女子柔道の暴力問題は全日本女子の園田隆二監督の辞任にとどまらず、さらに拡大していきそうだ。大阪では、暴力行為を告発した女子15選手の代理人を務める弁護士が会見し、選手の失望と怒りを紹介し、「指導体制の抜本的な見直し」を求めた。

 つまりは全日本柔道連盟の古い体質を糾弾している。では古い体質とはナンナノダ。隠ぺい体質、権力の維持志向、対応の鈍さを指すのだろう。そこで時には視点を変える。朝、全盲スイマーの日本パラリンピアンズ協会会長、河合純一さんと一緒に食事をしていたら、大阪での弁護士の会見をとりあげ、「さみしいと思います」と漏らした。

 なぜかというと、会見で弁護士が読み上げた女子選手側の訴えの文章中、「2020年東京オリンピック招致活動」という表現が冒頭と最後に出てきたという。その全文を確認すると、確かに2度、そう書かれている。全柔連の古い体質を批判する人たちさえ、「東京オリンピック・パラリンピック招致活動」と話してくれない。障害者スポーツのパラリンピックを無視しているのである。

 もちろん、健常者の選手が目指すのはオリンピック、障害者アスリートのそれはパラリンピックである。だが、東京が招致を目指しているのは「2020年オリンピック・パラリンピック」なのである。河合さんは言葉を足した。「なぜパラリンピックへの認識が低いのか。選手たちを責めているのではなく、そういうことを指導してこなかった組織や指導者たちが責められるべきだと思うんです」と。

 ついでにいえば、メディアもなかなか「東京五輪パラリンピック」とは書かない。字数の問題もあろうが、そこにはパラリンピックへの配慮不足、視点の欠如がある。

 同じ価値感、視点を持った連中が固まっていくと、その組織は古い体質になりやすくなる。組織が硬直化し、全柔連のごとく、勝利至上主義に走り、監督、コーチ陣の暴力を容認するようになる。ひいては一般常識から、かけ離れた行動、判断をすることになる。

 やはり組織の運営側はいろんな立場、視点を持つ人がいた方がいい。なぜ全柔連の理事には女性が1人もいないのか。なぜ障害者の立場に立てる人が1人もいないのか。なぜ競技の底辺を支える小学生や町道場を代表する人が少ないのか。

 オリンピックで勝つことばかりにこだわる元五輪選手が理事の大勢を占めるから、「金メダル以外はメダルではない」といった考えが根付いたのだと思う。古い体質を変えるためには、柔道界以外の人がいてもいい。組織運営に「外部の目」「外部の考え」を入れることが、暴力を排除し、一般常識を備えた競技団体になるのではないか。

 これは日本オリンピック委員会(JOC)も同じだろう。異質な視点、意見をくみ取る仕組みをつくることが、河合さんの言うところの「真のフェアネスとジャスティスの実現」に近づくことになる。

【「スポーツ屋台村」(五輪&ラグビー担当)より】