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西野ジャパンの初陣は完敗に終わる。機能しなかった3バックと2シャドー。

森田泰史スポーツライター
中盤で起用された柴崎と大島(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

西野朗監督の初陣に花を添えることはできなかった。

日本代表は30日に行われたキリンチャレンジカップ2018でガーナ代表と対戦。0-2と敗れ、ロシア・ワールドカップ前国内最後の試合を終えている。

■変則的な布陣

試合開始直後、「おっ」と思わされた。西野ジャパンは3-4-2-1という、変則的なシステムを敷いたからだ。

長谷部誠が所属するフランクフルトでリベロを務めた経験を買ったからか、最終ラインには長谷部、吉田麻也、槙野智章が並んだ。ヴァイッド・ハリルホジッチを解任した日本としては、何かしら梃入れをする必要がある。それが布陣に顕れていた。

3バックに加え、目を引いたのが、2シャドーだった。1トップで起用された大迫勇也の後方に、本田圭佑と宇佐美貴史が位置取る。西野監督の「目玉」といえる選手たちが攻撃の全権を担った。

■崩れたセオリー

だが、新布陣は機能しなかった。ガーナが早い時間帯に先制した影響もあったかもしれない。しかし、日本はボールの奪い所がはっきりせず、故にカウンターを仕掛ける位置が定まらない。前任のハリルホジッチが志向したカウンター、縦に速いサッカーと訣別して、ポゼッションと心中する覚悟が示されたかと問われれば、その答えも「ノー」だった。

本来であれば、ポジションごとのセオリーが守れたら、問題は生じない。ただ、不慣れなシステムにおける選手間の距離感は想像以上に難しい。パスの受け手が、その次のことを全く考えないでボールを受けてしまう。すると、周囲の動き出しは遅くなる。悪循環に陥り、西野ジャパンはバラバラになってしまった。

個々の選手のプレー範囲が広ければいいのだが、その点においてもガーナが優っていた。ひとつひとつのプレーの間が「一拍」空いてしまう。ちぐはぐ感が否めなかった。外から見ていても「遅い」と感じる。物理的なスピード、パススピード、それぞれの反応速度。どれを取っても、ガーナを上回ることができていなかった。

ピッチには、たくさんの情報が転がっている。その情報処理のスピードが遅ければ、後手を踏むことになる。

■連動性は

連動性は日本の大きな武器になるはずだった。監督を交代しても、選手を入れ替えても、ここが高まってこないようであれば、正直厳しい。

システム変更によって齟齬が生まれるのであれば、それはマイナスになりかねない。ハリルホジッチを解任した理由が監督と選手のコミュニケーションであるなら、組織としての連動性や連携面での向上が期待される。しかし、そこには残された時間が少ないという矛盾が孕んでいる。

突きつけられた現実。ガーナはW杯に出場しないのだ。本大会で対戦するコロンビア、ポーランド、セネガルはガーナ以上のチームである。矛盾と戦いながら、活路を見いだせるのか。西野ジャパンの挑戦はかつてないほど厳しいものになるかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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