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忘年会『行けたら行く』の人の思考回路と飲食店のドタキャン被害額2000億円の解決法

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:いらすとや

KNNポール神田です。

ボクは、『忘年会には出席しない主義』なので12月はのんびりとさせていただいている。

しかし、世の中は忘年会やクリスマスで大忙しだ。12月は、忘年会やクリスマスで飲食店のかきいれ時でもある。しかし、ネットで予約したものの、当日の時間になっても現れない『No Show(ノーショー)』という予約客がいまだにいるという…。

12月もあと数日、毎日、SNSでは忘年会やクリスマスのお誘いが飛び交い、幹事さんたちは日々、人数調整に追われている。そもそも、「行けたら行く」という迷惑な人たちから、『調整さん』で事前に調整したにもかかわらず、当日になってから、どうしても行けない…という人もいるくらいだ。それはそれで仕方がない。いろんな都合がある。しかし、その分の金銭的な穴うめをしていただければ他の人にも誰にも迷惑がかからない。しかし、そんな予約をするときにやっかいな人たちがいる…。『行けたら行く』の人たちだ。

■『行けたら行く』の人たちの思考回路

『行けたら行くの人』は、とても正直な人なのだが、もちろん『行けなかったら来ない人』でもある。そして幹事さんは『行けたら行くの人』の人数をどうやって、レストランやお店の方に伝えればよいのだろうか?

幹事さんが本当に知りたいのは、来るつもりが2割りなのか8割りなのかがだ…であれば、『行けるのは7割以上くらい』から、『行けないのは2割くらい』のフリ幅が当然必要なのである。幹事にとっては、中途半端に『行けたら行く…』とかの個人的な努力目標などはどうでもよいのだ。もちろん、『行けたら行くの人』は行けない場合のエクスキューズも含まれているからよけいにタチが悪い。行けなかったらキャンセル料金を支払うくらいまでコミットしてほしいものだ。

そして幹事さんは、最低、前々日までに○○人くらいでと、最終的な人数を飲食店に伝える必要がある。そして、飲食店側は○○人くらいで伝えられたら、その日のその時間までに○○人分を用意してお待ちする必要がある。『行けたら行くの人』が半数もいたら、幹事さんはそんなリスクのある会合をボランティアでやってられない…。忘年会どころか胃が痛くなってしまうだろう。

『行けたら行く』と、言おうとした人は幹事や店側の気持ちに寄り添い、万一、行けるのであれば、当日の定刻すぎに顔を出し、末席が空いていたら、参加が可能かどうかを現場でお願いすれば良いと思う。当日の幹事は1番忙しい。できるだけ連絡も遠慮してあげてほしい。むしろ、『行けたら行くの人』は『(他に優先すべきことがあるので)今回は不参加』としておいたほうが最初から、良いのではないだろうか?

■『とりあえず予約』の人たちの思考回路

無断キャンセルの理由 n=1,112名 出典:「テーブルチェック調べ」
無断キャンセルの理由 n=1,112名 出典:「テーブルチェック調べ」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000023564.html

そんな大変な幹事さんとは別に、無断キャンセルをする人たちの統計データがある。

『行けたら行くの人』よりも、もっと信じられないのが『とりあえず予約』の人たちの思考だ。

n数1112名の調査で、n数126人が無断キャンセルをしている。つまりこの調査では11%が『無断キャンセル歴』があった。

実際の飲食店でのキャンセル率では1%程度らしいが、経産省の有識者調査では2000億円(NoShowにおける無断キャンセル推計額)の機会損失が発生しているから決してあなどれない問題だ。

1番目の無断キャンセルの理由が、とりあえず場所を確保するために予約 34.1%

2番目の理由が、人気店なのでとりあえず予約 32.5%

3番目の理由が、予約したことをうっかり忘れた 30.2%

なのだ…。このまさかの理由に驚く…。『とりあえず』や、『うっかり忘れた』で準備させられた飲食店側はホント大変だ。

ノーショーにおいてはフードライターの東龍氏がこのYahoo!ニュースでも何度も警鐘を鳴らされている。が飲食だけに限らず、食に対しての冒涜でもある。

当日、料理の食材を仕入れ、仕込みを終え、席を確保して、他の予約を断った飲食店側からすると、もう、怒り心頭でしかたないだろう…。『とりあえず予約』の人たちの思考回路には、飲食店側に対してのまったくのリスペクトもなければ、キャンセル料金の発生に対しても理解がないのが実情だ。そして、予約手段はなんと…。

無断キャンセルの予約手段 出典:「テーブルチェック調べ」
無断キャンセルの予約手段 出典:「テーブルチェック調べ」

グルメサイト予約が50.8%で半数となる。さらに飲食店の公式ウェブなどが38.1%、SNSが33.3%で、電話予約が33.3%と続く。

これでは、せっかくの『インターネット予約』の手段にまったく意味がない。『無断キャンセル歴』の半数以上がネット予約となれば、ネット予約に対してしかるべき無断キャンセル策を講じるべきだろう。

■『SMS』で予約確認に返答して予約が成立という手法『トレテル(Toretel)』

SMSでネットバンキング詐欺』がおこなわれている一方で、SMSで飲食店の無断キャンセルを防ぐ方法があったのでここで紹介をしてみたい。しかもSMSの送信料以外は費用がかからないという…。

無料利用できる飲食店の予約トラブル防止/トレテル 出典:トレテル
無料利用できる飲食店の予約トラブル防止/トレテル 出典:トレテル

株式会社トレタが運営する、アプリの『トレテル(Toretel)』

http://lp.toretel.toreta.in/

この飲食店舗向けのアプリはとても簡単な使用感であった。まずは、自分の店舗を登録し、予約のポリシーとキャンセルポリシーの文面の雛形を決めてSMSで送信するだけ。コストは予約客に送った飲食店側が、通信キャリアから請求されるSMSの送信料金のみ(約3円)。このSMS確認であると、予約した客側も、キャンセルした場合にどうなるのかをリマインドされるので、きちんとしたお店という認識が持てると思う。当然、無断キャンセルのリスクは相当軽減できそうに感じる。

キャンセルの場合の自店のポリシーが編集できる 出典:トレテル
キャンセルの場合の自店のポリシーが編集できる 出典:トレテル

予約客の電話番号あてでSMSで予約の御礼とキャンセルポリシーを送り、承諾した人が確認して、正式な最終予約となる。お客も『仮の予約のつもり』というような中途半端なものでないことを認識できるだろう。そして、万一、キャンセルポリシーに対して問題などがあった場合はプロの弁護士を、『トレテル』の記録をもとに弁護士と相談ができるというしくみになっているという。

『トレテル』は、事前に契約などが必要なのではなく、アプリをダウンロードし、店舗登録をすれば良いだけだ。

お客様の名前と電話番号で予約の最終確認を
お客様の名前と電話番号で予約の最終確認を

飲食店側は、予約がはいったお客様へSMSで最終の予約確認を送り、キャンセルポリシーを納得した上で、登録してもらうことができる。ユニークなポイントは、すべての予約客の人に送るのではなく、初めてのお客様や大量の人数の場合などと、予約客に不安を感じた場合などの用途に応じて使うことができる点だ。しかしだ、この無料のアプリを配布したトレタ側の旨味はどこにあるのだろうか…?

トレタの代表取締役 中村仁(なかむら・ひとし)氏に聞いてみた。

『トレテルは完全無料ですので、弊社がこのサービスから得られる収益はゼロです。では私たちの狙いは何かというと、「外食産業のIT化をもっと広げていくこと」にあります。そもそも、外食産業全体でもっともっとIT化が進んでいかなければ、トレタの事業も成長できません。そこで、よりシンプルに使えるアプリを無料で提供し、それをきっかけにITの便利さをより多くの方に知っていただこう。それが結果としてトレタの事業にもプラスになると考えています』という答えだった。

お客様は神様ですではなく、予約という契約がスムースになることにより、万一行けない場合は早めに店舗に連絡を入れるというだけで、年間2000億円の機会損失コストはもっと下げられるはずだろう。ホテルの予約や飛行機ではドタキャンできないのに、飲食店では平気でドタキャンができる人が、一人でもITのチカラでいなくなることを切に願いたい。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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