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藤本渚五段、3勝1敗で王位リーグ紅組暫定トップ! もし挑戦権獲得ならば史上3位の若さでタイトル戦登場

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月25日。大阪・関西将棋会館において伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦・挑戦者決定リーグ紅組▲藤本渚五段(18歳)-△石井健太郎七段(32歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時47分に終局。結果は111手で藤本五段の勝ちとなりました。

 藤本五段のリーグ成績はこれで3勝1敗。他のメンバーより一足先に4局目まで終え、暫定的にトップに立っています。

 5月14日におこなわれるリーグ最終戦では、斎藤慎太郎八段と対戦します。

 石井七段は0勝3敗で、残念ながらこの段階でリーグ陥落が決まりました。

 藤本五段がもし今期王位戦で藤井聡太王位への挑戦権を獲得し、七番勝負に進めば、18歳11か月でのタイトル戦登場で、史上3位の年少記録となります。

藤本五段、終盤の一手争いを制す 

 藤本五段先手で、戦型は相掛かり。角交換のあと、互いに陣形を整備しながら間合いをはかりあう序盤となりました。

 45手目。藤本五段は相手の飛車筋である8筋の歩を突きます。相手からの継ぎ歩攻めがありそうなところでこの歩を突くあたりなどは、現代感覚が表れているようです。

 対して54手目。石井七段もまた、相手の飛車筋である2筋の歩を突きます。藤本五段は継ぎ歩で応じて、本格的な戦いが始まりました。

 97手目。藤本五段は相手陣に銀を打ち込みます。持ち時間4時間のうち、残りは藤本54分、石井2分。石井七段は時間を使い切って、桂を跳ねる勝負手を放ちました。もし、藤本五段がタダで取れる飛車を取ってくれれば、勝敗不明の寄せ合いに持ち込めそうなところ。しかし藤本五段はタダではない金を取って、速度重視で寄せに出ました。

 藤本五段は中段の石井玉を受けなしに追い込みます。対して藤本玉は詰まない形。111手目、藤本五段が王手のと金を払ったのを見て、石井七段は投了しました。

 リーグ開始時、台風の目となることが予想されていた藤本五段。周囲の期待にたがわず、強敵を連破して、挑戦権獲得に近づきつつあります。

 藤本五段は現在公式戦11連勝中です。

 この勢いのまま、一気に大舞台登場となるでしょうか。

 王位リーグ白組ではレジェンド羽生善治九段が暫定トップに立っています。

 羽生九段は19歳0か月で竜王挑戦権を獲得しました。もし今期、藤本五段が王位挑戦を決めれば、羽生九段よりも早くタイトル戦に登場することになります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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