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バルサは本当に強くなっているのか?右サイドバックの「位置取り」とフィニッシュワークの変化

森田泰史スポーツライター
レヴァンドフスキのゴールパフォーマンス(写真:ロイター/アフロ)

一時、暫定的に、首位に立った。

リーガエスパニョーラ第6節、バルセロナはエルチェに3−0で勝利した。前半15分の段階で、ゴンサロ・ベルドゥが退場となり、10人となったエルチェを相手にゴールラッシュ。ロベルト・レヴァンドフスキの2得点とメンフィス・デパイのゴールで快勝している。

バルセロナは勝ち点3を積み上げ、暫定ながら順位表のトップに躍り出た。翌日に行われた試合でレアル・マドリーがアトレティコ・マドリーに勝利したため、再び2位に位置することになったが、今季バルセロナがリーガで無敗なのは事実である。

ボールを追うメンフィス
ボールを追うメンフィス写真:ロイター/アフロ

バルセロナとエルチェの一戦、私は『DAZN』で解説を務めていた。そのゲームを見て、「バルセロナは本当に強くなっているのか」という問いが頭を擡(もた)げた。そこで、今回はバルセロナの現状を深く掘り下げたい。

■ローテーションの選択

チャンピオンズリーグ・グループステージ第2節で、バルセロナはバイエルン・ミュンヘンに0−2と敗れた。敵地アリアンツ・アレナで、ドイツの雄を前に屈した。

バイエルン戦を終えて、戻ってきたリーガの試合で勝利を収めたのは、評価できる。シャビ・エルナンデス監督は、ローテーションを駆使しながら、競争的なチームを作り上げていると言える。

この夏にバルセロナに移籍したレヴァンドフスキ
この夏にバルセロナに移籍したレヴァンドフスキ写真:ロイター/アフロ

そのバルセロナを牽引しているのが、レヴァンドフスキだ。

レヴァンドフスキはこの夏に移籍金4500万ユーロ(約63億円)でバイエルンからバルセロナに移籍した。バルセロナ加入後、公式戦8試合で11得点をマークしており、驚異的なスピードでフィットしている。

シャビ監督はレヴァンドフスキを中心に据え、チームビルディングを行っている。ウィングにはウスマン・デンベレ、ハフィーニャとスピードと突破力を有する選手を置き、幅と深みを確保している。

■即時奪回の徹底

他方で、逆説的になるが、シャビ監督のバルセロナの強みは守備にある。具体的には、「即時奪回」だ。

ボールを失ってからの切り替えの守備が、バルセロナは非常に早い。相手が奪ったボールを、奪い返すために、そのゾーンにいる選手たちがすぐに囲い込みにいく。

この即時奪回で、ポイントになっている選手はガビだ。

バルセロナのカンテラ出身選手であるガビは、無論、高いテクニックを備えている。しかしながらガビが若くしてトップレベルでプレーできているのは、そのプレー強度と豊富な運動量ゆえである。その辺りが、スペイン代表のルイス・エンリケ監督が彼を気に入る所以でもある。

(ガビのプレス)

@Coachvoice
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ガビの在・不在で、バルセロナの守備は変化する。ただ、いずれにせよボールを奪ってからのトランジションで素早く前線の選手にボールを預け、スピードのあるカウンターが展開される。それは現在のバルセロナの大きな武器になっている。

■右サイドバックの位置取り

またシャビ監督が、この数試合で変化を起こしてきているのが、サイドバックの立ち位置だ。

バルセロナは今夏、セルジーニョ・デストをミランにレンタルで放出して、代わりにエクトル・ベジェリンを獲得している。

ベジェリンは、アーセナル、ベティスでプレーしていた頃、大外のレーンを走ることが多い選手だった。しかし、シャビ監督はベジェリンに内側を取るタスクを課している。

ベジェリンがハーフスペースを取り、WGのハフィーニャがワイドに張る。IHのガビがニアゾーンランで飛び出せば、相手のマークを撹乱できる。

サイドを崩せれば、中央にはレヴァンドフスキがいる。卓越したフィニッシャーを擁しているからこそ成り立つ戦術でもあり、この手法は機能している。

■変化と勝利の薬

もちろん、戦術が成立したとしても、勝てなければ意味がない。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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