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持ってる男、広瀬主将が復帰

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

「俺は持ってる」とは、何もサッカー日本代表の本田圭佑のことだけではない。「勝利をとるために、何かを持ってる選手は?」と聞かれると、ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は即答した。「ヒロセ!」と。

何かとは、勝負運、勝利の執着のことだろう。13日、ウェールズ代表との第2戦(15日・秩父宮)の日本代表メンバー発表の会見でのひと幕。右ひざの負傷からようやく戦列復帰したWTB広瀬俊朗主将(東芝)を勝利のキーマンに挙げ、ジョーンズHCは「最後にウイニング・トライを」と期待した。「そうすれば、(広瀬は)スポーツ新聞の一面を飾ります」

広瀬主将にとっては、4月の香港戦以来、6週間ぶりの実戦となる。鋭いランはもちろんだが、からだを張ったタックル、ボールを持たない時の動きでも相手にプレッシャーをかける。広瀬主将は「ようやく試合ができるということで興奮しています」と笑顔を浮かべた。

「前回(第1戦は)はチームが4点差で負けたので、今回は勝ち切るという覚悟を持って臨みたい。選手たちの意欲はずっといいと思っている。コミュニケーションの部分で、もっとビルトアップしていきたい」

ジョーンズHCが広瀬主将に期待するのは、80分間を通し、チームの勢いと集中力を持続させるキャプテンシーである。とくに劣勢に回ったときの「我慢」。

広瀬主将は言う。

「まずリーダーとして、みんなのベクトルをひとつにしたい。プレーとしては、福岡堅樹(筑波大=WTB)みたいに足が速くないので、人よりも動いて、人よりも声をかけて、みんなが居心地良く動けるようにもっていきたい。表だって目立たなくても、この人がいるから、(チームが)いいプレーができたというようなプレーを心掛けていきたい」

円熟の31歳。“ラグビー版・持ってるオトコ”が日本代表にウェールズ戦初勝利の金星をもたらすことになるのか。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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