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「ラブライブ!」初の混合ユニットライブ スクールアイドルの甲子園が横浜で開幕!

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
ユニット甲子園で5年4ヶ月ぶりの結成となったSaint Aqours Snow

 学校や地域を舞台に、スクールアイドルの活躍を描いた「ラブライブ!」シリーズ。これまでにアニメやゲーム、ミュージカルなど6作品が展開されており、このうち初代の「ラブライブ!」を除く5作品が毎年音楽ライブや公演などを積極的に実施しています。

1日目の選手宣誓を務めた蓮ノ空女学院、みらくらぱーく!の「ド!ド!ド!」
1日目の選手宣誓を務めた蓮ノ空女学院、みらくらぱーく!の「ド!ド!ド!」

 「ラブライブ!」作品の垣根を越え、このうち4作品に登場するユニットが出演する合同ライブイベント「LoveLive! Series Presents ユニット甲子園 2024」が3月9日(土)と10日(日)に横浜市のKアリーナ横浜で開かれました。「ラブライブ!」シリーズが作品を横断したライブを実施するのは、2021年12月31日から22年1月1日にかけて行われたカウントダウンライブ以来2年3ヶ月ぶりになります。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、A・ZU・NAの「Dream Land!Dream World!」
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、A・ZU・NAの「Dream Land!Dream World!」

 「甲子園」と名付けられているように、スクールアイドル達が所属する学校別の対抗戦になっていることが特徴です。作中のライバル校も含む6校が対抗して競う形で、全作品の「ラブライバー」とも言える2万人の観客が世界中から集まりました。

各地の魅力を届けるスクールアイドル

函館を代表するスクールアイドル、Saint Snowの「Dazzling White Town」。背景に映っているのは、作中の舞台にもなっている函館の重要文化財「旧函館区公会堂」
函館を代表するスクールアイドル、Saint Snowの「Dazzling White Town」。背景に映っているのは、作中の舞台にもなっている函館の重要文化財「旧函館区公会堂」

 一方で「甲子園」というと、各学校が地域を代表する性質もあります。ユニット甲子園でもその側面は大きくあります。シリーズ第2作の『ラブライブ!サンシャイン!!』の主人公達のグループ「Aqours(アクア)」がいる「浦の星女学院」は静岡県沼津市を代表して参加しているほか、同作のライバルグループ「Saint Snow」がいる「函館聖泉女子高等学院」も函館を代表して出場しています。

神津島を代表するスクールアイドル、Sunny Passionの「HOT PASSION!!」。実際に神津島でも様々なコラボイベントが展開されている
神津島を代表するスクールアイドル、Sunny Passionの「HOT PASSION!!」。実際に神津島でも様々なコラボイベントが展開されている

 東京からは、3校出場しています。3作目の『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の「虹ヶ咲学園」は東京の有明とお台場地域を代表していますし、4作目の『ラブライブ!スーパースター!!』の主人公達のグループ「Liella!(リエラ)」がいる「結が丘女子高等学校」は同じく東京の渋谷地域を代表しています。同作のライバルグループ「Sunny Passion」がいる「神津女子高等学校」は東京の神津島を代表しています。そして5作目の『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の「蓮ノ空女学院」は金沢市にあり、石川県を代表して参加した形になります。

金沢を代表する蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ。現在進行形で様々なコラボイベントが金沢で進んでいる。写真の楽曲は「DEEPNESS」
金沢を代表する蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ。現在進行形で様々なコラボイベントが金沢で進んでいる。写真の楽曲は「DEEPNESS」

 いずれも物語世界中の設定だけでなく、舞台地とリアルに連携してさまざまな取り組みをこれまで展開してきています。スクールアイドルは地方創生にも一役買っており、文字通り各地を代表しているのも特徴です。MC中でも、スクールアイドル達が“地元”の魅力に触れる場面もありました。

イニング形式のユニットライブ

Liella!の1ユニット、CatChu!(キャッチュ)の「オルタネイト」
Liella!の1ユニット、CatChu!(キャッチュ)の「オルタネイト」

 ユニット甲子園に出場するアイドルは、「ユニット」という単位が原則となっています。ユニットというのは各学校のスクールアイドル全員が参加する「グループ」を細分化したものです。

Liella!の1ユニット、KALEIDOSCORE(カレイドスコア)の「不可視なブルー」
Liella!の1ユニット、KALEIDOSCORE(カレイドスコア)の「不可視なブルー」

 そしてユニット甲子園は、野球のイニング(回)形式で行われました。例えば1回表が蓮ノ空女学院の「みらくらぱーく!」、1回裏が虹ヶ咲学園の「A・ZU・NA(アズナ)」といった感じです。各ユニットは2曲ずつ披露する形です。

「Awaken the power」のMVロケ地となった函館市の八幡坂(筆者撮影)
「Awaken the power」のMVロケ地となった函館市の八幡坂(筆者撮影)

 こういった形で9回裏まで18のユニットが対抗形式で行われるわけですが、ユニット甲子園の参加ユニット数は6校16ユニットしかありません。そのため、7回はシークレット枠として、特別ステージの扱いとなりました。

Liella!の1ユニット、5yncri5e!(シンクライズ)の「A Little Love」
Liella!の1ユニット、5yncri5e!(シンクライズ)の「A Little Love」

 このシークレット枠では、2日目7回裏に披露された「Awaken the power」が特に大盛況となりました。この曲はAqoursとSaint Snowの合同グループ「Saint Aqours Snow」の曲で、前回の合同メンバーでの披露は18年11月に東京ドームで開かれた「Aqours 4thライブ」までさかのぼります。5年4ヶ月ぶりのSaint Aqours Snowの姿に会場は大盛り上がりとなりました。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、DiverDivaの「SUPER NOVA」
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、DiverDivaの「SUPER NOVA」

 アンコールは「延長戦」として11回まで行い、表と裏で1曲ずつ、計4曲が披露されました。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、R3BIRTH(リバース)の「MONSTER GIRLS」
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、R3BIRTH(リバース)の「MONSTER GIRLS」

 どの回にどのユニットの出番になるかは、1日目の公演は事前の組み合わせ抽選会で公表されていましたが、2日目公演は非公表という形で進められました。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、QU4RTZ(クォーツ)の「Sing & Smile!!」
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1ユニット、QU4RTZ(クォーツ)の「Sing & Smile!!」

 現実の甲子園要素も取り入れており、実況はNHKで40年以上スポーツ放送を担当した藤井康生アナウンサーが担当しました。また、開会時にはプラカードを掲げた入場行進と選手宣誓もあり、その演奏は大阪桐蔭高校吹奏楽部が務めました。

シリーズ初の混合ユニット曲が披露

アンコールではシリーズ初の学校を超えた混成ユニットが披露された。写真は1日目11回裏の虹ヶ咲の「全速ドリーマー」
アンコールではシリーズ初の学校を超えた混成ユニットが披露された。写真は1日目11回裏の虹ヶ咲の「全速ドリーマー」

 「ラブライブ!」シリーズがこれまで作品を超えた単独ライブは過去2回ありました。1回目が20年1月の「ラブライブ!フェス」、そして2回目が先述のカウントダウンライブになります。

2日目10回裏に披露されたLiella!の「ノンフィクション!!」
2日目10回裏に披露されたLiella!の「ノンフィクション!!」

 しかし「ラブライブ!フェス」では他校のスクールアイドルが同時にステージに立つことはなく、3作品のスクールアイドルの演奏が順次披露されるだけのライブでした。21年末のカウントダウンライブでは、「LIVE with a smile!」というシリーズ横断の楽曲が完成したことで、初めて違う作品のスクールアイドルが同時にステージに立てる形になりました。

2日目11回裏に披露された蓮ノ空の「夏めきペイン」
2日目11回裏に披露された蓮ノ空の「夏めきペイン」

 となると、残るファンの期待としては、異なる作品のスクールアイドルが混ざって、ある作品の曲を歌う展開です。ユニット甲子園ではこうした期待に応え、アンコールでは、Aqoursの楽曲に虹ヶ咲やLiella!や蓮ノ空などのメンバーが合流して歌ったり、虹ヶ咲やLiella!や蓮ノ空の楽曲も同様に歌ったりする展開がありました。

1日目10回表に披露されたAqoursの「待ってて愛のうた」
1日目10回表に披露されたAqoursの「待ってて愛のうた」

 こうしたある特定の楽曲を他校のメンバー同士で組み合わせることは、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』や『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』といったゲームの中でしかできないことでした。

2日目10回表に披露された虹ヶ咲の「Colorful Dreams! Colorful Smiles!」
2日目10回表に披露された虹ヶ咲の「Colorful Dreams! Colorful Smiles!」

 同様のステージは23年12月に東京ドームで開催した「異次元フェス」でもありましたが、この時は『アイドルマスター』のアイドルとも混成でした。「ラブライブ!」シリーズ単独としては初であり、まさにファン待望のライブだったとも言えるでしょう。

ユニット甲子園の両日とも、最後にシリーズ横断曲である「LIVE with a smile!」が全16ユニット約40人で歌われた
ユニット甲子園の両日とも、最後にシリーズ横断曲である「LIVE with a smile!」が全16ユニット約40人で歌われた

 ユニット甲子園の両日とも、最後の曲は前回同様「LIVE with a smile!」を全参加者が歌って締めくくられました。この曲を蓮ノ空やSaint Snow、Sunny Passionのメンバーが歌うのは初となります。今後のシリーズ横断展開にも期待できる終わり方だったとも言えます。

Kアリーナならではの楽しみ方

Kアリーナ横浜のライブ会場全景
Kアリーナ横浜のライブ会場全景

 ユニット甲子園の会場となったKアリーナ横浜の7階には、「Arena Bar 7」というバーラウンジが併設されています。このバーラウンジでは終演後、そのライブに関する楽曲を流せるため、ファンが「アニソンクラブ」のように集まれる場所にもなっています。

ユニット甲子園では音楽ライブでは異例の放送席も設けられた。奥が実況の藤井康生アナ、真ん中が解説・高咲侑役の矢野妃菜喜、手前が場内アナウンスの樋田かおりアナ
ユニット甲子園では音楽ライブでは異例の放送席も設けられた。奥が実況の藤井康生アナ、真ん中が解説・高咲侑役の矢野妃菜喜、手前が場内アナウンスの樋田かおりアナ

 「ラブライブ!」シリーズでKアリーナが会場になるのは今回が2回目ですが、終演後に一部のファンが集まり、改めて楽曲を楽しめる空間にもなっています。このラウンジは終演後であればライブ参加者でなくとも利用できるため、チケットを入手できなかった人でも楽しめる場になっています。

終演後、Kアリーナのバーラウンジでは「Snow halation」で盛り上がる場面もあった(筆者撮影)
終演後、Kアリーナのバーラウンジでは「Snow halation」で盛り上がる場面もあった(筆者撮影)

 ユニット甲子園の終演後では、シリーズ横断ライブというのもあり、ある1作品にこだわらない曲が流れました。22時過ぎには閉会の流れになるため、蛍の光の代わりに「ラブライブ!」シリーズを代表する曲である「Snow halation」が流れました。その際、その場の全員がオレンジのケミカルライトを掲げる光景があり、ファンであるラブライバーの一体感を味わえる瞬間でもあります。

7階以外にもラウンジが併設されており、ライブの前後に飲食できるのもKアリーナの特徴だ(筆者撮影)
7階以外にもラウンジが併設されており、ライブの前後に飲食できるのもKアリーナの特徴だ(筆者撮影)

 次回のKアリーナの「ラブライブ!」の公演は、8月3日、4日の『ラブライブ!スーパースター!!』のユニットライブが予定されています。この時にも閉会時に「Snow halation」が流れることになれば、ファンの一つの文化として定着しつつあるのかもしれません。

「LoveLive! Series Presents ユニット甲子園 2024」イベントロゴ
「LoveLive! Series Presents ユニット甲子園 2024」イベントロゴ

 「ラブライブ!」シリーズの場合、どれか一つの作品だけを追っているファンは入りたての少数派であり、複数作品を視聴しているのが一般的です。そのため、ユニット甲子園のようなシリーズ横断ライブへの期待は高いものがあります。運営側、ファン側双方で新しい「ラブライブ!」の形が生まれていくのかもしれません。今後の展開にも期待したいところです。

「LoveLive! Series Presents ユニット甲子園 2024」キービジュアル
「LoveLive! Series Presents ユニット甲子園 2024」キービジュアル

(クレジットのない写真・画像は全てバンダイナムコフィルムワークス提供)

©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

©2022 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

©2022 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

©プロジェクトラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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