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創造的で楽しい登山をするために排除すべき5つのポイント!

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
北アルプス 北穂高岳から常念岳 ※写真はすべて筆者が撮影

 年が改まったタイミングで身体を動かそうと考えている方も多いかと思います。体形や体重などの見た目だけでなく、心や脳の健康にも気を使わなくては!と心新たにしているかもしれません。

 自分の思い通りにコントロールすることができない自然の中で安全に創造的な山歩きをするために排除すべき5つのポイントを検討してみました。

瀬戸内海の島にて ※写真はすべて筆者が撮影
瀬戸内海の島にて ※写真はすべて筆者が撮影

 プレッシャーの多い現代社会を生きるビジネスパーソンや便利な社会構造の中で健康寿命に関心の高い中高年の方にとって、心と体のバランスをとることはとても大切です。

 登山を一過性のイベントとしてでなく、日常の生活に取り入れられたらとても幸せを感じられると信じています。

排除リスト5の紹介です。↓

河津さくらと水仙 ※写真はすべて筆者が撮影
河津さくらと水仙 ※写真はすべて筆者が撮影

排除リスト1:先延ばし

 手帳やカレンダーに入れた予定は実行されましたか。何を先に行うか決めていたのに割り込みなんて日常茶飯事ですね。

 宣言してしまいましょう。

 いつ何をするか、どこに出かけるか、楽しみな予定を家族や仲間に宣言してしまうと良いですね。時には妨害?もあるかもしれませんが、優先順位を明確に宣言することはとても大切です。

 登山中では暑い・寒い・風雨などの環境変化や水分や栄養摂取といった自分自身の健康管理や衣服調節などを行います。そこで「まだ大丈夫!・面倒くさい!」といわず、やるべきタイミングを先延ばしはしないようにしましょう。

六甲山掬星台から ※写真はすべて筆者が撮影
六甲山掬星台から ※写真はすべて筆者が撮影

排除リスト2:完璧主義

 極端な完璧を求めては前進できなくなります。描いた理想は自分で考えたものばかりでなく、人のアイデアや実績から発想したものなど様々です。まずは行動して問題点を自分事として受け入れ、改善して前進していきましょう。

 登山道の分岐点があります。あなたはどちらを選びますか?

 そこで立ち止まって思考停止になってはいけません。

 登山開始からどこを辿ってきたのか、自分の姿を鳥の目線で俯瞰し、向かうべき方角と尾根・谷といった形状と傾斜、標高を確認しましょう。GPSスマホ登山アプリが有っても行うべき行動です。

 人生は決断の連続です。登山でのあなたの進む道も自分で決断してみてください。概ね正しいか、明らかに間違っているか、修正は必要であれば行えば良いのです。100%の回答を求めずに、前に進まなければ見えない景色やルートもあるのです。

ルートファインディング 目で登って足で登る ※写真はすべて筆者が撮影 
ルートファインディング 目で登って足で登る ※写真はすべて筆者が撮影 

排除リスト3:貧弱な計画

 行き当たりばったり!何とかなるさーでは自分の器を飛び出して飛躍することはできません。無意識のうちに自分のコンフォート(居心地の良い)エリアに留まってしまうからです。

 技術的困難さだけが登山の醍醐味ではありません。自然界で出合う事象や事物、生き物などの生態や景観や歴史も好奇心をもって接するかどうかで私たちが得られる成果は大きく変わってしまいます。計画には行程管理だけでなく、その過程で得られる知識や刺激も盛り込みたいものです。

 時間と食料・燃料そして体力・技量に余裕を持つようにします。無駄を省くことと余裕を削ることは一緒ではありません

 登山では計画は重要です。行程が遅れた場合のリカバリー案やエスケープルートの選定や選択、天候悪化時の対処、個人と共同装備・食料の掌握などをチームで共有し共感を得ておくことを心がけたいものです。

白馬連峰を縦走する ※写真はすべて筆者が撮影 
白馬連峰を縦走する ※写真はすべて筆者が撮影 

排除リスト4:貧弱なペース配分

 一日24時間はすべての人に等しく配分されたものです。質が高く十分な時間の睡眠、食事時間、家族や仲間とすごす時間、通勤通学時間、仕事時間などあっという間に一日が過ぎていきます。一日どころではなく一年があっという間に過ぎてしまったと感じることもあります。

 筋肉や脳などの重要臓器へのエネルギー供給や睡眠は随時行わなければなりません。まとめてドン!というわけにはいきません。計量化できない”集中力”も有限です。リラックスを意識しなければ集中することはできません。

 登山においても、体力に見合った心拍数を意識したスピードコントロール、小まめな栄養と水分・ミネラル補給、疲れ切る前に行うこまめな休憩が欠かせません。

 自分と仲間の状況を把握するためのコミュニケーション能力と外的状況観察能力が重要となります。

夕陽を背に 石鎚山 ※写真はすべて筆者が撮影 
夕陽を背に 石鎚山 ※写真はすべて筆者が撮影 

排除リスト5:機嫌の悪い仕草や言葉と行動

 自分や仲間のパフォーマンスを引き出すためにはチームの環境作りが大切です。チーム状況の観察を行うとき有りのままを知るためには適切な質問が大切です。

 「問題はないか?大丈夫か?」といった曖昧で具体的でなく、まるで良い返答を期待しているようではいけません。

 登山中に不機嫌そうな受け答えや態度をとっていると重要な情報が入ってこなくなってしまいます。目的を共有するチームメンバーの共感を得られる態度や行動が大切です。そう、笑顔も忘れずに!

瀬戸内海の大岩にて  ※写真はすべて筆者が撮影
瀬戸内海の大岩にて  ※写真はすべて筆者が撮影

 いかがでしたでしょうか。

 登山=遊び といった単純な図式ではないと感じていただけたのではないでしょうか。登山をまだしたことが無い人はまず、自然の地形に親しむウォーキングから始めると良いでしょう。

 登山は段取り八分!重要な計画はあくまでも計画、堅くなりすぎず柔軟性をもって、山に!仕事に!お出かけください。

 以下は参考記事です。↓

健康寿命に関心があっても動けない人に伝えたい!自然に親しむ山歩きが生み出す9つのメリット

山に登る目的はなんですか?みんなが行くからじゃない!自分のための山歩きを見つけよう。

健康づくりに最適なハイキング、ほとんどの人が犯す五つの勘違いと楽しくなる五つのポイントを紹介します。

心と身体を健康にする「頑張らない山道歩き」を最高にする5つのポイントを紹介します。

健康習慣には感動と喜びが必要です!自然のパワーを味方につける山岳ガイドの山歩き、冬の巻を紹介します。

お散歩アウトドアのすすめ 強いストレスに曝された生活を取り戻す小さな試み。

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日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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