」と語っていたのはトニ・クロースだ。

「僕たちのポジショニングは悪かった。先日の試合(ファーストレグ)と比べて、シティはライン間でプレーする選手が一人多かった。それで試合が難しくなった」

デ・ブライネをマークするクロース
デ・ブライネをマークするクロース写真:ロイター/アフロ

カルロ・アンチェロッティ監督は、この度の敵地エティハドの試合に向けて対策を講じた。

攻撃時【3−2−4―1】を形成するシティに対して、【4−2−3―1】のシステムをぶつける。ケヴィン・デ・ブライネ、ベルナルド・シウバをクロース、エドゥアルド・カマヴィンガが監視して、危険なパスを出させないようにした。

■ロドリゴの爆発

また大舞台で活躍したのが、ロドリゴ・ゴエスである。

ロドリゴは今季、序盤戦で11試合ノーゴール。さらに、リーガエスパニョーラ第18節から第29節までの期間、1ゴールに留まり、“ゴール欠乏症”に苛まれていた。

ゴールを決めるロドリゴ
ゴールを決めるロドリゴ写真:ロイター/アフロ

だがブラジル人アタッカーはビッグマッチに照準を合わせてきた。リーガ第30節アトレティック・クルブ戦で2得点を挙げると、シティとのファーストレグで1得点、セカンドレグで1得点と気を吐いた。

アンチェロッティ監督は、シーズンが佳境に入り、梃入れを行った。ロドリゴを左側に回して、アクセントをつけた。それまで、左サイドはヴィニシウス・ジュニオールの主戦場だった。そこでのポジションチェンジを行い、シティ戦での結果に繋げた。

■指揮官の手腕

もうひとつ、挙げるべきポイントがある。アンチェロッティ監督の存在だ。

昨季、シティに0−4で敗れた後、フロレンティーノ・ペレス会長はアンチェロッティ監督を“維持”した。

マドリーにとって、屈辱的な敗戦を喫した格好だった。しかしながら監督交代の論争は巻き起こらず、マドリーとしては「珍しく」指揮官の続投が決まった。

なお、マドリーは今季、アンチェロッティ監督と契約延長を行っている。2026年夏までの新契約を締結して、ブラジル代表から「ラブコール」を受けていた指揮官の繋ぎ止めに成功した。

マドリー時代のカゼミーロとアンチェロッティ監督
マドリー時代のカゼミーロとアンチェロッティ監督写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「マドリーからユナイテッドに移籍する時、一度だけ、自分の心が揺れ動いた瞬間がある。移籍に向けて、全ての準備が整っていた。残すはサインだけだった」

「僕はトレーニングに行かなければいけなかったけど、行かなかった。アンチェロッティと話す必要があった。彼は僕の移籍を知っていた。彼のオフィスに入ると、涙を流しながら、こちらを振り返ったんだ。僕の移籍を望んでいないと言っていた。その時は、心が揺れたよ」

これはカゼミーロの言葉だ。

カゼミーロは2022年夏に移籍金7000万ユーロ(約112億円)でマドリーからマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。「CMK」解体の瞬間だったが、アンチェロッティ監督と選手たちの絆がよく分かるエピソードである。

パスを出すベリンガム
パスを出すベリンガム写真:ロイター/アフロ

マドリーは良いサイクルに入っている。今季、ドブレーテ(2冠)も夢ではない。

だが今週末にはバルセロナとのクラシコが控えている。首位を走るマドリーだが、バルセロナとの勝ち点差は8ポイント。敗れた場合、それが5ポイント差まで縮まる。気を引き締めなければいけない一戦だ。

マドリーはチャンピオンズリーグ準決勝でバイエルン・ミュンヘンと対戦する。ファーストレグ(4月30日)、セカンドレグ(5月8日)、共に負けられない試合だが、クラシコで敗れると悪い流れで立ち向かうことになる。

勝利のDNA――。それを再び示すため、マドリディスタは本拠地サンティアゴ・ベルナベウに集う。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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