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『東京五輪』の問題は『待たせる』ことに対してのサービス視点がないことだ

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
比較的に行列することなく購入へいけるようになった 出典:TOKYO2020

KNNポール神田です。

□2020年東京オリンピック(五輪)のチケット争奪戦が始まった。(2019年)9日午前10時に申し込みをスタートさせた公式販売サイトにはアクセスが殺到。

□組織委チケッティング部の鈴木秀紀部長が緊急対応。「アクセスが多く、システムに負荷がかかった」と話した。結局、(2019年5月9日)午後5時までのアクセス数は延べ130万。最多の待ち人数は約18万人だった。当初は累積人数だったため、70万人超という数字まで表示された。

□(2019年5月)8日午前0時時点のID登録者は295万人。申し込み開始前の1日で24万人増えて9日午前0時には319万人になった。過去五輪で最もチケットが売れた12年ロンドン大会時は、直前で200万人。登録者が1・5倍以上だから申し込みが殺到するのも当然だった。さらに9日午後5時には355万人まで達した。

出典:東京五輪チケット争奪戦「つながらない」の声が噴出

しかし、本日段階では非常にすんなりとつながるようになっている。しかし、PDFによる競技スケジュールなど、使いやすさに関しては、問題だらけである。

実際に購入するとなると会場までのアクセスなども気になるが、まったくそれらへのリンクもない。

事前に会場の名前と場所や日程の確認も必要だ。

オリンピックスタジアム(元・国立競技場)、東京スタジアム(調布市・味の素スタジアム)、ヘリテッジゾーンと東京ベイゾーンの違いも筆者にはよくわからなかったからだ。

どのスポーツがどの会場で行われるかの事前チェックは購入前に絶対に必要だ。

会場ゾーンの確認は必須! 出典:東京都
会場ゾーンの確認は必須! 出典:東京都

https://www.2020games.metro.tokyo.jp/taikaijyunbi/taikai/map/index.html#tabOlympic

https://tokyo2020.org/jp/games/venue/olympic/

■誰もが公平平等にインターネットで購入予約できる事は非常に良いこと

今回の東京五輪のチケット販売についても、インターネットをフル活用して、公平に平等にという思想はとても素晴らしいと思う…。しかし、ボランティアの募集時と同様に、運用上での改善策は多々あると思う。大会組織委員会の運用方法には大きな問題を抱えているといわざるを得ない。そして、今後もまだまだそれはまったく改善されず、継続していく可能性がある。

何よりも、最大の問題点は、『国民を待たせる』ということに対してのサービス事業者としての視点がまったくないところだ。ID登録で待たせ、チケット購入(予約)で待たせ、抽選発表まで待たせ、さらに次の購入方法発表まで待たせるのだ。そして、公式転売サイトの発表まで来年の春まで待たせる。そしてその換金の方法もスケジュールもまったく明確でない。

■今後の販売プロセスの手法も発表しておかなければならない

2019年6月20日(木)の抽選に当選した人は、クレジットカードの引き落としがおそらく2019年の7月か8月に発生する。予約の申込みも2次希望や3次希望で、余計に取得している人の当選分のキャンセルも発生するだろう。すでに購入予約の申し込みは、5月28日に締め切っているので、6月20日以降のチケットの販売日程のスケジュールも発表しておけば、その後の購入フローも見えてくる。それらのスケジュールがずっと待たされる…。その間の国民の気持ちがまったく理解されていない。

■購入予約を並んでいる間に説明できることはたくさんあった…

1時間もブラウザやスマートフォンを開いて待たされるなんてことは、生まれてはじめてだ。そこに、購入予約に必要なプロセスを説明する表示は、一言もでない…。なぜ、その間にID登録が必要や、VISAブランドのクレジットカードの有無の表示をしないのだろうか?登録した電話番号が必要なことも…。

現在の『購入予約』段階でも、ID登録の必要な事や、オフィシャルサプライヤーのVISAしかクレジットカードが使えないこと、事前に会場の説明などがないので、ユーザーはネットの前で???の連続となる。しかも電話番号確認で120秒以内に登録した電話番号でかけろという緊急状態に置かれる。しかも、初日はずっとハナシ中でつながらない。なぜ?そこは広くひろまっているSMS認証をしなかったのだろうか? 国民に電話をかけさせる手間を発生させる発想がおかしい。固定電話の場合にだけこの登録電話番号確認のプロセスでよかったのではないか?

■ID取得者から購入予約させればよかった…

今回の購入開始の前に『TOKYO 2020 ID』の登録が開始となっている。

https://id.tokyo2020.org/oidc/login.html

むしろ、この登録IDがある人から購入予約というスキームをとれば、最大295万人(2019年5月8日午前0時時点)からの購入予約開始で済んだはずで、ここまでの混雑もなかったはずだ。当然、事前に登録IDに手間暇をかけた人から購入予約できるというのは、誰も異論はないだろう。そして今回はたったの1日で40万人増だ(2019年5月9日午後5時には355万人)。つまり購入のネット行列に並んで、あわててID登録をとった人が40万人もいたということだ。

■余ったチケットは公式サイトから転売できる

□購入後も、予定が入って観戦できなくなった人が不要になったチケットを出品できる「リセール(再販売)サイト」を(20)20年春をメドに立ち上げる。価格は定価のみで、希望者との間で売買が成立した場合、出品した人が手数料を支払う仕組みを想定している。

□国会では五輪準備に間に合わせるように「チケット不正転売禁止法」が成立。組織委はチケットの抽選結果の発表を同法施行日(2019年)(6月14日)の後になる6月20日とし、高額の不正転売への罰則(1年以下の懲役や100万円以下の罰金)をダフ屋行為への抑止力に利用する。

出典:不要チケット「転売は公式サイトで」 東京五輪組織委

■チケット不正転売禁止法 2019年6月14日施行

「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」

違反者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処される。

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/ticket_resale_ban/index.html

来年2020年春をめどに、公式の転売サイト「リセール(再販売)サイト」がオープンとなる。これも詳細がまったくわからず、待たされる。しかも、チケット不正転売禁止法によって、2019年6月14日から施行となり、このリセールサイトでしかチケットの転売ができないので、また同様のめんどうくさいプロセスが想定される。

民間のヤフオクやメルカリ等にレギュレーションを決めて参入させたほうがよほど問題ない対応ができることだろう。普段やったことのない事業者が、特別にセキュリティを高めて、公平に平等に物事を進めようとすると不備が起きることは当然だ。

今回のプロセスもふくめて、政府もこの国民イベントでこれ以上に先送りの未決のスケジュールがないよう、早急に、6月20日以降のチケット販売についても手法とスケジュールと、リセールサイトの時期を、行政指導すべきである。そして、その運用方法も含めて評価できるようにしなければならない。

いつまでたっても、国民は『東京五輪』に待たされっぱなしだ…。

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ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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