Yahoo!ニュース

バルサ残留を決心したメッシの「本音」とは?バルトメウを襲った最大級のクライシス。

森田泰史スポーツライター
バルセロナの中心選手であるメッシ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

リオネル・メッシのバルセロナ残留が決定した。

メッシは今夏、バルセロナからの移籍を検討していた。8月25日にburofax(ブロファックス/内容証明郵便)をクラブに送り、退団希望を伝えた。バルセロナ側はメッシが6月10日までに退団を申し出なければならなかったと主張。両者の緊張関係が続いた。

最終的にはメッシ側が折れた。「生涯のクラブと裁判で争うことは望まない」と残留を明言。退団騒動に終止符が打たれた瞬間だった。

「MSN」時代のバルセロナ/筆者作成
「MSN」時代のバルセロナ/筆者作成

現在、メッシとジョゼップ・マリア・バルトメウ会長の関係が良好ではないのは明らかだ。

今回の騒動はバルトメウ政権で2度目のクライシス(危機)である。1度目のクライシスに襲われたのは2015年1月だ。当時、暫定会長としてポストに就いていたバルトメウだが、ルイス・エンリケ監督とメッシが確執が取り沙汰された。レアル・ソシエダ戦でメッシがベンチスタートとなり、その試合で敗れたのが引き金だった。

苦境に追い込まれたバルトメウは、スポーツディレクターを務めていたアンドニ・スビサレッタの解任と会長選の前倒しを決断する。そして、2014-15シーズン、「MSN」を中心としたバルセロナはリーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグで優勝を達成。3冠を成し遂げた暫定会長を誰もが支持し、2015年夏の会長選でバルトメウが当選した。

筆者作成
筆者作成

しかしながら2017年夏に転機が訪れる。それが長い目で見れば今回の騒動につながるわけだが、ネイマールのパリ・サンジェルマン移籍だ。

メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの「MSN」は破壊的な攻撃力で欧州中の脅威になっていた。

だが「N」が抜けて、バルセロナは新たなチーム作りを強いられる。エルネスト・バルベルデ元監督は苦肉の策で【4-4-2】を採用した。それによりメッシとスアレスの守備負担軽減に成功するも、一方で彼らがディフェンスをしないというのが常態化した。

その間、バルセロナはネイマールの代役確保に腐心した。しかし、ウスマン・デンベレ(移籍金固定額1億500万ユーロ/約126億円)、フィリップ・コウチーニョ(移籍金固定額1億2000万ユーロ/約144億円)、アントワーヌ・グリーズマン(契約解除金1億2000万ユーロ/約144億円)と3億4500万ユーロ(約414億円)を投じながらもネイマールの穴は埋められなかった。

度重なる補強の失敗と、指揮官の交代。加えて、結果が出なければ選手に責任が押し付けられる。メッシの我慢は限界に達していた。

メッシの現行契約は2021年夏までとなっている。この夏、彼が残留したのは、ひとえに契約解除金7億ユーロ(約840億円)を準備できるクラブが存在しなかったからだ。

メッシと現会長の関係は冷え切っている。来年3月に行われる会長選で新たな人物が当選すれば、状況は好転するかも知れない。とはいえ、それでさえ他力本願だというのがバルセロナの現状であり、紛れもない現実だ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事