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しゅはまはるみがドッキリにはめられる?「ワンシーンなのに、ずっと変な汗をかいていました(苦笑)」

水上賢治映画ライター
「あらののはて」に出演したしゅはまはるみ 筆者撮影

 高校2年生の冬、クラスメイトで美術部の大谷荒野に頼まれ、絵画モデルをしたところ、理由のわからない絶頂感に襲われ、失神した野々宮風子。

 以来、風子はその絶頂感が忘れられないまま。ただ、担任のあらぬ誤解で退学となってしまった荒野とはそのときから会っていない。

 25歳になった彼女は、あの絶頂の真意を追い求め、荒野のもとに押しかける!

 こんなこじらせ女性の恋愛の行方を描く映画「あらののはて」。

 自主映画制作ユニット「ルネシネマ」が手掛けた本作について、同ユニットのメンバーのひとりで、出演もするしゅはまはるみに訊くインタビューの後編へ。

 前回のインタビューでは主に「ルネシネマ」の立ち上げから、「あらののはて」の出演の経緯を訊いたが、ここからはさらに作品世界について訊いていく。

珠美はどこか現実逃避している風子をきちんと現実に引き戻す役

 しゅはまが演じた絵画教室の講師、珠美は、主人公・風子のよき友人。

 絵画モデルをしたときに感じた絶頂感がいまだ忘れられない風子に対し、彼女は、もう一度、荒野に会うようにうながす。

 風子がひとつ現実を取り戻すきっかけを与える人物になる。

「演じたときは、あまり意識していなかったんですけど、いま考えてみると、珠美はすべてお見通しだったかもしれない。

 風子に『彼(荒野)に会ってみれば』といいながら、思い出は美化されがちということを珠美はわかっている。

 そういう意味で、どこか現実逃避している風子をきちんと現実に引き戻す役かもしれないですね」

「あらののはて」より
「あらののはて」より

たったワンシーンなのに、ずっと変な汗をかいていました(苦笑)

 出演シーンは少ないが、撮影時はものすごく緊張していたという。その理由は?

「わたしが演じた珠美は、絵画教室で3人の男性に教えている。

 あの三人の生徒を演じた俳優さんは、小劇場の世界でこの3人の名前を知らないようではもぐりといわれるほど、偉大なレジェンド俳優さんなんです。

 長谷川監督に『はめられた!』と思いました。もう、びっくりですよ。

 だから、たったワンシーンなのに、ずっと変な汗をかいていました(苦笑)。

 しかも、自分が先生で指導する役じゃないですか。

 もう、つまらない演技をしたら、どうしようとか、悪い方向に行くことばかり考えてプレッシャーでしかなかったです

小劇場のレジェンド俳優たちの共演に注目を

 実際のあのシーンをみて、どう感じてたのだろう。

「なんてことないシーンなんですけど、3人ともに細かい演技をしているんですよね。

 さすがだと思いました。セリフもないんですけど、きちんとあの場に存在している。

 たぶんみなさん、頭の中では何か面白いことできないかと思って、ずっと考えて臨んでいたと思います。

 このレジェンドたちの共演には注目してほしいです」

「あらののはて」に出演したしゅはまはるみ 筆者撮影
「あらののはて」に出演したしゅはまはるみ 筆者撮影

背中の芝居って嘘がつけない。背中でみせる作品になっている

 また、本作は長谷川監督のこだわりの演出で逆光での撮影が印象的な作品になっている。

 この演出も、好きだという。

「シーンによっては暗すぎて顔の表情がわからない、光の使い方になっている。

 でも、わたしはかなり好きなんです。

というのも、その分、背中でみせる作品になっている。

 人の背中って嘘がつけないというか。背中はいろいろなことを物語るから、逆に嘘をつくとばれちゃう。

 だから、背中の芝居って嘘がつけない。そのままの自分が出てしまうから、心して挑まないといけない。

 役者の芝居が試されるところがある。

 だからこそ、難しいけどやりがいもある。自分を甘えさせられないし、厳しいところにおかないといけない。

 でも、長谷川監督のこの厳しくも愛のある演出がわたしは好きです」

「あらののはて」より
「あらののはて」より

師匠である、柄本明さんのような状況に多少なりとも近づけたかなと

 「カメラを止めるな!」で世間でいうところのブレイクを果たし、以後、数多くのドラマや映画に出演している。

 この現状をどう受け止めているのだろうか?

「ありがたいことに、いろいろな作品にいま出演させていただいています。

 数年前まではこんなことになるなんて、思いもしなかった。

 自分としては現状を、永遠の憧れでもあり、師匠でもあった、柄本明さんのような状況に多少なりとも近づけたかな、と感じています。

 一時期、いや今もそうですけど、『全部の作品に柄本さんが出てる!』と思うぐらい、いろいろな作品に出演されていた。

 どの映画のチラシを見ても、必ず『柄本明』の名前があるというぐらい。

 もちろんまだ全く、その域には達していないですけど、柄本さんは憧れでもあるので、さらに一歩でも近づきたい。

 ほんとうにいろいろなところに顔が出せる俳優になりたいです」

50歳までにハリウッドのドラマに出るのが今の夢!

 個人的な目標をこう掲げる。

「50歳までにハリウッドのドラマに出たい。

 これがいまのわたしの最大の目標です。

 『わたし、もういい歳だから無理』とか考えずに、無謀かもしれないけど、攻めの姿勢で取り組んでいきたい。

 頑張って夢を叶えたいです」

「あらののはて」に出演したしゅはまはるみ 筆者撮影
「あらののはて」に出演したしゅはまはるみ 筆者撮影

「あらののはて」

監督・脚本:長谷川朋史

出演:舞木ひと美、髙橋雄祐、眞嶋優、成瀬美希、藤田健彦、しゅはまはるみ

9月10日(金)まで池袋シネマ・ロサにてレイトショー公開。

ほか全国順次公開予定

場面写真は(c)ルネシネマ

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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