際立つプレミアの強さと、進む分業制。移籍と残留の狭間で揺れた選手たち。

リヴァプール対マンチェスター・シティの一戦(写真:ロイター/アフロ)

長い夏が、終わりを迎えた。

欧州5大リーグのうちのスペイン、イタリア、フランス、ドイツで9月2日に移籍市場が閉鎖した。8月8日に閉鎖していたイングランドを含め、各チームのメンバーが決定している。

過去を振り返れば、移籍市場最終日に大型移籍が決まっていた。

ロナウド(レアル・マドリー/2002年夏)、ガレス・ベイル(レアル・マドリー/2013年夏)、メスト・エジル(アーセナル/2013年夏)、キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン/2017年夏)...。しかしながら、この夏、移籍市場最終日に決まった大きな移籍はマウロ・イカルディのパリ・サンジェルマン移籍くらいだろう。

ファイナンシャル・フェアプレーの影響は避けられない。デッドラインに大金をはたいて取引を成立させるのは難しくなってきている。交渉の手法が、変わろうとしているのだ。

■プレミアの強さ

5大リーグでは、やはり、プレミアリーグが強さを見せた。安定した収入と健全なリーグ運営が下地になっている。

この夏の補強費はプレミアリーグ(15億5000万ユーロ/約1820億円)、リーガエスパニョーラ(13億2000万ユーロ/約1550億円)、セリエA(11億7700万ユーロ/約約1390億円)、ブンデスリーガ(7億4200万ユーロ/約875億円)、リーグアン(6億6900万ユーロ/約790億円)である。

プレミアリーグはテレビ放映権により巨額の収入を得ている。2018-19シーズン、リヴァプール(1億7000万ユーロ/約200億円)、マンチェスター・シティ(1億6800万ユーロ/約198億円)、チェルシー(1億6200万ユーロ/約191億円)、トッテナム(1億6100万ユーロ/約189億円)、マンチェスター・ユナイテッド(1億5860万ユーロ/約187億円)、アーセナル(1億5820万ユーロ/約186億円)とトップ6に対して十分な資金が与えられている。

上位陣の収入はさることながら、特筆すべきは全体の差額だ。最高額のリヴァプール(1億7000万ユーロ/約200億円)と最低額のハダースフィールド(1億600万ユーロ/約125億円)に大きな開きはない。

例えばリーガでは、2018-19シーズン、バルセロナが1億5400万ユーロ(約190億円)を、レアル・マドリーが1億4800万ユーロ(約183億円)を、アトレティコ・マドリーが1億1000万ユーロ(約136億円)を受け取っている。テレビ放映権の収入で1億ユーロを超えているのは、この3クラブだけだ。

最低額はジローナとレガネスのもので、4330万ユーロ(約53億円)である。リーグ全体の競争力に違いが出ているのは明らかで、この辺りを改善しなければ、プレミアの一人勝ちという状況は今後も続く可能性が高い。

■分業制

かつて、ジョゼ・モウリーニョ監督は、レアル・マドリーで補強をめぐってフロントと衝突した。そして、当時ゼネラルディレクターを務めていたホルヘ・バルダーノをクラブから追い出した。「補強について考える人間が2人いると、調和が乱れてしまう。それを考慮しての、決断だった。バルダーノが去るのは心苦しい。長い間、彼とは共に歩んできた」とは、フロレンティーノ・ペレス会長の言葉だ。

かくして、モウリーニョ監督は補強の全権を手に入れた。だが現在は分業制が進んでいる。監督が補強の全権を担うことは、なくなってきている。

今夏、パリ・サンジェルマン、バルセロナ、レアル・マドリー、バレンシアといったクラブにおいて、その実情が透けて見えた。

パリSGはリーグアン開幕直後、エディンソン・カバーニとキリアン・ムバッペが負傷。しかし、そこでトーマス・トゥヘル監督が招集したのはヘセ・ロドリゲスだった。ネイマールには、バルセロナ移籍の可能性があったためだ。トゥヘル監督は一貫してネイマールの移籍問題をクラブに委ねると主張し続けた。

バルセロナを率いるエルネスト・バルベルデ監督はイバン・ラキティッチをリーガ開幕から3試合にわたりスタメンから外している。2018-19シーズン、セルヒオ・ブスケッツ(54試合出場)に次いで、試合に出ていたラキティッチ(53試合出場)を、である。

バルベルデ監督はラキティッチのベンチスタートとマーケットの関係性を否定した。だが、ネイマール獲得オペレーションに複数選手を含めようとしていたバルセロナの思惑から、バルベルデ監督の起用法に何らかの影響があったのは自明だった。

レアル・マドリーでは、この夏、ガレス・ベイルが移籍を希望していた。インターナショナル・チャンピオンズカップのアーセナル戦で出場を望まず、ジネディーヌ・ジダン監督が「24時間から48時間以内に解決する」と彼の退団を公言。だがクラブはベイルの移籍先を定められず、結局マドリー残留が決まった。

また、バレンシアにおいてはオーナーのピーター・リムとスポーツディレクターのマテウ・アレマニーが補強に関して真っ向から対立した。ジョルジュ・メンデス代理人の介入で事態は複雑になり、アレマニーの権力が弱まった。ロドリゴ・モレノのアトレティコ・マドリー移籍話が浮上した挙げ句、2年連続でチャンピオンズリーグ出場権を獲得したマルセリーノ・ガルシア・トラル監督が解任されるという結末を迎えている。

お金と権利をめぐるバランスは崩れ始めている。金満と呼ばれるクラブでさえ、安泰ではない。選手は移籍を志願すればチームを変えられる、という時代ではなくなった。時は流れ、シーズンが開幕して、市場が閉鎖した。置かれた場所で花を咲かせるしかないのである。