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元ラガーの画家。ピエロ画に会いに行こう!

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

ピエロと平和を愛する元ラガーの画家、岡部文明さんの個展『ピエロの小宇宙への誘い』が東京・銀座の「みゆき画廊」で開かれている。岡部さんによると、「テーマは喜び、楽しみです。人類が共生するための喜びです」という。土曜日の24日まで。

岡部さんは高校時代、ラグビーの練習中に首を骨折し、車いす生活を送りながらも絵筆を握り続けてきた。故郷の福岡にやってきたサーカスのピエロとの出会いが人生を変えた。道化に徹しながら、人々の心を豊かにする姿に感銘を受けたのだ。

「ピエロを見た時、哲学めいたメッセージが僕には伝わったのです。誰をも幸せにする。ピエロの願いは、全世界の平和です」。以後、欧米やロシアなどを巡って、約500人のピエロと交流を重ねてきた。ピエロを主題に創作活動を続け、2011年ラグビーワールドカップ(W杯)期間中には開催地ニュージーランドで個展も開いた。

銀座の銀座第二東芝ビル(銀座6-4-4)2階のみゆき画廊には、数十点の秀作、力作がならぶ。岡部さんが説明する。

「おととしぐらいから、どうしたら、絵がピエロらしくなるか考えてきた。ただはしゃいでいるのがピエロじゃない。人が見て、クスクスと微笑んで、あぁ幸せだなという感じになるには、どう表現したらいいのか。だんだんわかってきました」

なるほど。これまでと比べると、総じて絵がより明るく楽しい。色彩もあたたかい。ピエロがどんと表に出てはいるものの、周りにはトラなどの動物や鳥、女性が楽しそうに躍っている。つい見ながら、こちらもハミングしたくなるのだ。

「退屈しないオモシロさ。そのあたりを一生懸命に描きました。去年の秋頃から、この個展に向けて、(アトリエに)籠もって、季節に置いてきぼりされながら描いて、いま地上に出てきた感じです。あまり気負わず、気楽に描けたというのが一番です」

19日夕方のオープニング・パーティーには、ラグビー仲間やニュージーランド大使館関係者、有名居酒屋の女将らが駆けつけた。ひょんなことで知り合ったグループサウンズ『ザ・タイガース』のメンバー、瞳みのるさんの姿もあった。ピエロの絵に囲まれて、あちこちで談笑が交わされていた。

ピエロの絵を描き始めて、ざっと40年が経つ。ピエロとの邂逅を含め、「出会いは奇跡」だと思っている。「人生は出会い。出会いによって、自分が成長していく」と、65歳の岡部さんはしみじみと漏らす。

「一応、40年という歩みの中では(この個展は)うまくいったのかな、と思います。でも、これで終わりじゃなく、まだまだこれからもずっと続きます」

生きる希望を探している人、いや小さな笑いを欲している人は、銀座のみゆき通りそばのビルの2階へ。画廊のオープンは、午前11時~午後7時(最終日は午後5時半まで)となっている。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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