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現在形勢まったく不明 豊島王位に木村九段が挑戦する王位戦第7局2日目始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 豊島将之王位(29歳)の初防衛なるか。それとも木村一基九段の初タイトルなるか。王位戦七番勝負第7局は2日目の対局が始まりました。

 棋譜は公式サイトをご覧ください。

【前記事】運命の王位戦七番勝負第7局開始 前哨戦の「振り駒勝負」は豊島王位に軍配

 対局場は東京都千代田区の都市センターホテル。昨年の棋聖戦第5局、王位戦第7局もこちらでおこなわれました。そして当時の豊島挑戦者が、羽生善治棋聖と菅井竜也王位からタイトルを奪取したところでもあります。

 1日目は最後、豊島将之王位が2時間12分の長考をして、71手目を封じました。

 2日目朝、8時47分、先に対局室に入ったのは木村九段でした。その5分後、52分に豊島王位が上座に着きます。前日の指し手が多かったためか、並べているうちに対局再開定刻の9時を過ぎました。

 立会人の塚田泰明九段が封筒にはさみを入れ、封じ手を開封。豊島王位は赤いペンで持ち駒の桂に丸をして、7四の地点にまで矢印を引いていました。

 封じ手は金取りに桂を打つ、ほぼ大方の予想通りの一手でした。豊島王位は三段目に玉を乗り出し、上部を開拓しながら、攻めを続けています。あるいは入玉も視野に入っているのかもしれません。

 ここまでは豊島ペースという見方もできそうですが、中段に泳ぎだした豊島玉の近くでの戦いが続きますので、わずかなミスがそのまま致命傷となる可能性もあります。

 木村九段にとっても、封じ手はおそらく本命だったでしょう。十数分考え、気持ちを整えて読みを確認したか。歩を取りながら王手をかけました。

 豊島王位は時間を使って考えます。筆者はいま、このニュース記事に「わずかに豊島王位リードか」とタイトルをつけてアップしようとしたところで、豊島王位の手が動きました。長考1時間。中段四段目に進みながら王手の歩を取るのが自然かと思われたところで、豊島王位は自陣二段目に玉を引きました。この手を予想した人は、ほぼいなかったのではないでしょうか。いい手かどうかは、にわかに判断がつきそうもありません。記事タイトルは「形勢不明」と変更した方がよさそうです。

 通例では、終局は夕方から夜にかけて。持将棋など、特殊なケースが生じない限りは、いよいよ本日、両者の間で長く続いた戦いも終幕となります。

藤井聡太七段、次期王位戦予選を勝ち上がる

 9月25日。第60期王位戦第7局の1日目と同じ日、関西将棋会館では第61期王位戦予選▲竹内雄悟五段-△藤井聡太七段戦がおこなわれました。

 竹内五段の中飛車に対して、藤井七段は銀2枚を中段に繰り出す構え。竹内五段が動いて戦いが始まりました。ほぼ互角の中盤戦から、終盤に入ったあたりで形勢はやや藤井七段に傾いたようです。

 藤井七段は自陣に竹内玉をにらむ「遠見の角」を打ち据え、攻略を目指しました。難しい終盤戦でしたが、玉の堅さが優る分だけ、藤井七段が勝ちやすい情勢だったようです。

 最後は竹内玉の受けが難しく、藤井玉に詰みはない形となり、124手で藤井七段の勝ちとなりました。

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 藤井七段は初の王位リーグ入りに向けて、まずは第一歩を踏み出しました。

 藤井七段がこれから挑戦を目指すのは、豊島将之現王位か。それとも木村一基新王位か。はたしてどちらになるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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