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こんな時には元気な選手の話をーリーチ・マイケル「ワンチーム」

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)
ウェブでの合同取材に応じるリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス提供)

 こういう時だからこそ、トップアスリートの話を聞きたくなる。ポジティブ、愉快、活力がある。新型コロナウイルスの感染拡大でスポーツ日程の中止が相次ぐ中、ラグビー日本代表主将のリーチ・マイケル選手(東芝)がオンラインでの合同取材に応じ、「ワンチーム」を呼び掛けた。

 「ワンチームで大事なことは、ひとりひとりが責任を持って行動すること。トップの人が言ったことをしっかり守ることです。それをやればひとつになる。ワンチームとして行動できると思います」

 新型コロナの影響でトップリーグも日本選手権も中止となった。もちろん、一番大事なのはひとの命と安全だから当然だろう。ただ昨年のラグビーワールドカップの盛り上がりを考えると、つらいものがある。

 「ラグビーができなくて、選手だけでなく、ファンの方々もたくさん、残念がっていると思います。東芝も調子がよくて、ここから優勝に向かって準備できていたんですけど。けれど、命が一番大事なので、感染拡大しないために(中止は)正しい判断だと思います」

 緊急事態宣言を受け、東芝もチーム活動を中止し、クラブハウス内のジムも使用禁止になった。自主トレーニングについて聞かれると、31歳は「いま、縄跳びにはまっています」と言った。

 「動画を見て、どうやってうまくなるのか、頑張っています。毎日しています。娘さんも一緒に縄跳びしています。二重飛びはまだ、2、3回。10回目指して頑張っています。手と足の連動が難しくて。できれば、身体能力は高くなると思います」

 またネットのオークションサイトで「90ポンド(約40キロ)のダンベルを2つ、安く買って」、自宅でトレーニングしているそうだ。「基本的には上半身のトレーニング。あとはリハビリです」と説明した。

 日本代表の6月(ウェールズ)7月(イングランド)の国際試合も困難な状況だが、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチらとは連絡を取り合っていると言い、「リーダーグループのラインもあって、たまに話をしています。もうちょっとしたら、ズーム(Zoom)でリーダーミーティングをやる予定です」。

 もっとも、こういう状況だからこそ、家族と共に過ごす時間が増えた。

 「10年ぐらい、トップクラスのラグビーをやってきて、なかなか、こういった家族と一緒にいる時間がなかった。だから、奥さんはすごく、喜んでいます。娘とは工作をつくったり。これまで本をたくさん買っても読まないことが多かったけれど、そんな本も読んだりして、すごく充実しています」

 海外で生活する両親にも思いをはせながらも、不安は?と聞かれると、「全然ないです」と即答した。冗談口調で続ける。

 「逆に(ニュージーランドの)おかあさんから、”いま、帰ってくるな”と言われた。(日本にいる)妹だけでも帰そうとしたら、おかあさんが、“帰ってくるな。おまえらがコロナを連れてくるかもしれない”って」

 最後にファンや学生選手らへのメッセージを聞かれると、言葉に力を込めた。

 「ファンへのメッセージは、いまはライブの試合は見られないですけど、ユーチューブで過去のすごく面白い試合を見ることができます。学生や子ども(のラグビー選手)には、いまはチームとして練習できないけど、ユーチューブ見たり、すごい選手のプレーを見たりして、(自分のプレーを)想像してください。また家で自主トレーニングしたり、次のシーズンに向けて準備したりすることが一番大事。時間をうまく使ってやるのが大事かなと思います」

 では、一般の人々には。新型コロナに対処するためには。

 「常に自分の行動を見直すことが必要かなと思います。1週間をレビューしたり、1日をレビューしたり。1日、1日、よく考えて行動するのが一番重要かなって。慣れてきて油断したときが一番アブナイ。自分の行動を見直して、正しい行動をとるのが一番だと思います。僕も毎日、自分の行動を見つめ直しています」

 やっぱりリーチってキャプテンである。凄い。選手として、インスタグラムなどのインターネットでの情報発信もオモシロいと言葉を足した。人々に、少しばかりの人生の潤いを与えるため。

 ラグビーに限らず、プロ野球やサッカーなどいろんな競技でSNSを使った企画が行われている。ファンとの交流の在り方を考える契機でもあろう。

 こういったWEB取材やオンライン会見も悪くない。東芝ラグビー部のイキな対応には感謝である。今後、選手の健康を担保できるのなら、日本協会による日本代表選手の断続的なオンライン会見、あるいはトップリーグの公式サイトにおける各チーム主将の動画のリレー配信など、考えてみてはどうだろうか。 

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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