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斎藤慎太郎王座(26)に永瀬拓矢叡王(26)が挑む王座戦五番勝負開幕 9月2日に第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 斎藤慎太郎王座(26)に永瀬拓矢叡王が挑む第67期王座戦五番勝負が開幕します。第1局は9月2日、神奈川県秦野市鶴巻温泉「元湯 陣屋」でおこなわれます。

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【前記事】

永瀬拓矢叡王(26)が王座挑戦権獲得 決定戦で豊島将之名人(29)を降す

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190725-00135706/

 挑戦者の永瀬叡王は、山崎隆之八段、高見泰地七段、佐藤天彦九段、豊島将之名人と、並み居る強豪を連破して、挑戦者決定トーナメントを勝ち上がりました。

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 迎え撃つ斎藤慎太郎王座は昨年、中村太地王座(当時)に挑戦し、3勝2敗で初タイトルを獲得しています。

両対局者の声

 対局の模様を中継する動画配信サイトParaviでは、両対局者のインタビューがアップされています。

 斎藤慎太郎王座インタビュー

 https://www.paravi.jp/watch/46724

 永瀬拓矢叡王インタビュー

 https://www.paravi.jp/watch/46725

 また最近筆者は、永瀬叡王にロングインタビューをおこなっております。

 https://originalnews.nico/204159

 こちらもぜひご覧ください。

過去の対戦成績は1勝1敗

 若手トップクラスである両者ですが、斎藤王座は関西、永瀬叡王は関東所属のためか、意外なほどに、過去の対局数は少なく、これまでに2局です。

 1局目は2015年の竜王戦決勝トーナメント。

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 永瀬六段は4組優勝、斎藤六段は5組優勝(段位はいずれも当時)での対戦でした。永瀬六段が先手で戦形は相掛かり。中盤では永瀬六段が、あまり見たこともないような形に引きずり込んで優勢に。

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 最後には、上部に逃げ越した先手玉は周りに龍、馬、馬と大駒3枚を従える永瀬ワールドとなりました。

 2局目は今年2019年7月のB級1組順位戦。永瀬叡王先手で、矢倉模様の立ち上がりから、力戦形に。勝敗不明の終盤戦にもつれこみ、そこから斎藤王座が抜け出しました。

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 図で残り時間は永瀬56分、斎藤1分。永瀬叡王はこの絶望的な局面を見つめ続け、持ち時間を全部使い切るまで考え、▲2九歩と受けています。これも永瀬流の戦い方です。結果はここから的確に相手玉を寄せ、的確に自玉を逃げ切った斎藤王座の勝ちとなりました。

 ともに居飛車党の両者。五番勝負ではやはり、相居飛車の最先端の戦いとなりそうです。

同世代で初の八段となるのはどちらか?

 2018年5月、八段昇段規定に「タイトル2期獲得」という条件が追加されました。両対局者は現在七段。タイトル獲得数は、それぞれ現在保有しているタイトルが1期ずつ。よってこの王座戦五番勝負を制した方が八段昇段となります。

 永瀬叡王は1992年度、斎藤王座は1993年度の生まれ。両者は現在26歳で、永瀬叡王は9月5日の誕生日を迎えると27歳になります。

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 92年度から94年度までの世代には、菅井竜也(前王位)、永瀬、斎藤、高見泰地(前叡王)、八代弥、千田翔太、佐々木勇気という精鋭の七段陣が揃っています。昇段争いという点では、斎藤王座、永瀬叡王のいずれかが、一歩抜け出すことになります。

チェスクロック方式の影響は?

 将棋界は歴史的に、時代が下るにつれ、持ち時間が短くなる流れにあります。チェスクロック方式の導入もその一つです。

 従来は時間をストップウォッチで計測し、1分未満は切り捨てとしていました。それがチェスクロック方式となると、消費時間がそのままカウントされます。

──観戦しているアマチュアの側からは、その違いはよくわからないと思いますが、そんなに違うものですか?

永瀬:終局が3時間違うという印象です。ストップウォッチとチェスクロックだけで(対局者それぞれ)1時間ぐらい違います。昼食休憩、夕食休憩があるだけで、もう少し違う。あと、チェスクロックだと、時間を残そうとしている人がいるので。

出典:永瀬叡王就位記念インタビュー

 今期の王座戦では初めて、予選の段階から五番勝負に至るまで、チェスクロック方式が導入されました。また夕食休憩も50分から30分に短縮されています。

 時間の使い方も勝負のうちです。両対局者はそれも含めて、どのような戦略を取るのでしょうか。

 観戦する側も、昨年までの終局時間を想定していると、うっかりいいところを見逃してしまうかもしれません。

 ともあれ、実力伯仲の両者の対戦。第1局から注目です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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