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「カメ止め」のしゅはまはるみが、仲間と自主映画制作ユニットを結成。そこに至った深い事情とは?

水上賢治映画ライター
「あらののはて」に出演した、しゅはまはるみ  筆者撮影

 高校2年生の冬、クラスメイトで美術部の大谷荒野に頼まれ、絵画モデルをしたところ、理由のわからない絶頂感に襲われ、失神した野々宮風子。

 以来、風子はその絶頂感が忘れられないまま。ただ、担任のあらぬ誤解で退学となってしまった荒野とはそのときから会っていない。

 25歳になった彼女は、あの絶頂の真意を追い求め、荒野のもとに押しかける!

 こんなこじらせ女性の恋愛の行方を描く映画「あらののはて」。

 門真国際映画祭2020で三冠に輝くなど、国内映画祭で高い評価を得た本作を作り上げたのは、自主映画制作ユニット「ルネシネマ」だ。

 実は、この「ルネシネマ」は、「カメラを止めるな!」で一躍注目の俳優となったしゅはまはるみと、藤田健彦、長谷川朋史という古くからの演劇仲間である3人が立ち上げたユニット。

 すでに「かぞくあわせ」が劇場公開され、反響を呼んでいる。

 「ルネシネマ」の発起人であるとともに「あらののはて」にも出演する、しゅはまはるみに話を訊いた。(全二回)

「ルネシネマ」を立ち上げたのは、俳優として先はない、

ままならない現状を打破しないといけないと考えていたころ

 まず「ルネシネマ」をはじめようと思ったきっかけをこう明かす。

「いま、ありがたいことに『カメラを止めるな!』のおかげで、いろいろなお仕事のお話をいただける状況になっています。

 でも、『カメ止め』が公開される前まではもう鳴かず飛ばずといいますか。このままだと俳優として先はない時期に差し掛かっていることを認識していて。

 ままならない現状を打破しないといけないと考えていました。

 それこそ、『カメ止め』のとき、完成した作品のDVDを、映画をはじめとした業界関係者に自分で配って歩こうと思ってたんです。

 『わたしはこういう俳優です』と顔と名前を知ってほしくて。

 『ルネシネマ』を立ち上げたのは、まさにそういったころ。

 出演のオファーを待つのではなく、もう自分たちでプロデュースして、作品を撮っていくしかない。

 わたしがそのようなことを考えていたら、古くからの演劇仲間である藤田くんと長谷川さんも同じようなことを考えていて、意気投合した。

 で一気に『ルネシネマ』が立ちあがった感じです(笑)」

 実は、その後も、しゅはま自身が深く関わった形での映画作りを模索していた。だが、うまくことは運ばなかったという。

「俳優仲間を集めて、映画作りを考えていたことがあるんです。

 きちんとした演技の下地がある人といっしょならば、クオリティの高い芝居ができる。そういう俳優が集まったらおもしろい映画ができるんじゃないかと考えていた。

 ただ、俳優同士だと、なかなか作品が立ち上がらないんですよ。

 みんなたとえば演じたい役であったり、おもしろいアイデアの種はもっている。

 でも、基本的には演じることに主眼があるので、なかなか脚本を書くまでには至らないんですよね(苦笑)。

 で、監督を見つけたらなんとかなるかもと思ったんですけど、監督も脚本を書く意欲がある人ばかりではない。

 脚本作りの壁にぶちあたって、2度ほど、この目論見は立ち消えになってしまった。

 だから、『ルネシネマ』は、わたしにとって、とても大切な映画制作集団になった感覚があります」

記念すべき第一弾作品が劇場公開できて、幸運だったと思います

 しゅはまにとって「とても大切な映画制作集団になった」ルネシネマの第一弾作品は「かぞくあわせ」。当初、劇場公開の見通しは立っていなかった。

「映画を自分たちで作ることははじめてで、右も左もわからない。

 自主映画が一般の劇場で公開されるのがどれだけ大変かも当時はわかっていない。

 あとから、自主映画の多くが撮っただけで終わることがほとんどということを知るわけです。

 ですから、いまから思えば、ほんとうにめぐり逢いだったんですけど、記念すべき第一弾作品が劇場公開の運びになって、幸運だったと思います。

 作品としては、短編3本のオムニバス構成なんですけど、3本がいい意味で毛色が違い過ぎる作品になっていて(笑)。

 わたしも藤田くんも、まったく違うタイプの役を演じることができた。

 『ルネシネマ』としてはいい船出を迎えることができた作品になりました」

「あらののはて」に出演した、しゅはまはるみ  筆者撮影
「あらののはて」に出演した、しゅはまはるみ  筆者撮影

長谷川さんの書きあげた脚本が意外で新鮮でした

 迎えた第二弾が「あらののはて」になる。

「これは監督の長谷川さんが主体となって進めた企画で、わたしはそこまで深く関わっていないんですよ。

 『かぞくあわせ』1本で、終わってしまっては、意味がないので、『劇場公開じゃなくてもいいから、月1で上映会ができるぐらいのペースで撮ろう。短編でもいいから』とはっぱをかけたことは確かなんですけど(笑)。

 そういっていたら、このお話がきて、『ふーん分かった』と言っただけのような気がします(苦笑)」

 まず、長谷川監督の書き上げた脚本に驚いたと明かす。

「さきほども触れたように長谷川さんとは古くからの演劇仲間。

 よく知っているわけですけど、『こういう物語を書くんだ』と驚いたところがありました。

 ある種のエロスがひとつ、物語の基軸にあると思うんですけど、こういうセクシャルな面を表にだしている長谷川さんの脚本は読んだことがなかった。

 だから、意外で新鮮でした」

正直なことを言えば、わたしも10代のころから、

すごく性的なことに興味がありました

 その物語は自分に引き寄せて考えられたという。

「風子は、高校生のときにモデルを頼まれて、そのときに性的な絶頂を感じてしまう。

 この場面を前にしたときに、『そういうこともあるよね』と素直に思いました。

 女性がセックスについて語ることがさほどはばかられなくなったのはここ数年のことですけど、正直なことを言えば、わたしも10代のころから、すごく性的なことに興味がありました。

 風子と形は違うけれども、鮮烈な印象となって残るような忘れられない体験をしている。

 でも、わたしだけじゃなくて、少なくない女性がしていると思うんです。『あの感覚をもう一度』といったような体験を。

 だから、風子と想いを共有する女性はけっこういるんじゃないかと思いました。

 たいがいは風子ほどメンヘラな感じにはならず、あそこまでこじらせないでしょうけど。

 でも、たとえば初恋の相手の印象が強くて、同じようなタイプを追い求めていってしまうようなことってけっこう、よくあることなんじゃないかなと。

 そういう異性や性への目覚め、若さゆえの思い込みやピュアさが風子を通じて伝わってきて、個人的に『わかるなぁ』と感じるところがある脚本でした」

(※第二回に続く)

「あらののはて」ポスタービジュアル
「あらののはて」ポスタービジュアル

「あらののはて」

監督・脚本:長谷川朋史

出演:舞木ひと美、髙橋雄祐、眞嶋優、成瀬美希、藤田健彦、しゅはまはるみ

9月10日(金)まで池袋シネマ・ロサにてレイトショー公開。

ほか全国順次公開予定

場面写真及びポスタービジュアルは(c)ルネシネマ

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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