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カンプノウで屈辱の4失点。バルセロナ対レアル・マドリー、勝負の分かれ目

木村浩嗣在スペイン・ジャーナリスト
ハットトリックを決めたベンゼマ(写真:ロイター/アフロ)

コパ・デルレイの準決勝第2レグはレアル・マドリーが0-4で勝ち上がった。クラシコ3連勝中で、圧倒的有利だったバルセロナに何が起こったのか?

勝負の分かれ目は3つあった。重要な方から説明していく。

1:目立たない、しかし重大な1点目でのミス

45分、レバンドフスキのこの夜唯一の鋭いシュートをクルトワが止め、その流れからカウンターに出たレアル・マドリーが先制する。

バルベルデが苦し紛れに前へ送ったボールを下がって来たロドリゴが拾って、跳び込んで来たマルコス・アロンソを軽くかわす。

1点目。ゴール正面でビニシウスはフリーになっている。なぜ?
1点目。ゴール正面でビニシウスはフリーになっている。なぜ?写真:ロイター/アフロ

このアロンソの判断ミスが失点の最大の原因であり、その後の展開を考えると、バルセロナの敗退の最大の原因であるとも言える。

かわされた瞬間にレアル・マドリーのアタッカーは3人(ベンゼマ、ビニシウス、ロドリゴ)で、バルセロナのDFは2人(クンデ、アラウホ)になった。

アロンソは飛び込みを自重するべきだった。

「ウェイティング+リトリート」が正しい。すでにロドリゴは前を向いていたし、かわされたら数的不利になるのだから。で、ファウルでロドリゴを止めるべきだった。

往年の名プレーヤー、シャビ・アロンソが言っていた。

守備的MFとして一番重要なのは「目の前に何人いて背後に何人いるのかを常に数えておくことだ」と。数的有利なら相手ボールにアタックする。不利ならアタックしない。同数なら状況による。

今のガビは本来の技術ではなく、ハードワークだけが目立つ
今のガビは本来の技術ではなく、ハードワークだけが目立つ写真:ロイター/アフロ

続くプレー。

ロドリゴからのパスを拾ったビニシウスが前進、ベンゼマが右に、左にロドリゴが開く。ビニシウスにはアラウホが対応し、ベンゼマにはクンデが対応し、ロドリゴには戻って来たアロンソが対応していた。

ビニシウスはベンゼマへパスを出す。

対アラウホはビニシウスの圧勝だった
対アラウホはビニシウスの圧勝だった写真:ロイター/アフロ

この時のアラウホの対応が二つ目の大きなミスだった。アラウホはベンゼマを抑えに行き、ビニシウスへのマークを外したのだ。ビニシウスはフリーになりリターンをもらって難なくネットを揺らす。

二重の判断ミスである。

ゴール正面にいるビニシウスの方が、角度のない右にいてクンデがマークしているベンゼマよりも危険なのは明らか。なのに、アラウホはビニシウスをフリーにする方を選んだ。

この先制点以外に、2失点目ではセルジ・ロベルトがモドリッチのドリブルをファウルで止められるのに止めなかった。3失点目では侵入を諦めていて危険の無いビニシウスの足をケシエが踏んでPKを与えた。

2:逆境での弱さはシャビの性格のせい?

失点するとガタガタと崩れる癖がバルセロナにあることは、欧州のバルセロナはなぜ弱く見えるのか?(マンチェスター・ユナイテッド戦分析)で指摘した。この記事の後、マンチェスター・ユナイテッド戦の第2レグでは先制しながら失点すると一気に崩れて逆転されている。

CLバイエルン戦第1レグ、CLインテル戦第2レグ、ELマンチェスター・ユナイテッド戦第2レグ、そして昨夜と、先制または優勢に試合を進めながら、失点すると崩壊してしまうのは、これで今季4度目である。

これだけ続くと偶然ではない。

ベンチにいると人が変わる? この日もイエローをもらったシャビ
ベンチにいると人が変わる? この日もイエローをもらったシャビ写真:ロイター/アフロ

浮足立つチームを落ち着かせられないのは、もしかするとシャビの性格のせいかもしれない。

ベンチにいると人が変わる監督はいる(恥ずかしながら私もそうだった)。

選手シャビは温厚で冷静だったが、監督シャビは真逆に見える。カッとすると黙っていられないようで、昨夜もイエローをもらっていた。

2月には監督としては極めて珍しい、累積警告で出場停止を喰らってもいる。

ナーバスな監督だからナーバスなチームができてしまう、チームのナーバスさを制御できない、というのはあるかもしれない。叱責し過ぎてしまう、とか。

昨夜は失点後にハーフタイムをはさんでいたし、第1レグとの通算でイーブンになっただけだったし、ホームゲームだったのに、立て直せなかった。

問題の深刻さがわかる。

頭に血が上っていたビニシウスを即交代。さすがアンチェロッティ
頭に血が上っていたビニシウスを即交代。さすがアンチェロッティ写真:ロイター/アフロ

3:アンチェロッティ采配の奥の深さ

相手に立て直す暇を与えなかったアンチェロッティ采配も見事だった。49分に2点目、58分に3点目と畳み掛けて、あっという間に試合を決めてしまった。

アンチェロッティは前半と後半でプランを変えてきた。前半は引いてプレスも受け身でロングカウンター狙い、後半は180度変え、前へ出てプレスもアグレッシブでショートカウンター狙い。

これ、普通逆でしょ?

まず点を取りに行き、通算で同点に追いつく必要があったのが前半。なのに、受け身なプランだった。先制して通算で同点に追いついて、じっくり止めを刺すのが後半。なのに、積極的なプランに変えた。

みなさんどう思います?

後半のプレスを主導したモドリッチ。守備に戻り切れずピンチを招く危険もあったが
後半のプレスを主導したモドリッチ。守備に戻り切れずピンチを招く危険もあったが写真:ロイター/アフロ

あと、1-3になってロドリゴを下げた。安全に試合を終わらせることが最優先に見えた状況だった。MFのチュアメニかセバージョスを入れるか、DFのナチョを入れて左SBにしてカマビンガを中盤へ移すか。いずれもFWを1枚減らしてMFを1枚増やす、というのがセオリーだと思うが、みなさんどう思います?

だが、アンチェロッティはFWのアセンシオを入れ、4点目を取りにいった。「攻撃は最大の防御なり」ということだ。

誰だ? アンチェロッティは守備的な監督だ、と言ったのは?

こういう普通じゃない采配を成功させるところが、偉大なところだ。

4点差がつくとものが投げ入れられた
4点差がつくとものが投げ入れられた写真:ロイター/アフロ

ところで、シャビの采配を批判する論調もあるが、悪かったとは思わない。

最初の失点さえなければ、前半は完全なバルセロナペースで終わっていたはずで、1点リードで試合に臨んだチームの入り方としては正しかったと思う。

シャビには手駒が無かった。クリステンセン、デ・ヨング、ペドリ、デンベレが負傷中。対して、アンチェロッティの方の欠場者はメンディだけ。

チームを精神的に立て直せなかった点は責められるべきだが、交代策について責めては可哀想だ。

以上。リーガではバルセロナが独走しており優勝確実だが、この日の歴史的なスコアとレアル・マドリーに2冠(CLとコパ・デルレイ)の可能性が出てきたことで、両者の力関係も、シーズンの印象も、ずい分変わりそうだ。

在スペイン・ジャーナリスト

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟のコーチライセンスを取得し少年チームを指導。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペイン・セビージャに拠点を移し特派員兼編集長に。15年7月編集長を辞しスペインサッカーを追いつつ、セビージャ市王者となった少年チームを率いる。サラマンカ大学映像コミュニケーション学部に聴講生として5年間在籍。趣味は映画(スペイン映画数百本鑑賞済み)、踊り(セビジャーナス)、おしゃべり、料理を通して人と深くつき合うこと。スペインのシッチェス映画祭とサン・セバスティアン映画祭を毎年取材

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