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佐々木大地五段(24)敗者復活戦で広瀬章人八段(32)を降して棋王戦挑戦者決定戦に進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月9日。東京・将棋会館において棋王戦敗者復活戦▲佐々木大地五段(24歳)-△広瀬章人八段(32歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は16時44分に終局。結果は97手で佐々木五段の勝ちとなりました。

 佐々木五段はこれで挑戦者決定戦二番勝負に進出。勝者組を制した本田奎四段(22歳)と対戦します。

 第1局は12月16日、第2局は12月27日に予定されています。本田四段はあと1勝で挑戦権獲得。佐々木五段は2連勝が必要です。

 五段と四段による挑戦者決定戦は1992年前期棋聖戦・阿部隆五段(24歳)-郷田真隆四段(21歳)以来となります(郷田四段の勝ち)。

新鋭、前竜王に堂々の完勝

 広瀬八段は一昨日の7日まで、島根県津和野町で竜王戦七番勝負第5局を戦っていました。結果は挑戦者の豊島将之名人に敗れ、1勝4敗で竜王位を明け渡しています。

 昨日8日は移動日。そして本日9日が対局と、ハードスケジュールが続いています。

 佐々木五段は勝者組準決勝で広瀬竜王(当時)に敗れて敗者復活戦に回り、そこでまず丸山忠久九段を破りました。

 一方の広瀬八段は勝者組決勝で新鋭の本田奎四段に敗れています。

【前記事】

デビュー1年2か月の本田奎四段(22)トップ棋士・広瀬章人竜王(32)を降して棋王戦挑戦者決定戦進出

 広瀬八段と佐々木五段は過去に4回戦って、両者2勝ずつ。キャリアの違いを考えれば、佐々木五段が善戦しているというところでしょう。

 本局は佐々木五段が先手で、互いに飛車先の歩を伸ばして交換し合う相掛かりとなりました。

 角交換の後、両者は銀冠に組み上げます。さらに両者ともに自陣に角を打ち、広瀬玉の近くで戦いが始まりました。駒がぶつかったあたりでは、既に佐々木五段がポイントを挙げていたようです。進んで佐々木五段は角銀交換という実利も手にしました。

 中盤で差がついたところでは、広瀬八段の力をもってしても、粘れない展開となってしまったようです。佐々木五段は追及の手を休めることなく広瀬玉に迫りました。

 97手目、佐々木五段が広瀬玉の上部をねらう桂を打ったのを見て、広瀬八段は投了しました。駒の損得はほとんどありませんが、佐々木玉が銀冠に収まって安泰なのに対して、広瀬玉は不安定な形に追い込まれ、受けても一手一手の情勢です。持ち時間4時間のうち、両者ともに1時間以上を残しての、比較的早い終局でした。

 広瀬八段は王将戦リーグでは最後、藤井聡太七段を相手に貫禄を示しました。しかし棋王戦では棋王戦では本田奎四段、佐々木五段に敗れて、若手同士の挑戦者決定戦が実現しました。

 本田四段、佐々木五段ともに、タイトル挑戦経験はありません。特に本田四段は棋王戦初参加にして、この躍進ぶりです。挑戦者決定戦は新しい時代が訪れていることを感じる組み合わせですし、またどちらが渡辺明棋王(35歳)に挑戦しても、やはり新時代を感じさせるシリーズになることでしょう。

 広瀬八段は棋王戦では敗退となりましたが、1月に開幕する王将戦七番勝負において、渡辺明王将への挑戦が始まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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