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環境激変。愛称「サクラ…」の女子ラグビー。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

隔世の感がある。7人制が2016年リオデジャネイロ五輪で実施競技となるラグビーの女子日本代表は18日、愛称が決まった。7人制は『サクラセブンズ(SAKURA SEVENS)』、15人制が『サクラフィフティーン(SAKURA FIFTEEN)』。

「(環境は)激変ですね」と、女子ラグビーの苦難の時代を知る15人制代表の31歳、辻本つかさ選手(常翔啓光学園非常勤講師)は感慨深そうだった。「素直にうれしいです。まさか、こんな日がやってくるとは。ラグビーを長く続けてきてよかったと思います」

日本女子ラグビーの歴史は男子と比べると浅く、かつて日本代表女子はシンボルの「桜のマーク」をジャージに付けられない時代もあった。合宿や遠征も自己負担が普通だったという。だが7人制の五輪競技入り決定以降、注目度は劇的にアップした。ことし1月には初めてスポンサーも2社(大正製薬、太陽生命保険)決まっていた。

代表チームのサポート体制も改善され、愛称が2365通もの応募の中から決定されたのである。「サクラ…」という言葉に、辻本選手は「まさに、と思いました」とうれしそうに打ち明ける。初めて15人制日本代表に選ばれたのは2001年のニュージーランド遠征だった。それから12年。「私にとって、サクラは重みがあるのです。サクラフィフティーンと呼ばれることに、“そんな風に呼んでもらってもいいんですか”といった感じなのです。“なでしこ”みたいに有名になるように頑張っていきたい」

サッカー日本代表女子の愛称「なでしこジャパン」も、チームが2011年ワールドカップ(W杯)で優勝してから一気に知名度が高まった。ラグビー日本代表女子の「サクラ」を有名にするためには、なんといっても世界大会で活躍することが一番であろう。辻本選手は言う。

「まずはサクラセブンズの子たちに7人制ラグビーのワールドカップ(今月下旬・モスクワ)でがんばってもらう。その勢いを持って、こんどはサクラフィフティーンがワールドカップのアジア予選を突破して、本戦でサクラを開花させるのです」

愛称が決まれば、きっとファンは代表チームに親しみを感じ、応援しやすくなるはずだ。さてサクラセブンズ&サクラフィフティーンの快進撃が始まるか。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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