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4カ月後のU-20女子W杯に向けてヤングなでしこが好感触。安定した組織力と成長した個の力で2連覇へ

松原渓スポーツジャーナリスト
コロナ禍でも成長を感じさせる選手が多かった(写真:keimatsubara)

 2021年1月20日から2月6日にかけてコスタリカ共和国(*)で開催が予定されているU-20女子W杯に向けて、U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)候補が福島県のJヴィレッジで9月13日から17日まで、5日間のトレーニングキャンプを行った。

(参照記事)

U-20女子W杯に向けて高まる一体感。アジア王者として大会2連覇を目指す「ヤングなでしこ」の強みとは

 昨年11月にタイで行われたAFC U-19女子選手権(U-20女子W杯アジア予選)で優勝し、アジア王者として今回のW杯に臨むヤングなでしこは、池田太監督の下で2018年のフランス大会に続く2連覇を目指す。

 合宿時に池田太監督、選手たちに話を聞いた。

監督・選手コメント

池田監督
池田監督

池田太監督

ーーこのチームの目標を改めて教えていただけますか?

U-19を立ち上げた時にチームの目標を4つ、選手たちが決めました。一つ目はもう達成したことですが、AFCU-19女子選手権で優勝してW杯出場権を得ること。2つ目は、U-20W杯で優勝することです。3つ目は、世界に通じる選手、なでしこで活躍する選手になること。4つ目は、応援されるチームになることです。そのために、明るさや礼儀正しさもそうですし、小さい子供たちが女子サッカーをやりたいなと思ってくれるようなチームになること。その4つの目標を確認しました。

ーーコロナ禍で練習自粛などの制限もありましたが、選手たちの変化をどのように感じましたか?

いい意味で、目に見える大きな変化はなかったです。大学生や高校生、社会人としてなでしこリーグでプレーする選手もいます。生活環境が大きく変わった選手もいる中で、コロナ禍の自粛生活にうまく対応して、メンタルも体もキープしてくれていると思います。

話を聞くと、「自粛期間中に自分のことを見つめ直した」という選手もいました。食事を考えて体を絞ったり、実家に戻ってリセットしてきた選手もいます。対応はそれぞれ違いましたけれど、みんな若いので適応力は素晴らしいなと。元気に集まってくれて嬉しく思います。

ーー大会直前の海外遠征などが難しい状況ですが、海外勢と対戦する際のイメージや、気温差への対策はどのような形で働きかけていらっしゃいますか?

海外国との対戦が難しい中で、対戦相手(となりそうな国)のチームの戦術的なところを練習の中でシミュレーションしたり、映像を使って分析するなどトレーニングを工夫して、スタッフも含めてアイデアを捻り出しています。まずは全員が健康で、(日本の)シーズンを終えてくれることが第一ですし、直前キャンプの場所は(新型コロナウイルスの状況によって)限定されてしまうかもしれませんが、暑熱対策や時差対策も含めて情報を仕入れていきます。

ーー練習の中では「準備のスピードと選手同士の距離感」を強調されていましたが、大会までの期間で、選手たちに自主練習でどのようなことを磨いていってもらいたいですか。

一つ一つの(プレーの)強度や、フィジカルコンディションをしっかり上げていくこと。また、各選手の所属チームのサッカーが違っても、準備するスピードや判断のために周りを見ておくことは(サッカーで大切なこととして)共通しているので、「そういう部分を次のキャンプまでにもっと磨いて欲しい」とリクエストしています。

山本柚月
山本柚月

FW 山本柚月(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)

ーーFWとして、このチームではどのようなプレーや役割を意識していますか?

点を取ることが一番重要だと思います。自分の特徴として、ボールに絡んで味方に繋ぐプレーも得意なので、うまく前線でためを作って、自分が得点することと、味方をうまく使って得点に絡んでいきたいです。

ーー今後、目指すチーム像はどのような感じでしょうか。

みんなに応援されるチーム」という目標があるので、それに向かって、明るい雰囲気と、真剣に勝つことにこだわることができるチームになりたいです。

ーーW杯ではどのようなことが楽しみですか? また、大会に向けて伸ばしたい部分を教えて下さい。

アジア大会では個人的に通用した部分が少なく、チームの助けがあっての得点が多かったので、個人でも得点を奪えるような選手になりたいです。アジアと違って、世界はスピードと強さにプラスしてうまさが備わった国が多いと思うので、そこに負けない上手さと、フィジカル面をもっと向上させて、日本の強さをもっとパワーアップさせていきたいです。

ーーメニーナではベレーザの選手と練習する機会もありますが、身近で目標とするFWの選手はいますか?

身近な目標は、ベレーザの植木理子さんです。点をいっぱい取れるところや、特に苦しいゲームで、点が欲しいところで決められる強さに憧れています。

高橋はな
高橋はな

DF 高橋はな(浦和レッズレディース)

ーーU-20W杯が延期になったことで、気持ちをどのように切り替えましたか?

8月に行われる予定だったので、そこに向けてチームも個人としても準備してきましたが、延期になり、自分としては「準備期間が増えた」とプラスに捉えるようにしました。

ーー以前よりもさらに体が強くなったように感じますが、コロナ禍ではどのような過ごし方をしてきましたか?

筋トレはよくやっていました。国内のリーグ戦もそうですし、世界を意識した時にまだフィジカルの強化は必要だと感じていたので、この自粛期間中にそこに取り組む時間は増えましたね。

ーー所属する浦和は現在首位ですが、好調のチームで試合に出る中で、自分自身の変化も感じましたか?

苦しい時に点を取ってくれる菅澤(優衣香)選手がいたり、守ってくれる選手たちを間近で見られることがプラスだなと感じます。練習から本当にいい経験をさせてもらっているなと。普段レベルの高い中でやらせていただけている経験を、U-20でも出していかなければいけないなと強く思っています。

ーー改めてこのチームの魅力を教えてください。

全体のレベルは高いと思うのですが、そこで満足する選手たちではなく、常にチャレンジャー精神を持って練習をして、チームを良くするために、と考えられる選手が多いです。世界大会に向けて、合宿を通してさらに意識を高めていきたいです。

ーー前回のU-20W杯は全試合フル出場で優勝に貢献しましたが、前回の経験も踏まえて、今回のW杯ではどのようなことを試したいとイメージしていますか?

前回大会は自分が(緊張で)ガチガチになっていた状況で周りの先輩やチームメートに助けられたので、今大会では周りの選手を助けられるような存在になっていきたいです。

森田美紗希
森田美紗希

MF 森田美紗希(日体大FIELDS横浜)

ーー久しぶりの合宿ですが、どのようなことを意識して臨んでいますか?

久しぶりにキャンプをさせていただいて、新しい選手も増えた中、自分たちがやってきたことの確認や、U-19からの立ち上げで決めた目標がブレないようにするためにどうするべきかを考えながら取り組んでいます。

ーー高校生から大学生になり環境も変わったと思いますが、メンタル面とプレーで大きな変化はありましたか?

高校時代は3年生で自分が最高学年という立場だったのが、大学生で一番年下の立場になって、なでしこリーグで戦う上で1試合にかけるメンタリティは高校時代から変わりましたし、ポジションがボランチからサイドに変わり、見ることや吸収することがたくさん増えました。大学生や社会人のなでしこリーガーと戦うことで、判断スピードが前よりも上がった気がします。

ーー今度は世界の強豪国が相手になりますが、個人的にはどのようなイメージを持っていますか?

世界では体格の差が大きく出ると思うのですが、そういうところで相手に負けないように、体の使い方や、自分の体の作り方は大事にしていかなければいけないと思っています。日体大には大きい選手もいるので、世界とイメージを重ね合わせて練習するようにしています。

田中桃子
田中桃子

GK 田中桃子(大和シルフィード)

ーー今回の合宿に臨む上で、個人とチームとしてのテーマを教えてください。

チームとしては、目標の再確認や、これまでやってきたことの確認とフィジカルのチェックが主なところで、そこからさらに積み上げていくことは、今までの流れと大きく変わらず継続してやっています。個人的には、久しぶりの活動ですので、まずはチームと代表の活動が続いていく流れを自分の中で確認して、もう一回自分のものにできたらと思っています。

ーーコロナ禍で思うようにサッカーができない中、久々にメンバーに会えたことについてはどうですか?

合宿の日程が決まった時点ですごく嬉しかったですし、みんなとプレーできることを本当に楽しみにしていました。

ーーここまで前試合フル出場中で、チームも好調(なでしこリーグ2部で最少失点)ですが、コーチングも含めて、何か良い変化を感じていますか?

そうですね。去年から継続して出させていただいている中で、周りを動かすコーチングは見える範囲も広がっているなと感じることができています。少しずつ、理想の形に近づいているのかなと思います。元々声が大きい方なので(笑)、余裕を持って周りを見て、伝え方も早いタイミングで伝えることができるようになってきたと感じています。

ーー世界の強豪国と戦うために、取り組んでいることはありますか?

自分のプレーの中で苦手なところが背後の対応です。そこは、(普段のリーグ戦の)試合や練習の中で意識的に、狙いを持って取り組んでいます。

廣澤真穂
廣澤真穂

FW 廣澤真穂(早稲田大学)

ーー6カ月ぶりの合宿でしたが、久しぶりに集まった感触はどうですか? FW陣の中で特に練習で強化したり、心がけていることはあるのでしょうか。

全体のレベルが高いですし、自分が要求するところにボールが出てくるので、連係もとりやすくてすごく楽しいです。2トップの連係のところは以前やったことをもう一度思い出しながら、新たに積み上げている感じがします。

ーー早稲田大学では初年度から活躍しましたが、福田あや監督のtwitterによると、体の向きや点を取るための細かい動きなどにもこだわっているそうですね。コロナ禍ではどのような取り組みをしていたのですか?

コロナの時期でなかなか練習ができなかったのですが、その分、個人の動きとか、ゴールに向かうための体の向きを意識できるようになってきました。最近、(早稲田の)フォーメーションが変わってポジションがウイングになり、最初は混乱した部分もあったのですが、その分、プレーの幅が広がったと思います。

ーー大会前の海外遠征などができないかもしれませんが、本大会に向けて、イメージトレーニングなどはしていますか?

今までの(U-19などの)遠征で、海外のチームと戦った中でスピードとか体の強さとかを体感できました。W杯ではヨーロッパのチームなどはそれ以上の強さがあると思うので、そのことを意識しながら普段の練習をしていきたいなと思います。

ーーU-20女子W杯のアジア予選では途中出場でチームを活気づける活躍が印象的でしたが、W杯本番ではどんな役割を担いたいですか。大会をどのような形で締め括りたいか、目標もお願いします。

結果として点を取ることでチームに貢献したいですし、スタメンでしっかり出て戦いたい気持ちがありますね。優勝を掲げてやってきているので、優勝して、笑顔で帰ってきたいなと思います。

中村恵実
中村恵実

FW 中村恵実(AC長野パルセイロ・レディース)

ーー久しぶりに代表合宿に参加してみた感触と、このチームで求められる役割を教えてください。

昨年2月のU-19の候補の時期に参加していて、自分が怪我をしている間にアジア予選も挟んだので、チームのコンセプトがなかなか理解できていない部分が多かったのですが、この合宿を通じて確認することができました。まずはしっかり前で収めて攻撃の起点になることが求められていることなのではないかな、と思います。

ーー今シーズンは所属する長野で全試合先発で得点もコンスタントに決めていますが、自信もついてきたのではないでしょうか。フィジカル面は魅力だと思いますが、さらに強化したい部分はありますか?

そうですね。試合を重ねるたびに、少しずつできることが多くなってきたので、こうして選んでもらった時に自分の力を発揮できたらいいなと思っています。FWはスプリントの速さとか緩急が大事になってくると思うので、その部分を高めていって、世界でも戦える選手になりたいです。

ーーなでしこジャパンやなでしこリーグで、参考にしているFWの選手はいますか?

田中美南選手です。裏の抜け出しをチームの佐野佑樹監督からも良く求められているので、試合前は田中選手のオフザボールの動きや裏への抜け出しの動きなどをよく見て、学んでいます。

ーーW杯に出るチャンスがある中で、出たらどんなことをチャレンジしたいですか。

自分自身、まだ世界の選手と戦ったことがないのですが、海外のスピード感とかフィジカル、戦い方にすごく興味があるし、その中でどれだけやっていけるかをチャレンジしてみたいですね。

練習は活気が溢れていた(左からDF松原優菜、DF富岡千宙、DF長江伊吹、DF船木和夏)
練習は活気が溢れていた(左からDF松原優菜、DF富岡千宙、DF長江伊吹、DF船木和夏)

(写真はすべて筆者撮影)

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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