Yahoo!ニュース

永瀬拓矢叡王(27)が斎藤慎太郎王座(26)に2連勝 王座戦五番勝負第2局

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 9月18日。大阪市・ウェスティンホテルにおいて、第67期王座戦五番勝負第2局▲斎藤慎太郎王座(26歳)-△永瀬拓矢叡王(27歳)がおこなわれました。9時に始まった対局は20時53分に終局。結果は134手で挑戦者の永瀬叡王勝ちとなりました。

画像

 五番勝負はこれで永瀬叡王の2連勝。王座獲得まであと1勝と迫りました。

難解な戦いを挑戦者が制す

【前記事】

千日手指し直し局で永瀬拓矢叡王(26)が斎藤慎太郎王座(26)に勝利 王座戦五番勝負第1局

 第1局と第2局の間、9月5日に永瀬叡王は誕生日を迎え、27歳となりました。1歳下の斎藤王座は現在26歳です。

 第1局は永瀬叡王が先手で千日手に。指し直し局は斎藤王座が先手で、永瀬叡王の勝ちでした。

 「一局完結方式」のため、第1局指し直し局の先後は関係なく、第2局での先手は斎藤王座です。

 戦形は角換わり腰掛銀となりました。

 斎藤王座が比較的珍しい「位取り」の作戦を取ったのに対して、後手番の永瀬叡王が仕掛けて戦いが始まりました。

「仕掛けが軽かったかもしれないですね」

「形勢が少しまずいか、だいぶまずいか正確にわからなかったですけれど」

 局後に永瀬叡王はそう語っていました。

 斎藤王座は丁寧に応接しながら、いつしかペースをにぎったようです。とはいえ、形勢は僅差。斎藤王座は、難しい判断を迫られました。そして長考の末、踏み込んで飛車を切る攻めを決行しました。

 形勢は均衡を保ち、難解なまま、終盤戦に入ります。

 斎藤王座は永瀬玉の上部から直接迫るか、それとも側面から攻めるかという局面で、後者を選びました。結果的にそのあたりで、判断ミスがあったようです。

 とはいえ、そこからも難しい戦いは続きます。永瀬叡王が最善の順を逃し、斎藤王座が優位に立ったかとも思われました。

 しかし永瀬叡王は崩れませんでした。上部を押さえる桂を打ち、その桂が龍を取り、さらには華麗に成り捨てて斎藤陣のバランスを崩すに至り、形勢は逆転したようです。

「最後、ぽっきり折れてしまったのが、一番悔いが残ります」

 局後に斎藤王座はそう語っていました。

 互いに一分将棋の中、永瀬叡王が着実な寄せを見せ、最後は負けのない形に。134手目、王手をかけられたところで、まだ詰みはないもの、斎藤王座は望みなしと見て投了しました。

 初の王座獲得まであと一歩と迫った永瀬叡王。対してここから斎藤王座の巻き返しはあるでしょうか。

 第3局は10月1日、兵庫県神戸市・ホテルオークラでおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事