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王座戦五番勝負第1局で千日手成立 15時38分、指し直し局が始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

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王座戦五番勝負第1局始まる 戦形は角換わり早繰り銀

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190902-00140890/

 9月2日9時から始まった王座戦五番勝負第1局▲永瀬拓矢叡王(26歳)-△斎藤慎太郎王座(26歳)戦は15時8分、62手で千日手が成立しました。

 永瀬叡王が銀で角を追い、斎藤王座が角を逃げるという4手1組の千日手です。

 持ち時間5時間のうち、残り時間は永瀬2時間14分、斎藤2時間29分。

 規定により、指し直し局は先後を入れ替えて、残り時間を引き継ぎ、30分後の15時38分から開始されました。

 先手となった斎藤王座は矢倉に組む作戦を見せました。

 対して永瀬叡王は組み合う姿勢ではないようです。速攻をにおわせ、駒組もそこそこに、すぐに激しい変化に飛び込む可能性もありそうです。

「千日手の永瀬」の面目躍如

 千日手から指し直しとなれば、先後が入れ替わります。そのため、わずかに有利な先手番での千日手は、普通は不満と見なされることが多い。しかし、永瀬叡王は、千日手をいとわないスタイルで、人一倍、千日手となる確率が高いことで知られます。

 最も印象的なのは2011年のNHK杯1回戦、佐藤康光九段-永瀬拓矢四段(当時)戦でしょう。新鋭の永瀬四段はNHK杯史上初めて2回の千日手を成立させ、その上でトップ棋士の佐藤九段を破りました。

 筆者が担当した1年前のインタビュー記事で、永瀬七段(当時)は千日手について、また「不倒」と揮毫することについて、以下のように語っていました。

(前略)千日手は結構特殊なルールだと思っているので。それが今、この世で生きてるっていうのは美しいことだと思います。なかなか、100手くらい戦って(引き分けで)やり直しですっていうのは、(他の競技では)ないですよね。

(中略)

「不倒」って、「倒れない」って意味じゃないですか。千日手という感覚に近いんですけど、両者倒れなかった時に、それでも最後に立っている人間というのは体力とか、人間力だと思うので。「自分はそうあってほしい」と思います。

出典:自分で考え自分で答えをみつける。ライフ・イズ・将棋。棋士・永瀬拓矢 25歳。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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