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香港セブンズ。コアチーム入りへ、ホープ藤田が走る

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

これぞ、日本のホープの本領発揮だろう。舞台が大きくなればなるほど、輝きを増していく。20歳の藤田慶和が7人制ラグビーの香港セブンズ「ワールドシリーズ・コアチーム昇格決定大会」で若さ溢れるプレーを披露、ジャパンの準決勝進出に貢献した。

セブンズでいえば、世界最高峰のイベントと言っていい。スタンドでは約4万人の観客のお祭り騒ぎが続く。「すごく楽しいです」と、藤田は笑顔を浮かべる。両親も応援に駆け付けているそうで、「日本の国旗を掲げてくれた人もいる。おとうさんの顔も見えました。ええ、(両親の)応援は励みになります」

藤田は、先週の東京セブンズから7人制代表に2年ぶりに参戦している。セブンズと15人制ラグビーのフィットネスの質量は違うけれど、チーム随一の運動量を見せている。アタックでバックスとしてチームをリズムに乗せ、ディフェンスではスイーパー役として走り回っている。驚くべきは、終盤になっても運動量が落ちないことだ。

29日。1次リーグ最終戦のクック諸島戦では先発出場し、快足を飛ばして左中間に先制トライ。前半最後にはラストパスをスローフォワードとされ、トライ演出はならなかった。が後半の終盤、雨で滑りやすくなった芝にも、鋭いランでゲインを突破し、ロトアヘア・ポピヴァ・大和のトライにつなげた。

藤田の志は高い。常に「世界」を意識してきた。いつもハードワーク、勝ってもおごることがない。「(前半最後の)スローフォワードなど、あそこでトライにつなげられたら、後半はもっといい展開になっていたと思います。これから厳しい戦いになると思うので、プレーの精度をもっと高めていきたい」

さらにチームとしての反省の弁を並べる。「仕掛けたところに対して、2人目がうしろに投げてしまい、またラインをつくっていた。しっかりサポートして、(ゲインラインを)切りにいっていたら、もっといい結果になっていたんじゃないかな。誰かが、オフロードパスとか、サポートで前に出ていれば、もっと簡単に相手を(ポイントに)寄せて、外側でトライを取れると思います」

その次の決勝トーナメント準々決勝のチュニジア戦では、後半途中から交代出場した。ロテ・トゥキリや坂井克行主将、ロマノ・レメキらの活躍で圧勝。「この大会を試合に例えると、前半が終わって、いいカタチで後半に入れたようなもの」と言葉に満足感を漂わせる。

ただ、こうも続けた。「勢いでいかず、押さえるところはしっかり押さえて、いい準備をして明日はのぞみたい。1つ1つ、本当に目の前のことを大切にしてやっていく」。準決勝で対戦するロシアは2年目の香港セブンズで負けた相手。「しっかりロシアにリベンジしたい」。まずは1つ。日本期待のホープは語気を強めていた。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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