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夏のバーベキュー、取るべき熱中症対策

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト
(写真:アフロ)

盆暮れ正月ゴールデンウィーク。日本人は休みに合わせてレジャーを組み立てる。バーベキューはちょっとした休日でも開催できるレジャーのはずだが、長期休暇で家族や友人間の予定を合わせやすい夏がトップシーズンだと思われている。

この7月に消費者庁が発表した「バーベキューにおける食品安全に関する消費者行動のインターネット調査」(n=2000)における「あなたはバーベキューをいつ行うことが多い?」(複数選択可)という設問でも、夏(6~8月)が全体の70.2%とダントツの支持を得た。以下春(3~5月)の47.2%、秋(9~11月)の25.6%、冬(12~2月)の3.9%と続いた。国民的認知としては、「バーベキュー=夏」なのだ。

だがちょっと待ってほしい。今年の夏は今月に入ってから猛暑日の連続で、まだ数日ではあるが8月の平均気温は30.0℃。連日、熱中症にまつわる報道がなされている。

熱中症疑いの死者8人…全国159地点で猛暑日(読売新聞オンライン8月3日(土)19:39配信)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190803-00050257-yom-soci

これほどの猛暑下なのだ。出かけるだけでも注意が必要になる。ましてや火を使ったバーベキューを行うのなら、より入念な準備が必要となる。

熱中症予防の指標≠気温

ちなみに上記報道もそうだが、ニュースでは気温と熱中症リスクがイコールかのような見出しがつけられていることが多い。だが正確には、熱中症予防の指標は気温ではなく「暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)」というもの。この指標には気温も要素としては盛り込まれているが、単純に気温とイコールというわけではない。

WBGTは人体の熱収支に与える影響の大きい「湿度」「日射・輻射(ふくしゃ)」「気温」という3つの要素を取り入れた指標。実は要因としては「気温」よりも、むしろ「湿度」に重きが置かれている。

暑さ指数(WBGT)の実況と予測――環境省熱中症予防情報サイト 

http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php

「湿度の効果:輻射熱の効果:気温の効果」を「7:2:1」という比率で割り振り、さらに風(気流)という要因も加える。

熱中症は、体内の熱を汗などで体外にうまく放出できず、体を冷やせない状態で起こる。この時期の週末、都市部の商店街等で行われる飲食系の”町フェス”などは「高湿度」「(アスファルトや建物の)輻射熱」「猛暑」という条件がそろいやすい。くれぐれも水分補給等の熱中症対策を怠りなく。

さて、バーベキューに話を戻そう。個人的には春や秋がベストシーズンだと考えるが、「この時期でこそ!」という人もいるだろう。猛暑日が続くなかできる対策を環境省熱中症予防情報サイトの「熱中症を予防するには?」と照らし合わせながら紹介していきたい。

まず予防策の項目としては「涼しい服装」「日陰を利用」「日傘・帽子」「水分・塩分」が挙げられ、加えて以下のような注意喚起がなされている。

・無理をせず徐々に身体を暑さに慣らしましょう

・室内でも温度を測りましょう

・体調の悪いときは特に注意しましょう

出典:熱中症の基礎知識――環境省熱中症予防情報サイト

着脱のラクな耐火グローブは必携

ただ、いきなり「涼しい服装」と言われてもこれがバーベキューにおいては悩ましい。というのも炭のような熱源を取り扱う人ならば、長袖、長ズボンなど体が覆われていることが望ましいからだ。といっても、さすがにこの猛暑下で長袖はしんどい。というわけで、おすすめはこういうグローブ。

ウェルザ熔接用5本指

https://www.monotaro.com/g/02601031/

モノタロウ

画像

バーベキューでグリル周りの作業をするときに軍手が使われることがあるが、軍手は耐火性でもなければ耐熱性もない。火傷・事故防止のためにも、ぜひ耐火・耐熱グローブを使っていただきたい。溶接用のグローブならばアウトドア用品よりも安く手に入る。上記のような事業者系通販サイトで1000円程度。

加えて上記のグローブはヒジ近くまで覆われるタイプのもの。半袖を着ていても腕の大部分が覆われるので、火傷のリスクも低減できる。細かいポイントだが、内部に多少のゆとりがあって、着脱がラクなのもこの季節には重要なポイントだ。もちろんビシッとタイトに決めたい人はアウトドアメーカーからも耐熱・耐火性のあるグローブが販売されているので、好みのものを選ばれたし。

場所選びと道具で熱中症リスクは格段に下げられる

グループ全体で心がけたいのが、日陰の確保。理想は木陰やせせらぎのあるような自然のなかだが、都市部ではそうもいかないだろう。以下のようなポイントに気をつけたい。

・木陰などなるべく周辺の広範囲が日陰になる場所

・周囲に日に当たって輻射熱を発するアスファルトやコンクリートなどが少ない場所

・風通しのいい場所

日差しは刻々と変わるので、終了時間も考慮しながらタープなどを張り、確実に日陰をキープできる場所を作りたい。日陰で風通しがいい場所なら熱中症リスクは低減できる。

帽子・日傘も熱中症予防の役には立つが、取り扱いは慎重に。以前、風で飛ばされた日傘が、熾きた炭のグリルに落ちて炎上するというシーンを目撃したことがある。そのグループの若者たちは、起きた出来事が予想の斜め上過ぎたのか、固まったまま呆然と燃える日傘を眺めていた。

アルコールの摂取は水分補給にはならない

水分・塩分は言わずもがな。とりわけ水分は重要だ。バーベキューで料理を食べていれば一定の塩分を取ることはできるが、アルコールの摂取は脱水状態になりやすい。最低でも飲んだお酒と同量の水分を摂取するよう心がけ、クーラーボックスに冷たいミネラルウォーターなどソフトドリンクを十分に用意しておこう。

そういえば、少し前に、「おいしいという感覚の正体を探る」というような専門家会議に出席したとき、俳句の偉い先生が「あら。あなたバーベキューをなさるの? この間ワタクシ、夏の副季語に『バーベキュー』を推薦させていただいたのよ」と仰っていらした。

そのときは「夏は暑いので、気をつけてくださいね」と返したが、この猛暑のなかバーベキューをやるなら、無理は禁物。できる限り緑と水があり、輻射熱が少しでも低い場所を選んでいただきたい。炭や会場、参加者に至るまで、さまざまな”熱”をコントロールして、楽しい場を作り上げるのがバーベキューの醍醐味でもある。

編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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