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策士マチンが敷く3バックに縦の4ライン。昇格1年目で臆せず戦うジローナの冒険。

森田泰史スポーツライター
本拠地モンティリビでレアル・マドリーを下したジローナ(写真:ロイター/アフロ)

降格候補の筆頭だと見られていた。昇格組のジローナが、奮闘している。

リーガエスパニョーラ1部の「新参者」であるジローナだが、臆する気配はまったくない。リーガ第10節でレアル・マドリーを本拠地モンティリビで2-1と破り、第20節では敵地ワンダ・メトロポリターノでアトレティコ・マドリーに1-1と引き分けた。

■エースはベテランストライカー

ジローナの攻撃を牽引しているのは、クリスティアン・ストゥアニだ。31歳のベテランストライカーは、リーガ19試合に出場して12得点(1試合平均0,63得点)を挙げている。

「規格外」であるバルセロナのリオネル・メッシ(22試合20得点/1試合平均0,91得点)を除けば、アトレティコのアントワーヌ・グリエズマン(19試合7得点/1試合平均0,37得点)、マドリーのクリスティアーノ・ロナウド(17試合8得点/1試合平均0,47得点)とリーガ屈指のFW陣を上回る数字だ。

一方で、ジローナに副作用が起こった。チーム得点の38%はストゥアニが記録したものだ。当然、周囲では「エース依存症」が囁かれ始めた。

解決策となりそうなのが、クリスティアン・ポルトゥゲス、通称“ポルトゥ”である。ポルトゥはリーガ22試合で8得点。主力として初めて挑むリーガ1部の舞台で、徐々に頭角を現している。

■3バックと縦の4ライン

今季のリーガはバルセロナ、アトレティコ、バレンシア、レアル・マドリーをはじめ4-4-2を敷くチームが多い。これらのチームの縦のラインが3つなのに対して、ジローナの縦ラインは4つだ。

パブロ・マチン監督は3-4-2-1を施行する。「4」の高さに位置する両サイドハーフ、パブロ・マフェオとフランシスコ・アダイを捕まえるのは困難だ。ウイングを置かないシステム(例えば4-4-2)では、マフェオとアダイに対してSBが対応することになる。

相手のSBを引き出せたら、「2」に位置するポルトゥやボルハ・ガルシアがその裏のスペースを狙う。対応に来なければマフェオ、アダイがシンプルにクロスボールを放り込む。中央には空中戦に強いストゥアニがいる。これがジローナの大きな武器となっているのだ。

■独特なシステムが機能する理由

ジローナの主力の大半が長く一緒にプレーしており、彼らの間には確かな共通理解がある。マチン監督が敷く戦術には難解な部分があるが、それが解釈されピッチ上で体現されているのは、長期間を共に過ごしている経験が大きい。

アレックス・グラネルは「ジローナのプレースタイルは特殊だ。それが機能するためには、知識が必要になる。でも、ジローナの多くの選手は数年間一緒にプレーしてきた。その事実は僕たちを大いに助けてくれている」と好調の秘訣を明かしている。

カンテラーノのペレ・ポンス(計6シーズン目)、ベテランのエロイ・アマガット(計9シーズン目)はさることながら、アダイとグラネルは今季ジローナで4シーズン目、ペドロ・アルカラ、ボルハ・ガルシアは3シーズン目を迎えている。

ジローナはリーガ第22節で、10試合無敗を誇っていたアスレティック・ビルバオに2-0で勝利した。勝ち点を31に積み上げ、9位に浮上。6位セビージャとは勝ち点2差で、ヨーロッパリーグ出場権獲得も視野に入ってきた。ジロニスタの夢が膨らんでいる。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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