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森保J敗退で週刊新潮が再燃 注目される伊東純也選手の主張と考えられる反論は?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 サッカーアジアカップで森保ジャパンが敗退し、SNSでは伊東純也選手の性加害疑惑を報じた週刊新潮が再燃している。最悪のタイミングで伊東選手が抜け、チームの士気が下がったことが敗因の一端だというものだ。伊東選手はすでに女性を虚偽告訴罪で逆に告訴しており、今後、この女性を相手に億単位の損害賠償請求訴訟を提起するという。そこで注目されるのが、伊東選手の主張と反論だ。

実は「1対2」ではなく「2対2」の事件だった

 新潮が報じた女性側の主張については、次の拙稿で詳しく取り上げている。

 すなわち、女性側の主張では、ホテルの部屋には女性A、女性B、伊東選手、その専属トレーナーYの4人がいた。Aはベッドで意識が混濁している間、伊東選手から性被害を受けたという。また、Bもその隣のベッドでやはり意識が混濁している間、Yから性被害を受け、それが原因でPTSDに罹患したという話だった。

 新潮が雑誌の発売前日にネットの「デイリー新潮」で報じた要約記事ではYの存在が明らかになっていなかったため、これを読んで伊東選手が1人で女性2人を相手にした事件だと思い込んでいる人も多いだろう。実際には「2対2」の事件、より厳密に言うと同じ部屋での「1対1」×2のケースだったということになる。

伊東選手の主張は?

 そうすると、伊東選手とYの主張が重要となる。この点につき、新潮の記事によると、双方の代理人弁護士を介した示談交渉の過程で、トレーナーYはBに対する性的行為そのものを否定していたものの、伊東選手のほうはAに対する性的行為を認め、Aの同意の有無について争う姿勢を示していたという。

 しかし、伊東選手の代理人としてAを虚偽告訴罪で告訴した弁護士は、告訴に際し、次のように述べている。

・事実無根であり、全くのでっち上げ
・同意があったとかなかったとかの話ではない
・女性が服も脱いでいない、そういった客観的証拠をこちらは持っている
・性被害に遭ったと主張している時間の動画が残っている
・その後も、性被害と矛盾するような、女性が女性の側から積極的にいこうとしたと自白しているLINEのやり取りがある

 すなわち、伊東選手の主張は、ホテルでAやBと会ったが、性的行為そのものを真っ向から否定するというものだ。こうなると、そもそも新潮の記事に記載されていた示談交渉自体が存在したのか、また、存在したとして関係者の間で具体的にどのようなやり取りがあったのかについても争点になる。

考えられる伊東選手の反論は?

 そこで、伊東選手から性加害を否定する方向で示されるであろう反論として、次のようなものが考えられる。

(a) Aらはすぐに警察に届け出ておらず、たとえ伊東選手側に謝罪を求めたという話が事実だとしても被害から3ヶ月後、示談交渉も被害から5ヶ月後、告訴に至っては被害から7ヶ月後である
(b) Aは事後に伊東選手にLINEで「おつかれさま」を意味するスタンプを送り、Bも「また飲みましょう」というメッセージを送っている
(c) 真に伊東選手の処罰を求めるというのであれば、警察の捜査に委ねればよく、新潮に情報を提供したり、その取材に応じたりする必要などない

 (a)の点は、性被害者が被害を訴え出ること自体、相当のためらいや葛藤を感じるもので、精神的に落ち着くまで時間を要するのが通常だから、必ずしもAらにとって大きなマイナスとなる話ではない。むしろ、この種の事案の中では、告訴に至るまでの期間は短い方だ。

 一方、(b)は、新潮ですらも記事の中でAらの主張に不利に働きそうな事情として挙げている点である。性被害者によくみられる恐怖や不安からの「迎合反応」だと主張するケースが多いが、Aは好き好んでLINEを送ったわけではなく、トレーナーYから伊東選手との連絡先の交換を強いられ、伊東選手にメッセージを送らされただけだと述べている。再反論としては弱い。

 (c)のマスコミに対する情報提供の点も、捜査当局が最も嫌う話にほかならない。警察を信頼していないのかということになるし、話がオープンになってしまうと、証拠隠滅や口裏合わせに走られる危険性も高まるからだ。警察のペースで捜査を進め、特に強制捜査に及ぶような事件だとギリギリまで情報の統制を行いたいのに、告訴をした当人がマスコミまで巻き込んでしまえば、警察の思わくどおりの捜査を行えなくなる。

 Aらは、いつの段階で何がきっかけで性被害を受けたと気づいたのか、新潮への情報提供と警察への告訴はどちらが先だったのか、新潮の取材に応じた理由はなんだったのか、警察から納得できる説明を求められるだろう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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