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浦和・清家貴子がWEリーグ連続ゴール記録を更新!「分かっていても止められない」強さとは?

松原渓スポーツジャーナリスト
清家貴子(写真提供:WEリーグ)

【8試合で11ゴール】

 ノりに乗っている選手の元には、自然とボールが集まってくる。

 4月14日に行われた、WEリーグ第14節・N相模原戦で、浦和の清家貴子が、リーグ史上初の8試合連続ゴールを決めた。ここまで15試合で13ゴールを決め、得点ランキングは2位に6ゴール差をつけて首位。チームも連勝を7に伸ばし、暫定首位に立っている。

 27歳のアタッカーは、3月27日の新潟戦でWEリーグ新記録を塗り替えた。以来、どれだけ記録を伸ばせるか注目され、厳しいマークにあいながらも期待に応え続けている。

 この試合では、27分に、清家のパスから塩越柚歩がエリア内左で反転し、GKの頭上を抜く技ありのループシュートで先制。そして60分、塩越のコーナーキックに清家が頭でピンポイントで合わせて2点目を決めた。

密集の中で頭で合わせた(背番号11)(写真提供:WEリーグ)
密集の中で頭で合わせた(背番号11)(写真提供:WEリーグ)

 暫定首位を走る浦和の強みは、15試合で37得点の攻撃力だ。1月の皇后杯で安藤梢と猶本光が膝のケガを負い、大黒柱の2人が長期離脱を余儀なくされたことは大きな痛手となったが、「2人のために」と、周囲の選手たちが奮起。清家は皇后杯でも準優勝の原動力となった。

 そして、清家はウインターブレイク明けの3月から、8試合で11ゴールと破竹の勢いを見せている。その勢いは代表にも及び、4月の6日と9日のシービリーブスカップでは、強豪アメリカ相手に開始30秒でゴール。試合には敗れた(1-2)が、電光石火のゴールが与えたインパクトは大きく、清家自身の自信にもなったようだ。

「裏へ出たボールに対して、逃げずに相手の前に入ってドリブルできたことは自分らしいプレーだったと思いますし、アメリカ相手に通用すれば、世界中どの相手にも通用するのではないかと思います。シュートも練習してきた形を出せたことは良かったです」

 スプリント力は以前にも増して力強く、ベクトルは常にゴールに向かっている。変化のバリエーションが多いスピードの緩急も、対峙する守備者の脅威となる。

「11番(清家)に気をつけて!」

 逆サイドにボールがある時でも常に相手から警戒されるようになり、複数のマークがつくことも。それでも、仕掛けることをやめるつもりはない。

「サイドバックをやっていた時から、ゴールへの直接的なプレーやアシストが強みだったので、ゴールに近い選手を見ることは癖づいています。今季は前でプレーするようになって、得点力がついてきたと思います」

 2019年から3シーズン、サイドバックでプレーしたことでスプリント力を磨き、クロスやアシストでの貢献度も増した。

 昨季、ポジションを前線に戻してからは、浦和の大先輩である安藤の教えを受けながらシュート練習を増やしてきた。それまで感覚で打っていたシュートを理論で強化し、どんな角度からも枠をとらえるスキルを体得。昨シーズンは20試合で12ゴールとその成果を示し、今季はさらに多彩な形で決めている。

 巧みな反転からのゴール、ディフェンダーをかわし切らず、強引に振り切って決めたゴール。自ら仕掛けて得たPK、ロングボールに抜け出して相手をごぼう抜きして決めたゴールもある。

 WEリーグの公式スタッツによると、ゴール数だけでなく、シュート数、アシスト数とキーパス数(明確なチャンスを生み出したパスの数)でリーグトップを走る(4月15日現在/アシストは1位タイ)。

 猶本と安藤が不在のピッチで、「自分が点を取らなければいけない」という責任感も、今の清家の原動力になっている。アメリカ遠征から4月11日に帰国後、過密日程での出場となったが、楠瀬直木監督は「好調の勢いは大事にしたい」と、あえて先発で送り出した。

「責任感が強くなって、やらなければいけないことをしっかりやってくれるようになった。(奪われた時に)戻らなければいけない、というような危機感も持てるようになってきた。だから、こちらはコンディションをしっかり整えて、いい状態で点が取れるように、パターンやヒントを伝えながら見守っています」(楠瀬監督)

アメリカ相手にスピードで互角以上の勝負を繰り広げた
アメリカ相手にスピードで互角以上の勝負を繰り広げた写真:REX/アフロ

【ホットラインで記録を伸ばせるか】

 清家とともに、後半戦で好調を維持しているのが、トップ下の塩越柚歩だ。

 シュートエリアが広く、ドリブルでの打開から決定的なパスも出せる。アシスト数は清家と並んでリーグ1位。清家とはジュニアユースからのホットラインがあり、13ゴール中5ゴールをアシストしている。塩越も昨季、本職のアタッカーではないボランチで苦闘しながらプレーの幅を広げた。浦和の中盤の層の厚さを象徴するように、今季は途中出場からのシーズンスタートとなり、悔しい思いもあっただろう。だが、後半戦はトップ下の猶本の離脱の穴をしっかりと埋めている。

「(猶本)光さんと(安藤)梢さんがケガをしてしまって、自分たちがやるしかないという思いが強くなりました。特に、今は光さんがずっとやってたポジションをやっているので。ゴールに関わるプレーも増やさなきゃという思いがさらに強くなって、どんどん足を振ってみようと頑張っています」

塩越柚歩(写真提供:WEリーグ)
塩越柚歩(写真提供:WEリーグ)

 N相模原戦で決めた左足ループの先制弾は、今季のベストゴール候補に入りそうだ。

「ゴール前のアイデアを出すところは、得意なところだと思っています。ボールを持ったら周りが動いてくれるし、特に(清家)貴子は、持ったら前に走ってくれるのですごく出しやすい。みんながそれぞれのプレーを理解し合って動けていると思います」

 清家の連続ゴール記録は、どこまで伸びるだろうか。「8」で止まったとしても、偉大な記録として残るのは間違いない。だが、塩越をはじめ、様々な選手とのホットラインが確立している今は、さらなる記録更新も夢ではないように思える。清家ののびしろについて、楠瀬監督はこう語っている。

「今日も、前半にいくつかチャンスがあったので、ああいうところでしたたかに点を取れるようになってほしい。ただ、何年か前に『点が取れない』と相談された時に比べると、着実に詰めてきています。若いですし、見習うべき選手もいるので、もっと上に行けると思っています」

 次の試合は、中3日で4月18日に、アウェーのNACK5スタジアムで大宮Vとの埼玉ダービーに挑む。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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