U-20女子W杯に向けて高まる一体感。アジア王者として大会2連覇を目指す「ヤングなでしこ」の強みとは

快晴の中、5日間の合宿を行なったヤングなでしこ(写真:keimatsubara)

【7カ月ぶりの活動】

 2021年1月20日から2月6日にかけてコスタリカ共和国(*)で開催が予定されているU-20女子W杯に向けて、U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)候補が福島県のJヴィレッジで9月13日から17日まで、5日間のトレーニングキャンプを行った。

 大会は当初、今年8月10日から30日までの開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で5カ月先に延期。3月に予定されていたドイツU-20女子代表との親善試合や海外遠征も中止となったため、約7カ月ぶりの活動となった。

 日本は育成年代では世界大会でコンスタントに好成績を残しており、U-20W杯は、前回2018年のフランス大会で初めて世界一になった。

 今回招集された世代は、昨年11月にタイで行われたAFC U-19女子選手権(U-20女子W杯アジア予選)では全勝優勝。アジア王者として、池田太監督の下でW杯2連覇を目指す。

 選手たちは、なでしこリーグのチームやそのユースチーム、大学など幅広いカテゴリーで活躍しており、技巧派や頭脳派、複数のポジションをこなせる魅力的なプレーヤーもいる。次期なでしこジャパン候補の有望株たちに注目したい。

 アジア予選からの10カ月間で、大学に進学したり、社会人になるなど、環境が変わった選手も少なくない。コロナ禍も重なって活動が制限される中、池田監督は、久しぶりに見る選手たちの変化をこのように明かした。

「U-20代表は大学生や高校生、社会人としてなでしこリーグでプレーする選手もいます。生活環境が大きく変わった選手もいる中で、コロナ禍の自粛生活にうまく対応して、メンタルも体もキープしてくれていると思います。選手たちに話を聞くと、「自粛期間中に自分のことを見つめ直した」という選手もいました。食事を考えて体を絞ったり、実家に戻ってリセットしてきた選手もいます。対応はそれぞれ違いましたけれど、みんな若いので適応力は素晴らしいなと。元気に集まってくれて嬉しく思います」

 合宿初日の13日には所属チームの試合があった選手もいたため、全員が集合した14日の午後から本格的に活動がスタート。まずは、このチームの目標とサッカーのコンセプトの再確認を行った。昨年2月のチーム立ち上げ時に選手主体で設定した目標は、以下の4つだ。

「AFC U-19女子選手権(U-20女子W杯アジア予選)優勝」

「U-20女子W杯優勝」

「世界に通じる選手、なでしこジャパンで活躍する選手になる」

「応援されるチームになる」

 最初のアジア予選優勝はすでに達成しているため、残る3つが今後の目標となる。

 池田監督は今回の合宿のテーマとして、上記の確認に加え、各自のコンディションや新しい生活様式への対応も含めたフィジカルアプローチと、4カ月後の大会に向けた「さらなる積み上げをすること」だと明かした。

 昨年のアジア予選では、個々のテクニックと組織力を生かし、切り替えの速さや粘り強いゲーム運びが光った。ミスをしても引きずらず、根気よくチャンスを作っていく。終盤になっても落ちない運動量があり、苦しい試合もあったが、5試合すべてで先制して18得点2失点の内容で優勝まで駆け上がった。

(参照記事)

「新生・ヤングなでしこ」が挑むアジアの壁。次世代の有望株が揃うチームの強みとは?

ヤングなでしこが難敵・韓国に2-0で完勝。鮮やかなゴールを支える2試合無失点の堅守

 優勝した前回U-20W杯フランス大会の唯一の経験者で、アジア予選は主将としてチームを牽引したセンターバックのDF高橋はな(浦和レッズレディース)は、「常にチャレンジャー精神を持って練習をして、チームを良くするために、と考えられる選手が多いです。世界大会に向けて、合宿を通してさらに意識を高めていきたいです」と、チームのポテンシャルと伸びしろに自信を見せる。前回のW杯はフル出場で優勝に貢献したが、「自分が(緊張で)ガチガチになっていた状況で周りの先輩やチームメートに助けられたので、今大会では周りの選手を助けられるような存在になっていきたいです」と意気込みを語った。

最終ラインでチームを支える高橋(一番右)
最終ラインでチームを支える高橋(一番右)

 W杯では、アジアとは違う難しさが待ち受ける。欧米の選手たちは20歳前後で成人と変わらない身体能力を備える。高い技術があり、戦術的な駆け引きにも長けたスペインなどは強敵で、日本がボールをうまく保持できない試合も出てくるだろう。そうした中でも辛抱強くゲームをコントロールし、試合中に修正していくための引き出しを増やしておくことも、2連覇への重要なファクターになる。

(*)当初はパナマ共和国と共同開催の予定だったが、今年7月にパナマが共同ホスティングを取り下げ、コスタリカの単独開催となった。

【チームの強み】

 今回の招集メンバーは26名。昨年のアジア予選のメンバーが17名を占めており、チームの「核」は出来上がっている。その中で、今季の所属チームでの活躍を反映するように、キレのある鋭い動きを見せる選手もいた。

 中盤で積極的なプレーを見せたMF森田美紗希は、アジア予選時は高校生だったが、現在は2部の日体大FIELDS横浜でプレー。環境の変化をこう明かす。

「なでしこリーグで戦う上で、1試合にかけるメンタリティは高校時代から変わりましたし、ポジションがボランチからサイドに変わり、見ることや吸収することがたくさん増えました。大学生や社会人のなでしこリーガーと戦うことで、判断スピードが前よりも上がった気がします」

4日目のトレーニングマッチでは、男子高校生相手に互角以上の戦いを見せた。一番左が森田
4日目のトレーニングマッチでは、男子高校生相手に互角以上の戦いを見せた。一番左が森田

 合宿3日目は、相手のプレッシャーの中でビルドアップの練習に熱がこもった。その狙いについて池田監督は、「前を意識してプレーすることがチームの課題だったので、相手のプレッシャーの状況を判断して攻撃のスペースを見つけて共有することを伝えています」と説明した。

 池田監督は練習中、プレーをほとんど止めない。実戦で起こる様々な状況を想定し、流れの中で攻守の切り替えや、オフザボールの動きも含めて集中を切らさないことを重視する。プレーが切れた瞬間には、良いプレーと改善が必要なプレーを、ポジティブな表現で端的に示す。親しみを込めて選手たちから「熱男(あつお)=熱い男」と呼ばれる指揮官の声は、グラウンドによく通る。

 最終ラインから積極的に声を出していたのは高橋だ。リーダーとして、「上下関係を作らず、みんながいろんな意見を言い合っていけるチームにしていきたい」と、風通しの良い雰囲気を大切にしている。その言葉通り、オンでもオフでも選手同士がよく話をしており、雰囲気は和やかで、17歳から20歳までの歳の差を感じさせない。

 また、正守護神としてアジア予選優勝に貢献したGK田中桃子(大和シルフィード)のコーチングも光った。田中は今季、フル出場でリーグ2部最小失点の堅守を支えており、より安定感が増したように見える。

 そのほかにも、今季1部でレギュラーとして戦っている選手にはジェフユナイテッド市原・千葉レディースのFW大澤春花、セレッソ大阪堺レディースのDF松原優菜とDF田畑晴菜がいる。クラブ別で見ると、千葉が最多の4名で、日体大FIELDS横浜(日本体育大学が母体)と早稲田大学からも各4名ずつがメンバー入りした。

 FW陣は激戦区だ。アジア予選で最多得点を叩き出したFW山本柚月(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、山本と2トップで攻撃の起点としても大きく貢献した大澤、切り札として鮮烈な印象を残したFW廣澤真穂(早稲田大)の3名に加え、2部で得点ランク2位と好調のFW中村恵実(AC長野パルセイロ・レディース)、「利き足は頭」という空中戦の強さを持つFW神谷千菜(愛知東邦大)が怪我から復帰。昨年、関東女子リーグで得点王になったFW島田芽依(浦和レッズレディースユース)も、今年2月以来の招集となった。160cm台後半の長身で突破力のあるパワフルなFWが揃い、シュート練習も見応えがあった。

 アジア大会で主力として活躍したFW菅野奏音とDF松田紫野、アジア大会はケガで欠場したが、この年代では候補に入り続けているMF木下桃香が今回のメンバーから外れたのは、所属する日テレ・東京ヴェルディベレーザで今季、レギュラーとして試合に出続けていることと、ケガ人が多いチーム事情もあったと思われる。ただし、W杯本番に向けて指揮官の構想には入っているだろう。

 最終メンバーは21名。メンバー入りに向け、選手たちの各チームでの活躍にも注目したい。

【4カ月後に向けた総仕上げ】

 4日目の夕方には、男子高校生との試合で、組織力と個々の気迫に目を見張る場面があった。ふたば未来学園高校と25分×4本のトレーニングマッチを行い、合計2-1で勝利。4本とも違う組み合わせだったが、コンビネーションは安定していた。序盤から粘り強い守備で主導権を握り、中村恵実のシュートがポストを叩くなど流れを作ると、1本目の21分に右コーナーキックを獲得。DF富岡千宙(とみおか・ちひろ)のキックに高橋はなが中央から飛び込んで頭で合わせて先制した。

 フィジカルで上回る男子高校生相手に、練習でも強調されていた「準備のスピードと選手同士の距離感をよくすること」を徹底。スペースを効果的に使った3人目での崩しが複数回見られた。試合中、前がかりになった相手に対してボールを奪うシーンが続くと、「強いな…」とつぶやく男子選手の声も耳に入った。

 3本目は大きくメンバーを入れ替えた中で再び攻勢を強め、終了間際に最終ラインから上がった田畑晴菜がエリア外から左足で鮮やかに逆サイドネットを揺らして2-0。4本目は逆に押し込まれる場面が増え、終盤に左サイドを突破されて1点を返されたが、そのままリードを守り切った。

 昨年はアジア選手権前にフランスやアメリカなどの海外遠征を何度か行ってきたが、今年はコロナ禍で難しい状況だ。その中で今回のような男子選手とのトレーニングが、W杯でフィジカルの強い強豪国との対戦を想定した重要な機会となる。

 開催時期の1月は日本は真冬に当たる季節だが、開催地のコスタリカは夏で乾季のシーズンに当たる。美しい自然に囲まれた国だが、日中の日差しが強く、強い風が吹いて埃っぽい時期だという。時差は日本マイナス15時間で、昼夜がほぼ真逆。そうした面も含めて、どんな対策を立てているのだろうか。

「海外国との対戦が難しい中で、対戦相手(となりそうな国)のチームの戦術的なところを練習の中でシミュレーションしたり、映像を使って分析するなどトレーニングを工夫して、スタッフも含めてアイデアを捻り出しています。まずは全員が健康で、(日本の)シーズンを終えてくれることが第一ですし、直前キャンプの場所は(新型コロナウイルスの状況によって)限定されてしまうかもしれませんが、暑熱対策や時差対策も含めて情報を仕入れていきます」

 また、本大会まで残り4カ月でチームを仕上げていくために、池田監督は各自が大会までに普段のトレーニングの中で意識的に強化して欲しい部分についてこう話した。

「一つ一つの(プレーの)強度や、フィジカルコンディションをしっかり上げていくこと。また、各選手の所属チームのサッカーが違っても、準備するスピードや判断のために周りを見ておくことは(サッカーで大切なこととして)共通しているので、そういう部分を次のキャンプまでにもっと磨いて欲しいとリクエストしています」

 アジア王者になり、また今年に入って新しい立場や環境で適応しながらプレーしている選手たちは、以前より一回り頼もしくなったように映った。コロナ禍で行われる今回のU-20W杯コスタリカ大会は、感染対策も含めて変則的なことが多くなると予想されるが、このチームの持ち味である粘り強い精神力ととびきりのチームワークを発揮して、日本に明るいニュースを届けて欲しい。

監督・選手コメント

DF田畑晴菜(中央)が追加点を決めた(左はDF松原優菜、右はDF井上千里)
DF田畑晴菜(中央)が追加点を決めた(左はDF松原優菜、右はDF井上千里)

(写真は全て筆者撮影)