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バルサの若き「王様」リキ・プッチの大きな挑戦。ポエムのようなボールタッチを武器に。

森田泰史スポーツライター
ドリブルするリキ・プッチ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

現在、バルセロナが必要としているのは「世代交代の波」だ。

リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、セルヒオ・ブスケッツ、ジェラール・ピケといった選手たちはいずれも30歳を超えている。主力の高齢化が叫ばれて久しい。だが新陳代謝が促進されないまま、長きにわたりメッシに頼るチーム作りが行われてきた。

そんな中、今季、カンテラーノが頭角を現してきた。リキ・プッチやアンス・ファティというカンテラーノへの期待は俄かに高まっている。

■シャビに憧れて

リキ・プッチは2013年にジャバックを離れ、バルセロナのカンテラに入団した。

ジョゼップ・グアルディオラ監督のバルセロナ、通称ペップ・チームの活躍を、彼は幼い頃から目に焼き付けていた。憧れの選手はシャビ・エルナンデスだった。

4年間で14個のタイトルを獲得したペップ・チームで、メッシ、シャビ、アンドレス・イニエスタの存在感は圧倒的であった。小柄なクラック(名手)たちが自由自在にボールを操り、ボールを保持しながら相手を蹂躙する様は世界中のフットボールファンを虜にした。

グアルディオラ監督の下では、実に22人のカンテラーノがトップデビューを飾っている。しかしながら育成と結果の両立は簡単ではなく、日に日に総合力の必要性が高まるフットボールの世界で、各クラブはスタープレーヤーの獲得と大型補強に走った。それはまた、バルセロナとて例外ではなかった。

■フィジカルベースと頭脳

2015年夏にシャビが、2018年夏にイニエスタがクラブを去った。

イニエスタとスイッチするように、トップチームに割って入ろうと出てきたのがリキ・プッチだ。2018-19シーズン、プレシーズンマッチで初めて彼のプレーを見たジェンナーロ・ガットゥーゾ監督(当時ミラン)は「まだ幼い顔をしているが、ボール扱い、プレーそのものを見れば、彼自身の中にフットボールが宿っていると分かる。リキ・プッチのボールタッチはポエムのようだ」と評した。

169cm、56Kgという細身な青年は、フィジカルの弱さを理由に、育成年代ではスペイン世代別代表から一度も声が掛からなかった。

だが、だからこそ、リキ・プッチをどのように扱うかがバルセロナのカンテラとしては重要なのだ。

「バルサには筋肉が必要だと言われていた。その言葉に、僕は幾度となく苛立った。フットボールにおいて、最も重要な筋肉というのは、頭脳に他ならない。そう、クライフが言っていたようにね」

これはシャビの言葉だ。「筋肉」とは、フィジカル能力を指す。シャビが語るところの筋肉を上回る頭脳を、リキ・プッチはピッチ上で見せられのかーー。未来への道筋が、そこに示されている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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