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女優がセルフで自らのヌードを撮る。新たに挑んだ遥は、目が血走る発狂の女、それとも良き母?

水上賢治映画ライター
写真展「世界に、なにを見よう」より

 映画、舞台、テレビ、ラジオなどを主に活動の場にしてきた彼女だが、コロナ禍をきっかけに写真を撮り始め、現在、写真家という新たな表現の道も歩み始めている。

 彼女についてはちょうど写真家として歩み始め、初めてヌードでの濡れ場にも挑んだ主演映画「百合の雨音」が公開された2022年にインタビュー。

 女優自らが写真家として、自らのヌードを撮るという、前例のないセルフ・ポートレートの写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)、この写真集の完成とともに新宿 北村写真機店で開催された初の写真展、そして映画「百合の雨音」についていろいろと話を訊いた。

 それから約1年半、「百合の雨音」の金子修介監督と再び顔を合わせた出演映画「ゴールド・ボーイ」が3月8日から公開がスタート。本作では、北村一輝が演じる打越一平の妻、遙役を熱演している。

 そして、新たな写真展「世界に、なにを見よう」が新宿 北村写真機店で先月19日に無事終了。今秋には三重県亀山市で開催される<亀山トリエンナーレ>への参加を控える。

 女優、写真家として着実に歩みを進めている彼女に再び話を訊いた。全六回。

写真展「世界に、なにを見よう」より
写真展「世界に、なにを見よう」より

ちょっと人間不信に陥る残酷なストーリーだなと

 前回(第四回はこちら)、出演者及び写真家としても現場に入った現在公開中の映画「ゴールド・ボーイ」で、共演者の星乃あんなとの不思議な縁について明かしてくれた花澄。

 ここからは改めて、女優・花澄としての話を。「ゴールド・ボーイ」の脚本にはどんな感想を抱いただろうか?

「サスペンスで事の顛末を明かせないので、言葉で説明するのが難しいんですけど……。

 正直、ファーストインプレッションとしては、もう信じられないといいますか。

 ちょっと人間不信に陥る残酷なストーリーだなと思いました。

 そう強く感じた理由は、演じた遙役だったところもあったかもしれません。

 役者さんによって脚本の読み方は違うと思うんですけど、わたしはどうしても自分の演じる役の目線でとらえるところがある。

 今回も遥の気持ち、目線で脚本を読んでしまったんですけど、ほんとうに遥が一番、報われない……。

 彼女の置かれた状況を説明すると、北村一輝さんが演じられた打越一平の妻で、娘がいる。

 一平は離婚をしていて、その元妻の香との間に、朝陽という息子がいる。

 で、遥の娘は謎の死を遂げているのだけれど、遥は朝陽が関与していると疑っている。

 それで朝陽を執拗に問い詰め、付け回すストーカー行為に近いことをしている。

 傍から見ると、遥は常軌を逸した、娘の死を受け入れられず発狂してしまった女性に映る。

 でも、詳細は物語上、明かせないんですけど、実は一番、この物語で起きる不可解な事件の核心に一番迫っていた人物で。人を見る目のある人物なんです。

 間違ったことはなにひとつしていない。でも、これも詳細は明かせないんですけど、一番、救われない目に遭ってしまう。

 なので、こんな不条理があっていいのかと嘆きましたし、こんな目に遭うなんてと、彼女がかわいそうで同情しました」

「ゴールド・ボーイ」より
「ゴールド・ボーイ」より

もっと読みたい!この先どうなるの!?と引き込まれていくんです

 その一方で、こうも感じたという。

「ほんとうにいろいろな人間の感情が絡み合い、もつれあい、息もつかせぬスピードでストーリーが転がっていく。

 最後の最後まで結末がどう転ぶのかわからない。このストーリーテリングに唸らされました。

 あと脚本の会話の言葉選びがすばらしくて。言葉のチョイスから性格や背景が浮かび上がってくる。遙は傷ついている役ですが、やっぱり母なんです。やってることはめちゃくちゃですが、脚本には母性を感じていました。

 わたくしごときが今さら言うことでもないんですけど、『港(岳彦)さんの脚本はさすが』と思いました。

 相関図を書かないとわからなくなりそうな複雑な人間関係、ストーリーなのに、『もっと読みたい!この先どうなるの!?』と引き込まれていくんです。筆の力がとにかく素晴らしくて感動しました」

監督からは「ちょっと不気味で気持ち悪い感じでやってください」と

 遥役を演じるに当たって、金子監督からは事前にこんなことを言われたそうだ。

「監督からは『ちょっと不気味で気持ち悪い感じでやってください』と言われました。

 まあ、その指示は、わたしも納得で。

 さきほど少し触れましたけど、少年に憎しみを勝手に抱いて、四六時中、追い回している中年女性ですから、はたから見ると危険人物でしかない。

 モンスター・ペアレンツで、できれば近寄りたくない、かかわりあいたくない。

 そういった哀しみと怒りの混じった負のオーラをまとうように心がけました。

 ゆらりとした幽霊のような雰囲気もあったと思います。愛するものを亡くした行き場なさ、生きがいのなさみたいなものを彼女から感じました。

 最初の登場シーンから、目が血走っていてとんでもない要注意人物とみなさんの目に映ると思います(笑)。

 でも、繰り返しになりますけど、実はかわいそうな人で……。

 いままでで一番、報われない、救われない、悲惨な目に遭う役だった気がします。演じていて、悲しくなってくる役でした。

 でも、俳優としてはやりがいのある役だったと、いま振り返って思います」

(※第六回に続く)

金子修介監督(左)と花澄 
金子修介監督(左)と花澄 

【写真展「世界に、なにを見よう」/「ゴールド・ボーイ」花澄 第一回】

【写真展「世界に、なにを見よう」/「ゴールド・ボーイ」花澄 第二回】

【写真展「世界に、なにを見よう」/「ゴールド・ボーイ」花澄 第三回】

【写真展「世界に、なにを見よう」/「ゴールド・ボーイ」花澄 第四回】

<花澄写真展「世界に、なにを見よう」>メインビジュアル
<花澄写真展「世界に、なにを見よう」>メインビジュアル

<花澄写真展「世界に、なにを見よう」>

開催終了

写真展に関する写真はすべて(C)2022 KAZUMI PHOTOGRAPHY. All Rights Reserved.

「ゴールド・ボーイ」ポスタービジュアル  (C)2024 GOLD BOY
「ゴールド・ボーイ」ポスタービジュアル  (C)2024 GOLD BOY

「ゴールド・ボーイ」

監督:金子修介

脚本:港 岳彦

出演:岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、

松井玲奈、北村一輝、江口洋介、花澄

公式サイト https://gold-boy.com/

全国公開中

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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