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これから飛躍のときへ!出演作「あの頃。」も公開中の中田青渚「今は常にこの先、前を向いていきたい」

水上賢治映画ライター
「街の上で」に出演した中田青渚  筆者撮影

 下北沢を舞台に、最近彼女にフラれたばかり、もっか失意の中にいる荒川青のありきたりかもしれないけど、なんだか愛おしい日常を描いた映画「街の上で」。

 なにかとへこむことの多い青にひとときの安らぎをもたらす一方で、大きく日常をかき回す存在になるのが城定イハを演じた新進俳優、中田青渚へのインタビューの後編へ。

友達の恋愛事情をのぞき見してしまった気がして、ドギマギしてしまいました

 前回に続き、作品についての話から。まず、率直な作品の感想をこう明かす。

「初めて作品を見たときは、それまで私は、イハといる荒川さんしか知らなかったんで、たとえば、穂志もえかさん演じる雪といる荒川さんをみたときは、なんかわからないですけどすごく恥ずかしかったです。

 なにか友達の恋愛事情をちょっとのぞき見してしまった気がして、ドギマギしてしまいました。

 わたしといるときはあんな感じだったけど、彼女といるときは『こんな感じなんだぁ』と。

 みちゃいけないところを偶然目撃してしまった気分で、ちょっと『わっ』となってしまいました」

「街の上で」より
「街の上で」より

 演じたイハは、荒川青に大きな影響を与えたキーパーソンに映る。ある種、この物語のキーを握る人物になっていることは間違いない。

「キーパーソンという意識はなかったですね。これは自分ではわからないので、監督に訊いてください(笑)」

 『街の上で』、そして『あの頃。』での中田の存在を見ていると今泉力哉監督作品の新たなミューズの誕生を予感させる。

「ほんとうですか?もっともっと大きな存在になれるように頑張ります」

 『街の上で』は、下北沢が舞台になる。関西出身だが、なにか町の印象はあるだろうか?

「残念ながら下北沢には行ったことがなくて、撮影する少し前に下調べしようと思って視察で初めて訪れました。

 印象としては、渋谷に近いけど、あんまり都会っぽくないというか。下町っぽい風情があって、なじみやすさがありました。

 誰がきても受け入れてくれるような街だと思って、『街の上で』の舞台にぴったりと思いました」

中田青渚  筆者撮影
中田青渚  筆者撮影

芸能界とかまったく考えたこともなかった

 2014年に<第5回Sho-comiプリンセスオーディション>にてグランプリを獲得。それをきっかけにデビューを果たし、先日まで出演作のドラマ「ここは今から倫理です。」が放送され、現在、本作と「あの頃。」が公開中、今後も映画「うみべの女の子」の公開が控えるなど、ここにきて出演作も増え、着実にキャリアを重ねている印象を受ける。

 だが、もともとこの世界に進むことは考えてなかたという。

「芸能界とかまったく考えたこともなかったです。そもそも、『将来はこの仕事に就きたいな』という目標もあまりなかったんです。

 ただ、お芝居に触れたときに、最初は『楽しい』から入ったんですけど、その楽しいが、だんだん、『もっとできるようになりたい』とか、『うまくできなくて悔しい』とか、そういう経験が積み重なって、『ちゃんとやりたい』と思ったんです。

 こういう自分が打ち込んで頑張ってみたいと思う経験が初めてだったんです。

 だから、お芝居に出合って自分がそういう気持ちにならなかったら、たぶん続けていなかった気がします」

 現時点で、この仕事の喜びややりがいはどこに見出しているのだろうか?

「喜んでいる余裕はまだないです。まだまだ至らないところだらけで、常にベストは尽くしていますけど、演じて『大満足』と思ったことは一度もないです。

 やりがいは、やってもやっても終わりがないところがやりがいかもしれない。お芝居って正解がないから、終わりがない。

 たとえば、そのときは自分の全力を出し切っても、1カ月後にその映像を見たときには、もう自分は1カ月後の自分だから、『もっとできたのに』ってやっぱり思う。ああだこうだと考えてしまう。その繰り返し。

 その答えのないところが喜びかやりがいかわからないですけど、今の自分にとってはすごくおもしろいです」

今は常にこの先、前を向いていきたい

 新型コロナウィルス感染拡大の影響で、「街の上で」は当初の予定よりも公開が1年延期になってしまった。いま、公開を迎えることはちょっと恥ずかしいところがあるという。

「今の自分からすると、『街の上で』のときの自分はもうほとんど別人の感覚なんです。

 もちろんこれまで自分が歩んできたキャリアは大切なんですけど、中田青渚。

 でも、みなさんには若葉さん演じた荒川青であり、わたしが演じた城定イハであり、この映画に登場する魅力的な人物に出会ってもらえればと思います」

「街の上で」より
「街の上で」より

「街の上で」

監督:今泉力哉

脚本:今泉力哉 大橋裕之

出演:若葉竜也 穂志もえか 古川琴音 萩原みのり 中田青渚 成田凌(友情出演)

新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開中

場面写真はすべて(C)「街の上で」フィルムパートナーズ

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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