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ノート(141) 弁護人による被告人質問の内容とその狙い(下)

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

~裁判編(15)

勾留177日目(続)

注目される供述

 傍聴席で被告人質問を聞いている記者にとって、関心事の一つは犯人隠避事件に関する供述内容だった。というのも、大坪さんや佐賀さんが容疑を全面的に否認しており、来たる彼らの裁判では、僕の証言次第で有罪・無罪が決せられるはずだったからだ。

 先行する僕自身の裁判で僕がどのような話をするのかにより、その後の展開に関してある程度の見通しを立てることができる。しかも、僕の弁護団は、公判前整理手続の中で検察側が提示した証明予定事実のうち3分の1に異議を唱え、削除させていた。

 まさしく、大坪さんらによる隠ぺい状況に関する部分であり、検察側は起訴事実を争わない僕の裁判を利用し、大坪さんらの有罪を社会に印象づけようとしていたわけだ。

 そればかりか、僕の弁護団は、國井君や塚部さん、白井君、林谷君、玉井さん、小林さんら検察関係者の供述調書のうち、その点に関する部分をすべて「不同意」にしていた。

改ざんの隠ぺい

 ただ、改ざんが内部的に発覚したあと、上司に伝えたものの、過誤だとすり替えて説明するようにと指示され、これに従うほかなかったという限度では、被告人質問の中でその状況を語る必要があった。

 やり取りは一問一答の形式で行われたが、整理すると、おおむね次のような内容だった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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