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なぜレアルはリュディガーを獲得したのか...アンチェロッティの“後方支援”と3バックの可能性。

森田泰史スポーツライター
移籍が決まったリュディガー(写真:ロイター/アフロ)

勝者のメンタリティーが、備わっているのかもしれない。

レアル・マドリーは2021−22シーズン、チャンピオンズリーグとリーガエスパニョーラで優勝を飾り、ドブレテ(2冠)を達成した。本拠地サンティアゴ・ベルナベウで数々の逆転劇を演じ、ビッグイヤーを獲得したのは記憶に新しいところだ。

だがマドリーはすでに次に向けて動き始めている。アントニオ・リュディガーとオウリエン・チュアメニを獲得して、最終ラインと中盤を補強した。

■補強のストップ

一方で、マドリーはキリアン・エムバペの獲得に失敗している。

「サッカー選手というのは、俳優ではない。歌手でもない。選手は、チームの中で、平等に扱われなければいけない。誰も上に立つということはない」とはフロレンティーノ・ペレス会長のコメントだ。

「エムバペに何かしらの影響があったとしたら、政治的なプレッシャーかもしれない。何かにブロックされてしまったような感じだった。ずっとマドリーでプレーするのが夢だと言っていた選手が、最終的には…。出て行こうとしたところ、パニックに襲われた。辛い思いをしただろう。例えば、スペインで、国王がベティスのある選手に連絡をして、出て行かないで欲しいというだろうか。私の中では、あり得ない」

「現時点、補強に関しては、一旦ストップしている。7月と8月に、どういう選手がマーケットにいるか、見てみよう」

ラ・リーガを制したマドリー
ラ・リーガを制したマドリー写真:ロイター/アフロ

マドリーは昨年夏、セルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァランを放出した。カルロ・アンチェロッティ監督が復帰したファーストシーズンで、新加入のダビド・アラバとエデル・ミリトンがCBのコンビを組んだ。彼らが欠場した際には、「ザ・ポリバレント」であるナチョ・フェルナンデスがしっかりと穴を埋め、その後ろにはヘスス・バジェホが控えていた。

それでも、駒不足感は否めなかった。ゆえに、マドリーはチェルシーとの契約が満了を迎えようとしていたリュディガーに白羽の矢を立てた。アラバの時と同様に、フリートランスファーで経験豊富な選手を確保した。

■リュディガー加入と選択肢

リュディガーの加入は、マドリーに何をもたらすだろうか。指摘されているのは、リュディガーとミリトンをツー・センターに据え、アラバを左サイドバックに回す可能性だ。

だがフェルラン・メンディを外すというのは考えにくい。マルセロの退団があったとはいえ、メンディのような選手を評価できなくなれば、チームは土台から崩れる恐れがある。

リュディガーはボルシア・ドルトムントとシュトゥットガルトの下部組織で育った。シュトゥットガルトでトップデビューを果たした後、ローマを経て、2017年夏に移籍金3500万ユーロでチェルシーに移籍。アントニオ・コンテ監督、マウリツィオ・サッリ監督、フランク・ランパード監督、トーマス・トゥヘル監督と幾度となく指揮官交代が行われる中で出場機会を積んだ。

リュディガーの評価を高めたのは、やはりトゥヘル政権においてだろう。3バックの左を務め、チアゴ・シウバ、セサル・アスピリクエタらと共に、スピード、パワー、高さ、ビルドアップ能力で後方からチームを支援した。

となると、気になるのはマドリーの3バックの可能性だ。

移籍一年目で活躍したアラバ
移籍一年目で活躍したアラバ写真:Maurizio Borsari/アフロ

21−22シーズン、マドリーの基本システムは【4−3−3】だった。

カゼミロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチの「盤石の中盤」を中心にシステムが構築され、前線ではカリム・ベンゼマとヴィニシウス・ジュニオールの「デュオ」が確立された。アンチェロッティ監督の悩みは、右WGにロドリゴ・ゴエス、フェデリコ・バルベルデ、マルコ・アセンシオの誰を置くかというくらいだった。

しかしながら、次のシーズン、マドリーは研究されるだろう。CLとラ・リーガを制したことで、彼らは「倒すべき存在」となる。ヨーロッパとスペイン中が総出で徹底的にレアル・マドリーを分析するはずだ。

そこで、3バックである。

3バックを採用した場合、もうひとつ、メリットがある。それは中盤のテコ入れだ。近年のマドリーは、中盤の選手の代役を探すのに苦労してきた。

特に、カゼミロが務めるアンカーは、適性のあるプレーヤーがいなかった。エドゥアルド・カマヴィンガの台頭があり、チュアメニの獲得があった。ただ、彼らを無理にアンカーポジションに嵌めるより、【3−5−2】のダブルボランチにして、ミドルゾーンを厚くする方が良いのではないかと思える。

また、このシステムであれば、ベルギー代表で輝きを放っているエデン・アザールをトップ下に配置できる。奮起を誓っているアザールに、プレータイムを与えられる。

ドイツ代表としてもプレーするリュディガー
ドイツ代表としてもプレーするリュディガー写真:Maurizio Borsari/アフロ

ジネディーヌ・ジダン前監督の下でも、3バックは試されていた。だが、カゼミロのCB起用やヴィニシウスの右WB配置など、ジダン・マドリーにおける3バックの戦術練度は低かった。

ただ、アンチェロッティ監督であれば、うまく使いこなせるのではないかという期待がある。いずれにせよ、3バックは、ひとつのオプションだ。

確かなのは、リュディガーの獲得が、マドリーに新たな戦術のバリエーションを与えるということだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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