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裸のフィギュア役の衝撃から10年の佐々木心音。「こんな愛のあるセックスシーンは今までなかったかも」

水上賢治映画ライター
「道で拾った女」で主演を務めた佐々木心音   筆者撮影

 石井隆、瀬々敬久ら、いわゆる鬼才と呼ばれる監督たちのミューズとなってヒロインを務めてきた、佐々木心音。

 近年では「娼年」や「愚か者のブルース」など、バイプレイヤーとしても確かな存在感を放つ彼女だが、今秋公開となる2本の主演映画「道で拾った女」と「クオリア」でみせる姿は、「演技者として新たに覚醒して、次なる領域に入ったのではないか」と思わせる。

 それほど何かを予見させる女優・佐々木心音がそこにいる。

 鮮烈な印象を残した2013年の「フィギュアなあなた」のドール役から本格的に女優のキャリアをスタートさせて約10年。新たな飛躍を予感させる彼女に「道で拾った女」と「クオリア」の両主演作について訊くインタビュー。

 まずはいまおかしんじ監督と初のタッグを組んだ「道で拾った女」について訊く。全七回。

「道で拾った女」で主演を務めた佐々木心音   筆者撮影
「道で拾った女」で主演を務めた佐々木心音   筆者撮影

竜平は憎めない。クズで下心みえみえなんですけど

 前回(第四回はこちら)は、のぞみの抱えている哀しみをどう表現するかについて語ってくれた。

 では、ここからはのぞみが一緒に旅をすることになる竜平についての話を。

 大きな哀しみを背負ったのぞみは、ホームレス生活を送っていたところ、ほかの路上生活者たちにレイプされかかる。

 その窮地を救ってくれたのが、トラックドライバーの竜平。

 そこで「バイトしないか、1日あたり5000円を出す。このトラックに乗ってくれるだけでいい」と竜平はのぞみに持ち掛ける。

 その申し出に応じる形で、竜平とのぞみの関係は始まる。

 この竜平だが最初から下心がみえみえなところがある。

 その中で、のぞみは申し出に乗ることになるのだが、このあたりについて佐々木はこう分析する。

「ふつうは、ホイホイとついていけないですよね。

 ただ、見ていただくとわかると思うんですけど、竜平はなんか憎めないんですよね。

 演じられた浜田学さんの人間性がそのまま反映されているような気がするんですけど、人としての実直さや誠実さが感じられて愛嬌があって憎めない。

 ちょっとズルくてクズなところもあるんですけど、それもある意味、人間臭くて『まあいいか』と許せてしまう。

 そういうところをのぞみは敏感に感じとったことがまずひとつあると思います。

 それから、単純にお金がほしかったのもあるかなと。

 ホームレス状態ですけど、彼女もこのままではいけないとどこか心の片隅では考えている。

 なにか立ち直るきっかけみたいなことを探している。

 これがきっかけになるとはこのときは思ってないでしょうけど、なにか変えたいとは考えてはいた。

 そこでの申し出で、『なにかがかわるかもしれない』と、そういう期待もあって話に乗ったところもあったと思います。

 あとは、一応、恩人というか。

 レイプされかかったときに、かなりヘタレでしたけど、助けてはくれた。

 その良心を受けて、まあ一緒に旅してもいいかなと思った気がします」

「道で拾った女」より
「道で拾った女」より

竜平とのぞみは、似た者同士なんです

 二人は時にいがみ合い、ぶつかり合いながらも、互いの身の上を知り、打ち解ける中で距離を縮めていく。

「ここまでお話ししてきたように、のぞみは大きな哀しみを抱えている。

 そのことが要因で耐えきれなくなって、一年前に家を出て、気づけばホームレスであてどない毎日を送っていた。

 一方で、竜平は竜平で妻はいる。でも、彼女の待つ家に帰りたくない事情があった。

 つまり二人とも実は帰る場所がない。

 もしかしたら帰ってもいいのかもしれないけど、彼らは彼らなりにプライドがあっていまは帰りたくない。

 でも、やはり孤独で寂しさは否めなくて、やっぱり隣に誰かいてほしい。

 竜平とのぞみは、似た者同士なんですよね。

 一度、大ゲンカをしますけど、変にお互いのことを詮索もしなければ、同情もしない。

 それがお互いに心地よかったんだと思います。

 だから、つかずはなれずで、時にケンカしながらも旅は続いていった気がします」

いままでにないすごく愛の感じられるシーンになったなと感じました

 こうして互いを認め合った二人は、体を求めあうことになる。

 これまで佐々木自身は、さまざまな作品でいわゆる「濡れ場」を演じてきた。

 ただ、振り返ってみると、本格的な俳優デビュー作となった「フィギュアなあなた」や「娼年」「最低。」など、ちょっと異質の性愛シーンが多かった気がする。

 それに対して、今回はお互いの愛があふれるラブシーンになっている。

 ここまで佐々木が出演してきた作品で、愛の感じられるラブシーンはあまり記憶にない。

「そういわれると、そうかもしれません。

 『フィギュアなあなた』はそもそも人間じゃないですし、『最低。』はセクシー女優さんの役で劇中劇ですもんね。

 『娼年』は、変わった夫婦の妻役で…。

 いずれも『業務』的な感じといいますか。ひとつのプレイで。

 確かにそう考えると、今回のようなひとりの男性と出逢って、心を通わせて、気持ちが高まって互いに求めあって結ばれる、みたいな形の愛のあるセックスシーンはあまりこれまでなかったかもしれません。

 竜平とのぞみはあの時点で、もうお互いに自分の人生ときちんと向き合わないといけないことはわかっていると思うんです。

 それはイコールで別れを意味しているということも。

 だから、セックスしない方がさらっと別れられてよかったかもしれない。

 でも、あえて自分の中にお互いのことを刻むことにした。

 のぞみにとっては竜平の存在をきちんと記憶に刻んでおきたかったから。

 自分が新たな一歩を踏み出すきっかけをくれたから、忘れないでおきたかったんです。

 それで体を重ねたところがあって、自分でもいままでにないすごく愛の感じられるシーンになったなと感じました」

(※第六回に続く)

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第一回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第二回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第三回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第四回はこちら】

「道で拾った女」ポスタービジュアル
「道で拾った女」ポスタービジュアル

「道で拾った女」

脚本・監督:いまおかしんじ

出演:浜田 学 佐々木心音

川上なな実 永井すみれ 東 龍之介 成松 修 川瀬陽太

全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて(C)2023レジェンド・ピクチャーズ

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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