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千日手指し直し局で永瀬拓矢叡王(26)が斎藤慎太郎王座(26)に勝利 王座戦五番勝負第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 王座戦五番勝負第1局・千日手指し直し局▲斎藤慎太郎王座(26歳)-△永瀬拓矢叡王(26歳)戦は21時2分、90手で挑戦者の永瀬叡王の勝ちとなりました。

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指し直し局は挑戦者が制す

【前記事】

王座戦五番勝負第1局で千日手成立 15時38分、指し直し局が始まる

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190902-00140956/

 永瀬叡王は千日手局について、指してみたい作戦ではあったものの、作戦がうまくいかなかったと局後に語っていました。千日手好きの永瀬叡王ではありますが、本局では作戦失敗から、やや不本意な千日手だったようです。

「千日手局は途中、まとめにくいかと思っていたんですけれど。ギリギリでバランスを取れたんじゃないかな、とは思ってはいたんですけれど」(斎藤王座)

 指し直し局は先手の斎藤王座が矢倉を目指す序盤戦。対して永瀬叡王は速攻を仕掛けて、戦いが始まりました。

「序盤で思うような展開ではなかった。終始指しにくかった」

 斎藤王座は局後にそう反省していました。

「後手番としては、という言葉が正しいかわかりませんが、後手番としては仕方がない展開だったと思います」(永瀬)

 永瀬叡王は銀を取らせる代償に、桂香を取って、と金を作ります。そのあたり、永瀬叡王は「互角に近いのかな」という感触だったようです。

 斎藤王座は駒を前線に伸ばし、押さえ込みの方針を取りました。永瀬叡王はじっと陣形を整備して待ちます。将棋は前に出た方が必ずしもよくなるとは限りません。いつしか形勢は、待つ側の永瀬叡王に傾いたようです。

「一番粘れる順を探したんですが、なかなか厳しかったというところでした」(斎藤)

 斎藤王座は苦しい時間が続き、持ち時間も大差がつきました。

 終盤。永瀬叡王は満を持して反撃に移りました。斎藤王座の玉は、最初の位置から動いていない「居玉」のままで、長く粘りが効かない形です。最後は斎藤玉を上部から押さえるセオリー通りの寄せでした。

 21時2分。斎藤王座が「負けました」と投了を告げ、永瀬叡王の勝ちとなりました。

 千日手局は62手。指し直し局は90手。合わせて152手の熱戦でした。

「千日手局は何か失敗してしまっているような気がしているので、そういう失敗を減らして、棋力向上ができれば」(永瀬)

「また研究して、次局以降は修正していきたい」(斎藤)

 両対局者は局後にそう語っていました。

 第2局は9月18日、大阪市・ウェスティンホテル大阪でおこなわれます。

 現在、将棋界の番勝負では「一局完結方式」が取られています。先後に関しては、第1局の千日手指し直し局はカウントせず、第2局は斎藤王座の先手となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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