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羽生善治九段(48)王将リーグ復帰、藤井聡太七段(17)らと対戦決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月6日、東京・将棋会館において第69期大阪王将杯王将戦二次予選決勝▲羽生善治九段(48歳)-△郷田真隆九段(48歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時2分に終了。結果は147手で羽生九段の勝ちとなりました。羽生九段はこれで王将リーグ復帰が決まりました。

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 リーグは精鋭7人の棋士が総当りで戦います。ファンが注目する羽生九段-藤井聡太七段戦もおこなわれることが決まりました。渡辺明王将(35)への挑戦権を獲得するのは、はたして誰になるでしょうか。

名棋士同士、84回目の対戦

 羽生善治九段と郷田真隆九段。いずれも平成の将棋界で幾多の名勝負を繰り広げてきた名棋士です。

 両者はこれまでに83局戦っています。羽生九段との対局数が多い棋士のベスト3は谷川浩司九段(168局)、佐藤康光九段(161局)、森内俊之九段(136局)。羽生-郷田戦はそれに次ぐ84局目となりました。

 過去の対戦成績は羽生55勝、郷田28勝。

 タイトル戦でも多く戦ってきた両者は、王将戦七番勝負では2015年度に対戦。郷田王将が羽生挑戦者を4勝2敗で退け、郷田王将が防衛を果たしています。

 王将在位数は、羽生九段は12期。郷田九段は2期です。

 今期王将戦では、リーグ入りをかけた一番で戦うことになりました。

【前記事】

藤井聡太七段(17)初の王将戦リーグ入り決定 二次予選決勝で谷川浩司九段(57)を降す

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190901-00140791/

 二次予選は、まずは藤井聡太七段がリーグ入りを決めています。あとの2枠には誰が入るのか、大いに注目されるところとなりました。

 振り駒の結果、先手は羽生九段。互いに飛車先の歩を伸ばす、相掛かりの戦形となりました。

 角交換の後、羽生九段は早い段階で自陣に角を据えます。しばらく進んで郷田九段も自陣に角を打ち、駒組の整備が続きました。

 満を持して、羽生九段は仕掛けていきます。羽生九段の攻めは快調で、まずはリードを奪ったように見えました。

 終盤戦。郷田九段は玉を上部に逃げ越す姿勢を見せながら、ポイントを詰めていきます。やがて勝敗不明の、白熱した終盤戦となりました。

 おそらく寄せ合いの段階で、形勢は微妙に揺れ動いたものと思われます。秒読みの中での難解な攻防の中、いつしか形勢は羽生九段に傾いていきました。

 最終盤、羽生九段は巧みに▲5五馬の形を作ります。この馬(成り角)が盤上中央で輝きを放ちました。「5五の馬に負けなし」という格言はありませんが、5五馬とした側が形勢有利となる場合は多いようです。昨日の竜王戦挑戦者三番勝負第3局で、豊島名人の最終手も▲5五馬でした。

 郷田九段の中段玉を受けなしに追い込んで、18時2分、147手で羽生九段の勝ちとなりました。

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 羽生九段はこれで王将戦リーグ入り決定。あともう1枠を争う三浦弘行九段-佐藤天彦九段戦は9月14日におこなわれます。

 羽生九段と郷田九段の対戦成績は、これで羽生56勝、郷田28勝となりました。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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