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健康習慣には感動と喜びが必要です!自然のパワーを味方につける山岳ガイドの山歩き、冬の巻を紹介します。

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
冬晴れの日、頬を刺す冷たい風が雪の花を運んできました。*記事中の写真は筆者が撮影

 コロナ感染予防のためにこの年末年始はステイホームされた方も多かったかと思います。コミュニケーション方法も大きく変わり、ストレスを抱えた上に運動不足状態で2021年をむかえた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 特段の持病が無い方も静かに生活習慣病が忍び寄っているかもと、年初にウィズコロナ時代の健康習慣など取り組む決意をしたかもしれません。

 冬だけに見ることができる自然現象を楽しめる雪の国ニッポンです。そんな自然を観察しながら、頂上を目指さず歩く健康山歩き冬の巻をご紹介します。

 穏やかな山歩きはアンチエイジングにぴったりです!感動と発見は心と身体のビタミンです。

冬の山イコール雪の山とは限りません。太陽が温もりを届けるまでの儚い花がハイカーを出迎える低山ハイキング。
冬の山イコール雪の山とは限りません。太陽が温もりを届けるまでの儚い花がハイカーを出迎える低山ハイキング。

 小さい頃は空に浮かぶ雲が不思議でなりませんでした。

 山に登って行くとその雲の中に入っていくことも度々あります。真っ白い霧の中を歩いて、ふと気がつくと服が濡れていたり、メガネにたくさんの水滴が付いています。視界を遮る白い霧は細かな水滴なのです。

 山歩きの知識:衣服を濡らすと身体が冷えてしまいますレインウェアは山歩きには必ず持っていく大事な装備で風が強い時にも活躍します。

標高1000メートル程度の比良山地、寒気の流入で木々は樹氷で真っ白になりました。
標高1000メートル程度の比良山地、寒気の流入で木々は樹氷で真っ白になりました。

 霧や雲は粒の直径が、0.01~0.03ミリメートル程度の微小な水滴なのです。あまりにも小さいので空中に漂っています。

 山歩きの知識:標高を1000メートル上げると6.5度程度気温が低下します。

 例をあげると、真夏の地表気温が35度でも、上空10000メートルではマイナス30度程度という極寒なのです。冬季になると上空1500メートル付近であっても、マイナス6度を下回る気象条件は度々起こります。

 このような小さな水滴になると0度以下の温度、マイナス10度や20度になっても凍結しないで液体の水のまま空中を漂うことができるのです。このような状態を「過冷却」しているといいます。

北九州の山、玄界灘をわたってきた冬の季節風が霧氷をつくります。
北九州の山、玄界灘をわたってきた冬の季節風が霧氷をつくります。

 空気中を浮遊している過冷却された微小な水滴は樹木など地物にぶつかるなどのきっかけで瞬間的に凍ります。それが霧氷なのです。

樹氷・粗氷・樹霜の3つを総称して霧氷といいます。

伯耆大山、ブナの梢に発達する霧氷は風上に向かって成長していきます。
伯耆大山、ブナの梢に発達する霧氷は風上に向かって成長していきます。

 冬の山に行った時に見ることができる最もポピュラーな霧氷の型が樹氷です。

 過冷却状態の微小水滴が次から次へと衝突してはその場で凍結して成長していきます。ですから風上に向かって樹氷は成長していきます。

 実際に見る機会があれば、風向きを確認してみましょう。稜線や尾根など地形の影響を受けますが、おおむね北~北西からの風であることが多いはずです。

霧氷は「エビの尻尾」とも言われます。
霧氷は「エビの尻尾」とも言われます。

 その密度は0.6g /立法センチメートル です。木の枝にできた樹氷は強い風が吹くとショックで脱落してしまいます。太陽が頭上に昇る頃には梢から落下した霧氷で足元が真っ白になることもあります。

三大樹氷のひとつ、東北森吉山
三大樹氷のひとつ、東北森吉山

 スノーモンスターといわれる樹氷も霧氷のひとつです。森吉山、八甲田山、蔵王が特に有名ですが、中部山岳以北の山でも観察できるようです。

 いずれもロープウェイを利用できますが、散策範囲以外を楽しむためには、ワカンやスノーシューに加えて、手袋や防寒着などが必要となります。

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極寒の雪世界でも野生動物は活動します。ノウサギが手前にむかって駆け降りた足跡。
極寒の雪世界でも野生動物は活動します。ノウサギが手前にむかって駆け降りた足跡。

 粗氷(そひょう):樹氷よりやや硬く丈夫で透明な層と不透明な層が交互に成長した翼状です。

 樹霜(じゅそう):空気中の水蒸気が昇華して樹枝などの地物に付着した樹枝状や針状の樹氷です。

樹霜は繊細で、触ったらすぐ壊れてしまいます。
樹霜は繊細で、触ったらすぐ壊れてしまいます。

 一度は見たいのがダイヤモンドダストです。

厳冬の北アルプス、ダイヤモンドダストがサンピラーをつくりだしました。
厳冬の北アルプス、ダイヤモンドダストがサンピラーをつくりだしました。

 空気中の過冷却水がキラキラと氷晶となり太陽光線と共演するのが、ダイヤモンドダストです。時には太陽柱(サンピラー)をつくって私たちを魅了します。

晴れ渡り、凛とした空気に氷の結晶が漂う2月の北アルプス。
晴れ渡り、凛とした空気に氷の結晶が漂う2月の北アルプス。

 夜間晴れ渡った空への放射冷却で雪面が冷やされたところに、上空に寒気が流入し過冷却水をたっぷり含んだ雲・霧に覆われた状態になってできる表面霜もあります。

 朝一番のスキー場雪面が朝日を受けてキラキラ光るのも表面霜です。

九州福万山、一面が小さな木の葉状の表面霜で覆われました。
九州福万山、一面が小さな木の葉状の表面霜で覆われました。

 2017年1月、雪に覆われた登山道一面に木の葉状の氷が成長した表面霜です。

 触れば壊れる儚さを雄大な景色の中で感じることができたのはとても幸運でした。40年を超える登山人生で初めて見た感動の朝でした。

拡大してみました。
拡大してみました。

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枯草に朝霜が降りました。
枯草に朝霜が降りました。

 遠くに行くことができなくても、身近な野山や庭先の草木にも発見はきっとあります。

グラニュー糖をまぶしたような霜も見つけました。
グラニュー糖をまぶしたような霜も見つけました。

 運動習慣のひとつとして山歩きをお勧めしたいところですが、まずはいつもと違う通勤経路を歩くなど、ご近所から小さな自然を見つけてみてはいかがでしょうか。

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 適度な運動と良質な食事、良質の睡眠が健康つくりに必要です。

 加えて、発見や感動、非日常体験が脳を活性化させ、心が喜ぶことをお伝えします。

 どうぞ、コロナ感染予防対策の基本を忘れずに、アウトドアを楽しんでいただきたいと願っています。

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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