コカ・コーラの下請で「休業補償10割」 スト通告と国の「政策決定」が後押し

写真はイメージです。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

 コーラ系自販機会社で休業補償10割の支払いがきまった。

 同社では、個人加盟労働組合の自販機産業ユニオンが、コカ・コーラ系列の飲料自販機オペレーター会社のシグマベンディングサービス株式会社とシグマロジスティクス株式会社に対し、休業補償10割を求めてストライキ通告をしており、労組がストライキ通告をして2週間ほどで、会社側が「休業補償10割」を決定したことになる。「休業補償10割」が実現した背景について紹介していこう。

【参考】コロナ休業補償巡りストの構え 労組、低賃金にかねて不満

休業補償10割を求めるストライキ通告の経緯

 3月頃から、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う外出自粛の影響で、シグマベンディングサービス株式会社やシグマロジスティクス株式会社(以下、シグマグループという)の飲料自販機の売り上げは大きく減少していた。

 こうした情勢を踏まえて、自販機産業ユニオンは休業が実施されることを予見し、シグマグループを含めた自販機業界各社に対して、休業補償10割を求める要請書を出していた。 

 これに対しシグマグループは、5月と6月については、月に5日間は休業とすることを通知したという。シグマグループ側の説明によれば、休業補償の金額は、「国の助成金を最大限活用して、原則全額充当することにより、当面固定残業代も含めた1日あたりの賃金の8割」というものだった。

 8割の休業補償は、労基法が義務づける6割の水準を上回っている。しかし、自販機産業ユニオンの組合員によれば、シグマグループの従業員の賃金水準は、時給換算すると最低賃金を下回ることもある低水準のため、休日出勤分の手当等が支払われないと生活が成り立たないという。

 実際に、これまでは、シグマグループでは月に100時間超えの長時間残業が生じており、月3日の休日出勤が常態化していた。

【参考】コカ・コーラ下請会社で最大月200時間の残業で、労基署から是正勧告

 このように、労働者の生活の苦境を背景として、5月8日、自販機産業ユニオンは、シグマグループに対して、休業補償を10割支払うよう要求し、翌週の5月11日には、「賃金支払予定日(6月15日)までに10割補償を約束しない場合には、ストライキを行う」と通告していたのである。

会社側が急激に姿勢を変化させた要因

 今回の労使合意に至るまでには、紆余曲折があった。シグマグループは、自販機産業ユニオンの要求書やストライキ通告書に対して、まったく回答をしていなかったという。そのため、この間、労働組合側は、会社側の姿勢について強く抗議をしていた。

 そうした矢先、突然、昨日、会社側から同社の従業員や労働組合側に対して、休業補償を10割支払うことにしたと通知があったということだ。会社側が急激に態度を変えた背景には、組合のストライキに加え、国の政策の整備が大きく影響していた。

 ストライキの通告はすでに述べたような従業員の生活の深刻な状況を、会社に突きつける形となっていた。それに加えて、後述する国による雇用調整助成金制度の拡充の決定が、会社側の方針転換を決定づけた。シグマグループは、労働組合側に対して、「政府が5月27日閣議決定で雇用調整助成金の上限額拡充を決定したこと」を方針転換の理由として説明している。

 国の対策が進む中で、労働者側が求める「10割補償」をあえて拒否する理由がなくなってきたということだろう。

雇用主が休業補償10割を支払う条件は整備された

 雇用調整助成金制度は、企業の売上減少等に伴って、雇用している従業員を解雇せず休業させて休業補償を支払った場合に、国がその一定割合の金額を助成する仕組みだ。

 この間、新型コロナウイルス感染症の流行をうけて、国は雇用調整助成金制度の特例措置が段階的に設けてきた。4月中には、中小企業については、雇用主が従業員に対して支払った休業補償額の100%(日額上限あり)を国が助成すると周知されていた。

 また、5月27日の閣議決定で、雇用調整助成金の日額上限が大幅に引き上げられ、これまでは日額8330円と定められていた上限額が15000円へと改訂された。これにより、中小企業で働く月収30万円程度の労働者については、原則として企業負担無しで、休業補償を10割支払うことが可能となった。

 つまり、雇用主は、多くの労働者について、企業負担無しで休業補償10割を支払うことができるようになったのだ。さらに、この間は、申請の手続きも相当簡素化されている。その結果、1~2ヶ月分の賃金支払のための資金繰りに悩む零細事業主を除けば、ほとんど企業側の負担無しで、休業補償を全額支払うことができるようになった。このように、企業側が休業補償を全額支払わない理由がほとんど無くなっていた。

「休業補償10割」を当たり前にしていくべき

 国は、企業が従業員に対して休業補償を全額支払うための支援スキームをようやく構築した。正直、あまりに遅い決定だが、この決定自体は歓迎すべきことであろう。「つなぎ資金」の問題を除けば、雇用主が休業補償を全額支払わない合理的な理由は無くなっている。

【参考】「使える制度」がようやく実現? 第2次補正予算案の「支援策」を読み解く

 

 そのため、労働者側が企業側に対して、「休業補償10割」の支払いを求める合理性が非常に高まっている。今回のケースはこうした状況の変化を明瞭に映し出している。

 今回紹介したシグマグループの従業員に限らず、いま多くの労働者が最低賃金と同等の賃金水準で働いている。休業中の補償がその6割や8割の水準であれば、多くの労働者が生活の危機にさらされてしまう。

 休業補償が支払われなくて困っている方や、その補償額が少なくて困っている方は、休業補償の全額支払を請求する方向で検討してみてほしい。

(なお、下記の日程で弁護士や労働組による労働相談のホットラインも実施される予定である。ぜひ活用して欲しい)。

「休業補償・解雇・倒産電話相談ホットライン」

日時:5月31日(日)10時~20時、6月1日(月)15時~21時

代表電話番号:0120-333-774(相談無料・通話無料・秘密厳守)

主催:生存のためのコロナ対策ネットワーク

参加団体:さっぽろ青年ユニオン/仙台けやきユニオン/みやぎ青年ユニオン/日本労働評議会/首都圏青年ユニオン/全国一般東京東部労働組合/東ゼン労組/総合サポートユニオン/首都圏学生ユニオン/ブラックバイトユニオン/NPO法人POSSE外国人労働サポートセンター/名古屋ふれあいユニオン/大阪全労協/連合福岡ユニオン/反貧困ネットワーク埼玉/外国人労働者弁護団など

常設の無料労働相談窓口

NPO法人POSSE 

03-6699-9359

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*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。

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*個別の労働事件に対応している労働組合。労働組合法上の権利を用いることで紛争解決に当たっています。

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*仙台圏の労働問題に取り組んでいる個人加盟労働組合です。

ブラック企業被害対策弁護団 

03-3288-0112

*「労働側」の専門的弁護士の団体です。

ブラック企業対策仙台弁護団 

022-263-3191

*仙台圏で活動する「労働側」の専門的弁護士の団体です。