ヤングなでしこが難敵・韓国に2-0で完勝。鮮やかなゴールを支える2試合無失点の堅守

韓国戦で快勝したU-19日本女子代表(筆者撮影)

 タイで行われているAFC U-19女子選手権で、日本は第2戦で韓国と対戦し、2-0で勝利。2連勝で、韓国、中国、ミャンマーと同居するグループBの首位に立った。

 この大会は、アジア8カ国が19歳以下の未来を担う若い世代でアジアの頂点を決める。中国、韓国、北朝鮮、オーストラリアなどアジアの強豪国が参加し、4カ国ずつ2組に分かれてグループステージを戦い、各組上位2カ国が準決勝に進出する。上位3カ国には来年開催されるFIFA U-20女子W杯(開催地未定)への出場権が与えられる。グループAは北朝鮮、オーストラリア、タイ、ベトナム。日本は過去9大会中、最多の5回の優勝を誇り、今大会は初戦でミャンマーに5-0と快勝した。

 第2戦の韓国は2004年と13年にこの大会で優勝しており、今大会初戦は中国に2-1で勝利している。日本は2年前に同じくタイで行われたAFC U-16女子選手権の準決勝でPK戦の末に敗れている。今回のU-19日本女子代表には同大会に出場していた選手も多く、事実上のリベンジマッチとなった。

 初戦から中2日で臨んだこの試合で、日本はスターティングメンバー4名を変更。

 GK田中桃子、4バックは右からDF船木和夏(ふなき・のどか)、DF後藤若葉、DF高橋はな、DF松田紫野(まつだ・しの)。初戦に続いてMF菅野奏音(かんの・おと)とMF中尾萌々(なかお・もも)がダブルボランチを組み、右にMF森田美紗希(もりた・みさき)、左にMF伊藤彩羅(いとう・さら)。FW大澤春花(おおさわ・はるか)とFW山本柚月(やまもと・ゆづき)が2トップを組む4-4-2でスタート。田中、船木、後藤、森田の4名が今大会初出場となった。対する韓国も、初戦から4名を変更。

 酷暑の中で行われた初戦から一転、夜7時キックオフとなったこの試合は風もあって比較的涼しいコンディションで行われた。会場はチョンブリー・スタジアム。初戦の会場に比べて芝が綺麗に管理されており、パスもスムーズに走るようになった。

 試合前の練習で、韓国チームの力強い円陣の声がスタジアムに高く響き渡り、スタジアムの緊張感が一気に高まった。守護神としてこの一戦で日本のゴールマウスを任された田中は、この場面についてこう振り返っている。

「どの国に対しても、技術は自信を持てる部分だと思います。その上で、(日本も)もっと気持ちを見せる声があっていいのかなと思いますし、試合中は相手を上回る意味でも強く声を出すことを意識しました」(田中)

 平均身長で日本(160.7cm)を約6cm上回った(166.6cm)韓国は、フィジカルの優位性を生かし、強さとテクニックを兼ね備えたFWカン・ジウと得点力のあるFWチョ・ミジンを前線に配し、サイドにはスピードのあるアタッカーを揃える高速カウンターをぶつけてきた。

 しかし、これは日本にとって想定内でもあった。2トップの山本と大澤がしっかりとコースを限定しながらプレッシャーをかけ、中盤、最終ラインがコンパクトな距離感を保って高い位置で奪う。

 攻撃では個々のテクニックと組織力を生かしてテンポよくパスを回し、立ち上がりから試合のペースを掌握した。そして、開始1分の山本のミドルシュートを皮切りに流れを掴むと、先制点は早い時間に生まれた。

菅野奏音(かんの・おと)
菅野奏音(かんの・おと)

 16分、右サイドの高い位置で大澤と連係してボールを奪った森田が素早く菅野に預ける。ペナルティエリア右外でサポートに入っていた菅野はフェイントで相手を一人かわし、ステップを踏むような軽やかなタッチでボールを左に流すと、左足を一閃。矢のような弾道が、ゴール左上を鮮やかに射抜いた。

 日本を勢いづけるスーパーゴールに喜びを爆発させたピッチ内の選手たちに呼応するように、ベンチで戦況を見守っていた控えメンバーもベンチを飛び出す。前日に19歳の誕生日を迎え、全員に祝ってもらったという菅野は、「ミドルシュートを狙っていました。いいところにボールが置けたので思いっきり振り抜きました」と、イメージ通りのゴールだったことを明かした。

 ここから、出鼻を挫かれた韓国が猛追を見せる。特に、中国戦で2得点を決めているカン・ジウは脅威だった。33分にはその鋭いターンから最後はMFキム・スジンに際どいシュートを放たれ、1分後には左サイドを崩されてカン・ジウのシュートが日本ゴールを襲うが、いずれも枠を逸れた。セットプレーでは高さのある韓国に分があったが、クロス対応を得意とする田中が安定したセービングを見せる。

 後半、韓国のホ・ジョンジェ監督は交代選手を次々に投入し、攻撃を変化させてきた。シンプルなロングボールを一時的に封印し、中盤を経由した攻撃に切り替えて日本の守備を揺さぶる。日本はこの時間帯、中盤が間延びする場面が目立ち、しばらくは韓国ペースで試合が進んだ。

 しかし、この時間帯を凌ぎきると、点を取るために焦りが見え始めた相手に対し、日本は再びコンパクトな守備で主導権を奪い返す。78分、池田太監督は一人目の交代で右サイドにMF三浦晴香を投入。

山本柚月(やまもと・ゆづき)
山本柚月(やまもと・ゆづき)

 すると、84分には日本に2点目が生まれた。菅野のパスを中央で受けた船木のクロスに、ファーサイドで山本が左足インサイドで合わせてダイナミックに決めた。難易度の高いゴールだったが、これは日本が狙ってきた形の一つでもあった。

「あのゴールは練習してきた形とマッチしていました。(菅野)おとさんから(船木)のどかさんにパスが入った時に相手の目線もサイドにいく(ためボールウォッチャーになる)ので、そこで相手の背後から動き出してタイミングを合わせました」(山本)

 この2点目で勝利をほぼ手中にした日本は、83分にはゴール前でセカンドボールを拾われピンチを迎えるが、ゴール右隅を捉えたシュートは田中が間一髪、横っ飛びで弾き出した。

 終了間際にはDF水野蕗奈(みずの・ふきな)とDF富岡千宙(とみおか・ちひろ)が交代で入り、韓国の猛攻をしのぎ切った日本が2-0で完勝を飾った。

【華やかなゴールを支える堅守】

 池田監督は、大一番を乗り越えたチームの戦いについて、特に守備面を収穫に挙げている。

「相手が(ロングボールを)蹴ってくると予想していましたが、試合の入りからその対応がしっかりできていました。コンパクトに距離感を保ちながら、裏のスペースのケアもする。その守備が試合を通じてできていたことは収穫でした」(池田監督)

 日本はこれまでの2試合で7得点無失点。ストロングポイントである粘り強い守備は、メンバーが変わっても崩れることはない。この試合では、今大会初出場の4名(GK田中、DF船木、DF後藤、MF森田)も守備面で大きく貢献した。

 そして、奪ってから攻撃への切り替えの早さが、2つの鮮やかなゴールの呼び水となった。

 先制点を決めた菅野は、ミャンマー戦に続いてこの試合でもプレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いている。柔らかいボールタッチで攻撃のテンポをコントロールし、長短のパスでゲームを作り、チャンスを演出。ここぞという場面では自らゴールを決めるなど、勝負の勘所を押さえたプレーで特別な存在感を放っている。

中尾萌々(なかお・もも)
中尾萌々(なかお・もも)

 その菅野とここまで2試合でダブルボランチを組んでいる中尾のサポートも光る。

 2年前のU-16女子選手権で韓国に敗れ、「個人的には何もできなくて悔しかった」と話していた中尾は、この試合では積極的にボールを受けて配り、守備では相手に粘り強く食い下がった。

 154cmと小柄だが、持ち味のテクニックを生かしたドリブルや、相手DFのタイミングを外すシュートで会場を沸かせる場面もあった。

 2トップの攻守における献身的なプレーも印象的だ。ここまでチームトップの3ゴールを記録している山本は、2トップを組む大澤への感謝を口にした。

「(中2日の連戦で)身体的にも、結構キツイところはあるんですが、春花さんが結構走ってくれているなと思う部分がありますね。そういった面では自分も頑張らなければいけないなと思います」(山本)

 一方、デュエルの強さが光るのが、センターバックの高橋と右サイドバックの船木だ。日本は韓国に対してデュエル勝率62.3%、空中戦の勝率は69.6%と上回っている。高橋はこれまでの2試合で、どの相手に対しても制空権を握っていた。

船木和夏(ふなき・のどか)
船木和夏(ふなき・のどか)

 船木は、2点目のアシストのシーンに象徴されるように攻撃面は持ち味の一つだが、この試合ではサイドでの守備対応が光った。韓国は両サイドのポジションを流動的に入れ替えていたため、マッチアップする選手は目まぐるしく変わったが、いずれもスピードのある厄介な相手だった。そのなかで、船木は相手がスピードアップしてボールが足下から離れた瞬間を狙って奪ったり、相手よりも先にコースに体を入れるなど、駆け引きの巧さを見せた。だが、船木自身は、

「イエローカードを出してしまったり、相手のアジリティについていけないところも何回かあって、まだまだですね」(船木)

 と、自己評価は厳しかった。

 一方、後半の立ち上がりに韓国に主導権を握られた原因については次のように振り返っている。

「前半は相手が蹴ってきて裏を取られてしまうことが多かったので、ハーフタイムは早めにラインを下げようと話していたのですが、そこでちょっと(中盤が)間延びしてしまって、(あの時間帯は)セカンドボールを拾われていました。その点はもっと試合中に話さなきゃいけないな、と感じました」(船木)

 相手のロングボールに対して早めに下がろうとする最終ラインと、ボールを蹴らせまいとする前線の意図が食い違い、選手間の距離感が開いてしまった可能性は否めない。常にコンパクトな守備を形成するためには、絶え間ないコミュニケーションが必要になる。

 中2日で迎える中国戦に向けてGK田中は、

「無失点はGKとして継続したいですし、試合で出た課題やコミュニケーションの部分はもっと高めていって、味方に安心してもらえるようなプレーを目指していきたいです」

 と話し、表情を引き締めていた。

【グループステージ首位通過をかけて臨む中国戦】

 日本はグループステージ第3戦で中国と対戦する。中国はここまで1勝1敗で、日本に勝たなければグループステージ敗退の可能性もあるため、韓国戦同様、タフな試合になるだろう。映像を見た選手たちは一様に、体格の大きさや、力強さを印象として挙げていた。

 

 日本はここまでの2試合で、高橋と菅野と松田の3名がフル出場しており、韓国戦では終了間際に交代した大澤と伊藤もほぼフル出場に近い。ここから決勝トーナメントを勝ち上がり、決勝まで進めばあと3試合。グループAでは北朝鮮がオーストラリアに5-1で勝っており、グループ1位抜けが濃厚だ。日本は中国戦に勝てばグループ1位通過となり、準決勝ではグループAの2位と対戦する。

 連戦の中で、全員のコンディショニングも含めた準備の質が問われる。

 韓国とのタフな試合を乗り越えてまたひとつ、チームは勝負強さを身につけた。試合を重ねるごとに、チームとしての自信も深まっているようだ。

 そして、オフザピッチの雰囲気の良さもこのチームの特徴だ。キャプテンの高橋は、その雰囲気づくりについてこう明かす。

「全員が意見を言い合えて、(年)下の子が気を遣わないようにしたいと思っています。普段から良いコミュニケーションが取れていれば、それが試合にも出るので、全員でチームワークを保てるように意識しています」(高橋)

 首位通過をかけて臨むグループステージ第3戦の中国戦は、11月3日(日)18時(日本時間)にキックオフとなる。