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智弁の怪物 岡本 いきなり爆発

森本栄浩毎日放送アナウンサー
智弁学園(奈良)の主砲・岡本和真のバットが初戦から火を噴いた。

高校野球の最高峰である甲子園大会に全国ナンバーワン選手が出場できるとは限らない。投手で言えば、済美(愛媛)の安楽、昨夏優勝投手の前橋育英(群馬)の高橋光成が右腕では双璧だが、センバツには姿を見せられなかった。昨秋の段階で打者の世代(今年高校3年生)最高選手は智弁学園(奈良)の岡本和真(3年)という評判だったが、初戦でその噂が真実であることを証明した。

自分のペースで有限実行

春のシーズンインから3番を任されていた岡本は、初回、2死走者なしで甲子園初打席が回ってきた。三重の今井重太朗(3年)は昨夏も甲子園のマウンドを経験している左腕。早いテンポでインサイドを続けて狙う。3球目のバックネットへのファウルはやや詰まらされた。ここまでは今井の狙い通り。「ポンポン投げてくるのでファウルで自分のペースになった」と岡本。2球見きわめ、フルカウントからのラストボールを落ち着いてしとめた。高い放物線を描いてバックスクリーンに落下する打球を確認すると、岡本はガッツポーズを見せた。「バックスクリーンに打ちたい、と言っていたので、有言実行できてうれしい」とは恐れ入った。センバツが決まった日に堂々と「バックスクリーンに一発いきたい」と話していたからだ。小坂将商監督(36)の3番起用も意味がある。3番打者は必ず初回に打席が回ってくる。初回の主砲の一発はチーム全体に勢いをつける。昨夏、日大山形の奥村展征(巨人)が日大三(西東京)戦で初回に強烈な一撃を放った。これが日大山形4強進出、快進撃のきっかけになったのは記憶に新しいところだ。次打席は、逆らわずセンターに打ち返してチャンスメイク。1打席目で余裕ができたか、小技も冴えている。結果的にはこのあとの2死からの3得点が試合を左右した。昨秋は、龍谷大平安(京都)が岡本に打たせず、打線を分断されて敗れていたから、岡本の後の打者が活躍したことはチームとして価値がある。3打席目は豪快に引っ張って、打った瞬間レフトスタンドという当たりで、軽くセンバツタイ記録を樹立した。「練習でやっているバッティングができました」とさらりと言ってのけたが、立派な身体とは対照的に声は小さく、照れながら話す様は初々しい。

打席によって意識を変える

大会新の1試合3本塁打が懸かった無死2塁の4打席目は、直前で三重の投手が今井から右腕の辻本隼人(3年)に代わった。1塁が空いていたこともあり、初球が外に大きく外れるボールだったことから、歩かされるのでは、との思いがあったかもしれない。2球目のストライクに思わず手が出てしまった。2塁へのポップフライに倒れ、「せっかくチャンスを作ってくれたのにつなげられず申し訳ない」と反省を口にした。「バットの長さを変えたり、打席によって状況を意識しています」言うように、岡本は単なる長距離打者ではない。小坂監督の、「常に次の打者につなぐつもりで」という徹底した指導がコメントにも表れている。

次戦は最強左腕と 投手・岡本も期待

さらに岡本は打つだけではない。

岡本はマウンドに上がってもすごい。近畿大会でも140キロ超の速球を披露した
岡本はマウンドに上がってもすごい。近畿大会でも140キロ超の速球を披露した

試合中、何度かブルペンに足を運んだ。140キロ超の剛球を投げることは近畿大会でも実証済みだ。「いいピッチャーがいるので」と本人は謙遜していたが、投げたい気持ちがないはずはない。9回の三重打線が中軸で、主戦の尾田恭平(3年)も力投していたことから、この試合では小坂監督も決断を躊躇したのだろう。「投手岡本」は次戦以降に持ち越されたが、次は佐野日大(栃木)の田嶋大樹(3年)が相手。冒頭のナンバーワン選手で言えば、田嶋は今大会随一の左腕。全国でも屈指のサウスポーと言って間違いない。ネット裏で見つめたソフトバンクの永山スカウト部長は、「本当の生きた球を打てるかどうかは、次の試合でわかりますね」と話す。高校野球は2戦目に最も実力が出る。最強スラッガーの真価が問われる一戦から目が離せない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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