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公式戦10連勝中・藤本渚五段、4月25日に石井健太郎七段と対局 藤井聡太王位への挑戦権を争うリーグ戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月25日。大阪・関西将棋会館において伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦・挑戦者決定リーグ紅組▲藤本渚五段(2勝1敗)-△石井健太郎七段(0勝2敗)戦がおこなわれます。

 王位戦参加1期目にしてリーグ入りを果たした藤本五段。初戦から強敵の佐藤天彦九段に勝利をあげています。2戦目では前期挑戦者・佐々木大地七段に千日手指し直しの末に敗れました。3戦目は現在名人挑戦中の豊島将之九段に勝利。次々と強い相手が続く中で、ここまで2勝1敗という成績をあげています。もし本局で勝てばリーグ暫定トップとなり、藤井聡太王位(八冠)への挑戦権獲得に近づきます。

 石井七段は2年連続で予選を突破し、2度目のリーグ参加。今期は斎藤八段、佐藤九段に敗れて、現在0勝2敗です。本局で敗れると、リーグ陥落が決まります。

新人賞受賞者 VS. B級1組の実力者

 藤本五段と石井七段は本局が初手合となります。 

 藤本五段は18歳で現役中最年少の棋士。フルシーズン参戦1年目の昨年度は、順位戦C級2組で9勝1敗という好成績をあげ、参加1期目でC級1組昇級を決めました。

 また年度成績は51勝9敗(勝率0.850)。伊藤匠七段と並んで、最多勝利賞も受賞しています。

 勝率0.850は歴代4位というハイアベレージです。それだけの高勝率ならば当然、ぶっちぎりで年間1位になりそうなもの。しかし藤井聡太王位(八冠)が歴代2位の0.852をマークしていたため、勝率1位賞には届きませんでした。めぐり合わせがわるかったというよりありません。

 藤本五段は王位リーグで佐々木七段に敗れたあとは負けなし。現在10連勝中です。

 なおも勝ち進めば、早くも今年度の最多連勝賞が見えてくるかもしれません。

 石井七段は昨年度、順位戦B級2組で8勝2敗の好成績を収め、B級1組へと昇級しました。

 ABEMA地域対抗戦では関東A監督の羽生善治九段にメンバーとして選ばれたほどの実力者です。

 藤本五段は定跡をはずれた力戦型を好んで指す居飛車党。対して石井七段は基本的には居飛車、振り飛車、どちらも指しこなせるオールラウンダーです。両者の作戦選択の段階から、目が離せない一局といえそうです。

 紅組はレジェンド羽生善治九段が3勝1敗で暫定的にトップに立っています。

 もし羽生九段と藤本五段がそれぞれリーグを勝ち抜き、両者による挑戦者決定戦が実現すれば、大変な注目を集めそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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