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『ラブライブ!』μ's初のオケコン 東京フィルとオレンジに彩った「Snow halation」

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
μ'sの歌唱付きで演奏された『ラブライブ!』1期OP主題歌「僕らは今のなかで」

 「ラブライブ!」シリーズの原点となったスクールアイドルグループ「μ’s(ミューズ)」。初めてのオーケストラコンサート「TVアニメ放送10周年記念 LoveLive! Orchestra Concert」が、3月30日(土)と31日(日)に横浜市のパシフィコ横浜にある国立大ホールで開かれました。

(写真左から)指揮を務めた栗田博文さん、飯田里穂さん、Pileさん、三森すずこさん、新田恵海さん、内田彩さん、楠田亜衣奈さん、東京フィルコンサートマスターの依田真宣さん
(写真左から)指揮を務めた栗田博文さん、飯田里穂さん、Pileさん、三森すずこさん、新田恵海さん、内田彩さん、楠田亜衣奈さん、東京フィルコンサートマスターの依田真宣さん

 『ラブライブ!』のTVアニメ放送10周年を記念して開かれたイベントで、歌唱付きのものも含め、アニメ中の楽曲58曲が披露されました。演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。ゲスト歌唱として、μ'sのメンバーから高坂穂乃果役の新田恵海さん、南ことり役の内田彩さん、西木野真姫役のPileさん、園田海未役の三森すずこさん、星空凛役の飯田里穂さん、東條希役の楠田亜衣奈さんの6人が出演しました。

シリーズ初のオーケストラコンサート

『ラブライブ!』1期第1話冒頭でも流れる「ススメ→トゥモロウ」
『ラブライブ!』1期第1話冒頭でも流れる「ススメ→トゥモロウ」

 これまでの「ラブライブ!」シリーズでは、オーケストラも随伴した音楽ライブや、アコースティック楽器を使用したライブは展開されてきました。ところが今回のようにオーケストラ交響楽団が中心となった「コンサート」は初めての取り組みになります。

「Private Wars / 絶望」。「(絶望)」は主人公の穂乃果が自分達の高校が廃校になることを知る場面などで使用されている
「Private Wars / 絶望」。「(絶望)」は主人公の穂乃果が自分達の高校が廃校になることを知る場面などで使用されている

 コンサートはTVアニメ中で使用された劇伴曲(BGM)が中心で、2013年1月から3月にかけて放送されたTVアニメ1期と、14年4月から6月にかけて放送されたTVアニメ2期の楽曲が披露されました。

『ラブライブ!』1期第1話で流れる「幼き日の夕陽」。主人公の穂乃果が廃校を救う手段を「スクールアイドル」に決めた重要な場面だ
『ラブライブ!』1期第1話で流れる「幼き日の夕陽」。主人公の穂乃果が廃校を救う手段を「スクールアイドル」に決めた重要な場面だ

 ゲスト歌唱を担当したμ'sとの共演は、1期オープニング主題歌の「僕らは今のなかで」とエンディング主題歌の「きっと青春が聞こえる」。2期オープニング主題歌の「それは僕たちの奇跡」とエンディング主題歌の「どんなときもずっと」、そしてアンコール曲の5曲が歌唱付きで演奏されました。

 コンサートは大きく1部と2部に分かれており、1部がTVアニメ1期、2部がTVアニメ2期の楽曲の構成でした。1部と2部の間には休憩時間も設けられました。

『ラブライブ!』1期第1話の最後に流れる「ススメ→トゥモロウ」
『ラブライブ!』1期第1話の最後に流れる「ススメ→トゥモロウ」

 演奏中は作中の映像もスクリーンに投影されており、TVアニメ1期と2期を放送順にダイジェストに投影していきました。まさにアニメの放送を公演中に辿れる構成となっており、約10年前に視聴していた当時からのファンとしては、再びμ'sの偉大なる軌跡を辿れるコンサートでした。当時の感動が東京フィルによるオーケストラで増幅する形で想起させられる内容で、両日共に休憩時間や、終演後には涙する来場者も少なくありませんでした。また、数はあまり多くはないかもしれませんが、TVアニメ未視聴の方でも十分に楽しめる内容だったと思います。

オレンジに染まったコンサートホール

「気まずい空気」。『ラブライブ!』1期第2話冒頭の希の名台詞の一つ「カードがウチにそう告げるんや」の場面も流れた
「気まずい空気」。『ラブライブ!』1期第2話冒頭の希の名台詞の一つ「カードがウチにそう告げるんや」の場面も流れた

 オープニングとエンディング主題歌以外でも、歌唱付きの劇中曲がミュージカルのように多いのが『ラブライブ!』の特徴でもあります。アニメに登場した歌唱付き曲は全て披露されたものの、これらはオーケストラのみの演奏でした。こうしたμ'sの楽曲では観客はペンライトを出すのが通例ですが、今回は東京フィルが主体のオーケストラコンサートであるため、ペンライトを出す人はほとんどいなかったのも特徴と言えます。

「作戦開始」。映し出されているのは『ラブライブ!』1期第3話の新入生歓迎会のシーン
「作戦開始」。映し出されているのは『ラブライブ!』1期第3話の新入生歓迎会のシーン

 その中で、「ラブライブ!」ファンからすると特別な曲があります。μ'sの2ndシングル曲であり、2期第9話の挿入歌にもなった「Snow halation」です。名前の通り、雪をテーマに片想いの恋心を歌った楽曲で、「ラブライブ!」ファン以外にも高い人気がある曲にもなっています。μ's以外の音楽アーティストによるカバーも度々披露されています。

μ'sの歌唱付きで演奏された『ラブライブ!』2期オープニング主題歌「それは僕たちの奇跡」
μ'sの歌唱付きで演奏された『ラブライブ!』2期オープニング主題歌「それは僕たちの奇跡」

 ライブ現場では通常の曲では、自分の好きなメンバーの色をペンライトで振るのですが、この曲に限っては雪をイメージした白色にすることになっています。そして、2番目の2回目のサビの部分、落ちサビと呼ばれるところが始まる瞬間にオレンジ色に変えることがマナーになっています。そしてこのオレンジに変える際はペンライトではなく、より光が強い「UO」とも呼ばれるケミカルライトの使用がファンの間で推奨されています。

μ'sの歌唱付きで演奏された『ラブライブ!』2期エンディング主題歌「どんなときもずっと」
μ'sの歌唱付きで演奏された『ラブライブ!』2期エンディング主題歌「どんなときもずっと」

 このファンも一体となって創り上げる演出は「ラブライブ!」ファン以外にも知れ渡っています。例えば23年12月に東京ドームで開催された、「アイドルマスター(アイマス)」シリーズとの合同ライブ「異次元フェス」でも「アイマス」ファンと一体となって同様の演出が実現しました。

 「Snow halation」はこうした“作法”がある特別な曲であるために、コンサートでもμ'sによる歌唱付きを期待する思いも少なくありませんでした。「Snow halation」は2期第9話の挿入歌にもなっているため、2部でも演奏がされましたが、そこにはμ'sメンバーの姿はありませんでした。

アンコールでμ'sの歌唱付きで披露された「Snow halation」。オーケストラコンサートでは異色ともいえる、白色のペンライトを振る観客が多くいた
アンコールでμ'sの歌唱付きで披露された「Snow halation」。オーケストラコンサートでは異色ともいえる、白色のペンライトを振る観客が多くいた

 そして2期のエンディングまでの披露が終わり、μ’sメンバーの姿がいなくなり、アンコールとなりました。このアンコールで歌唱付きの「Snow halation」を待ち望むファンも少なくなかったのですが、見事その期待に応える形で、μ’sによる「Snow halation」が披露されました。

 μ’sによる「Snow halation」が公に披露されたのは、20年1月にさいたま市のさいたまスーパーアリーナで実施した「ラブライブ!フェス」以来、4年2ヶ月ぶりとなります。

「Snow halation」の終盤は、コンサート会場がオレンジ色の光に彩られた
「Snow halation」の終盤は、コンサート会場がオレンジ色の光に彩られた

 オーケストラの演奏中はペンライトを出さない観客が多かった中、この時だけは多くの人が取り出し、いつもの「Snow halation」の演出が行われました。コンサートホールがオレンジ色に染め上がり、「ラブライブ!」シリーズの歴史に残るコンサートになった瞬間だと言えるでしょう。

パ・リーグ6球団とのコラボも

「ラブライブ!シリーズ×パ・リーグ6球団スペシャルコラボ」のコラボキービジュアル
「ラブライブ!シリーズ×パ・リーグ6球団スペシャルコラボ」のコラボキービジュアル

 2日目の終演前には、μ'sメンバーによる新情報の告知も行われました。その内容は、「ラブライブ!シリーズ×パ・リーグ6球団スペシャルコラボ」というものです。「ラブライブ!」シリーズとパ・リーグとのコラボは22年から行われていたのですが、「ラブライブ!」シリーズの中でも一部の作品に限られていました。

 3年目となる今年は、μ'sも含めた全ての作品とのコラボとなっています。μ'sは16年3月末の「ファイナルライブ」以降、活動の機会が限られているため、μ'sファンにとっても嬉しい内容となっています。

「ラブライブ!シリーズ×パ・リーグ6球団スペシャルコラボ」で販売予定の商品シルエットバナー
「ラブライブ!シリーズ×パ・リーグ6球団スペシャルコラボ」で販売予定の商品シルエットバナー

 μ'sのメンバーが出場するのは、6月15日(土)に千葉市のZOZOマリンスタジアムで開催される千葉ロッテの主催試合です。この試合には高坂穂乃果役の新田恵海さんと、星空凛役の飯田里穂さんが来場する予定です。この他にコラボグッズの販売も実施する予定です。

 かつてμ'sを応援していたファンは、違う「ラブライブ!」シリーズの作品に行ってしまったり、もしくは別の作品に行ってしまったりした方もいますが、同窓会のように、不定期的に集まれる機会が今後も続けば良いなと1ファンとして思います。今後もμ'sの出番は続きそうなだけに、展開を楽しみにしています。

「TVアニメ放送10周年記念 LoveLive! Orchestra Concert」のイベントキービジュアル
「TVアニメ放送10周年記念 LoveLive! Orchestra Concert」のイベントキービジュアル

(写真・画像は全てバンダイナムコフィルムワークス提供)

©2013 プロジェクトラブライブ!

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ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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