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東京五輪パラは「アスリート・ファースト」で。室伏は出場に意欲?

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

オリンピックの主役はやはり、選手たちである。2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事会が26日開かれ、2004年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治選手ら計8人のオリンピアン、パラリンピアンが初めて出席。「アスリート・ファースト(選手第一)」を訴えた。

まずは理事全員があいさつ。39歳の室伏さんは、森喜朗会長から「東京オリンピック(出場を)狙っているんでしょ?」と聞かれ、ただ苦笑いを返すだけだった。理事会後、再び、「狙うんですか?」と記者から問われると、「いやいや。(可能性が)ないとも、あるとも、言えないですよ」と説明した。「やはり、地元のオリンピックで、最高の投てきができたらいいなと思いますけど…。まあ、私が出ても、他の誰かが出ても、ひとりでも多くの日本の方がメダルに近付けるようになれればいいなと思っております」

理事会に出席し、「みなさんの(大会を)成功させたいという気持ちが伝わってきました」という。1964年東京五輪は戦後復興の象徴のオリンピックとなった。「今回は震災からの復興を含めて、何を求めていくことが我々の幸せになるのか。オリンピックの精神的なもの、肉体的なもの、そのバランスというものが重要だと思います。我々アスリートは、理論でなく、からだで表して、見せていくことが義務だと思います」

目標としては、「できるだけ多くのメダリストが日本から出ること」とし、夏季五輪最多の金メダル獲得を掲げた。過去最多は64年東京五輪、04年アテネ五輪の16個。「それは、もちろん越えて、多くの方に希望と勇気を与えていってほしい。とくに東北の被災地に届くような。東京だけのオリンピックではなく、日本中が盛り上がるように、アスリートとして尽力していきたいと思います」

どうしたってオリンピアンやパラリンピアンが、経験を踏まえて発言することが、大会成功に役立つことになる。「やっぱりアスリートのオリンピックだと思うんです」と、室伏さんは強調した。「私を(理事に)選んでいただいたのは、アスリートとして期待していただいたからだと思います」と言い、アスリート・ファーストの五輪実現に思いをはせた。

体操女子のロンドン五輪代表の田中理恵さんは「ロンドンでは、オリンピックの素晴らしさ、楽しさを痛感しました。だから2020年東京オリンピック・パラリンピックでも、アスリートの皆さんに最高の舞台を提供できるようにしっかり協力させてもらいます」とコメント。柔道女子のアテネ五輪、北京五輪金メダリストで、フランス研修中の谷本歩実さんも一時帰国し、出席した。「2020年オリンピック・パラリンピックの日本のメダル獲得のカギは柔道にあると思っております。日本がメダルを獲得できるよう、(パリで)しっかり勉強して、帰国したいと思います。選手の立場として、子どもたちがしっかり夢を描けるよう全力を傾けたい」と熱く話した。

また水泳のパラリンピアン、成田真由美さんは障がい者スポーツの普及・発展の使命感を抱く。「パラリンピアンの立場として、パラリンピックの選手がベストのパフォーマンスを発揮できるよう、選手を取り巻く環境づくりに取り組んでいきたい」と意欲的だった。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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